猫にとってユリは猛毒!葉をかじった猫の姉妹が中毒死…「猫にとって700種類以上の植物が毒」専門家が警鐘
「突然ですが、急性腎不全でさつきちゃんとめいちゃんが虹の橋を渡りました。原因は、ご近所さんからいただいたユリの葉をかじったこと。私の知識不足からまねいたこと。本当に後悔でいっぱいです。本当ならもっと生きられた命なのに私が命を縮めてしまったと、自分を責めるばかり。」(8/22)
8月下旬、「保護猫『さつき』&『めい』&『琥珀』」(@cute_satuki_mei)さんが飼われていた姉妹の保護猫さつきちゃん(2020年8月21日永眠)とめいちゃん(2020年8月20日永眠)がユリ中毒で亡くなりました。三毛のさつきちゃんとキジ白のめいちゃんは9月で1歳を迎えるはずだった猫ちゃんたち。テッポウユリの葉を誤ってかじったそうです。こうしたユリの花や葉、茎をかじるなどして飼い猫が命を落とす事例は絶えないといいます。ユリの猛毒性について、専門家の方も「致死率の高い恐ろしい病気」などと警鐘を鳴らしています。
“尊い小さな命”が消えてしまったことに悲しむ飼い主の「保護猫『さつき』&『めい』&『琥珀』」さんは、Twitter上で次のように訴えています。
「来月(9月)、誕生日を迎える予定でプレゼントも用意していたのに、こんな悲しいことになるなんて。今日、そのプレゼントが届きます。本当に辛くて辛くて、泣いてばかりです。ユリは猛毒です。観葉植物も基本ダメだそうです。愛猫ちゃんを守るには置かないことです。」(8/22)
「保護猫『さつき』&『めい』&『琥珀』」さんから猫ちゃんが亡くなった経緯を伺ったところ、近所の人からもらったテッポウユリを普段は猫が行かないようにしていた玄関に飾っていたそうです。たまたま玄関の換気のためにドアを少し開けていた日のときのこと。好奇心旺盛だった猫ちゃん2匹が玄関に入り込み、飾っていたユリの葉をかじってしまったといいます。その後、猫ちゃんたちはおしっこが出なくなり、病院へ。点滴をしてもおしっこが出る様子もなかったので、血液透析や腹膜透析などの治療ができる他県の病院を紹介してもらって入院したそうです。しかし、改善する見込みもなく、「保護猫『さつき』&『めい』&『琥珀』」さんは猫ちゃんたちをご自宅でみとることに…。
「家でみとる辛い決断をしました。本当に後悔でいっぱいです。まだ1歳になる手前で若いので回復力に期待していたのですが、状況は悪くなるばかりで無力を痛感しました」と「保護猫『さつき』&『めい』&『琥珀』」さん。「ユリは花、花粉、葉、茎全て危険だと聞いていましたが、ここまで毒性が強いとは思いませんでした」と涙をこらえながら悔やんでいらっしゃいました。
■ユリの花粉をなめたり、花瓶の水を飲むだけで死に至ることも
「もう二度、猫ちゃんたちが亡くなるような悲しい出来事が起きてはいけない」という、「保護猫『さつき』&『めい』&『琥珀』」さんからの強い“思い”を受け止め、猫ちゃんの飼い主さん向けに有益な情報や最新の獣医学研究などをTwitter上で発信されている獣医師の「獣医にゃんとす 猫の情報発信中」(@nyantostos)さんにユリの毒性などについてお話しを伺いました。
--「保護猫『さつき』&『めい』&『琥珀』」の猫ちゃんたちは、テッポウユリの葉をかじって急性腎不全でお亡くなりになったそうです。ユリは毒性が強いのでしょうか?
「完全肉食動物である猫にとって、700種類以上の植物が毒です。これは肉食に適応していく中で、肝臓の解毒経路の1つであるグルクロン酸抱合(ほうごう)を失ったため。ですから、多くの植物を体内で処理できず、さまざまな中毒症状がでてしまうのです。
特にユリは花粉をなめたり、花瓶の水を飲んだりするだけで死に至ることがあります。ユリ中毒は腎臓が破壊されることでさまざまな症状が出ます。誤食後の数時間は嘔吐やよだれ、元気消失などが認められますが、この間も腎臓はどんどん破壊され、数日後にはおしっこを全く作れない状態になってしまい、死に至ります。効果的な治療法はありません」
--猫ちゃんにとって700種類以上の植物が毒と伺って驚きです。我が家の飼い猫も植木鉢の花や葉などをかじってしまうことがありました。種類によっては、命を落としていたかもしれません…また植物の中でも、ユリは猛毒だとのこと。猛毒なユリの種類にはどのようなものがありますか?
「テッポウユリをはじめ、オニユリ、コオニユリ、カノコユリ、キスゲなどユリ科の植物は全般危険だと考えて良いでしょう。チューリップやスズランも中毒を起こすといわれています。ちなみに食べさせてはいけないものとして有名なタマネギもユリの仲間です」
--確かにタマネギを食べるとお腹を壊すから食べさせては駄目ということを聞いたことがあります。まさか、タマネギがユリの仲間ということは全く知りませんでした…獣医にゃんとすさんの患者さんの中で、これまで植物を食して診察された猫ちゃんは結構いらっしゃるのでしょうか?
「ユリ中毒の猫ちゃんはこれまで何例も経験したことがあります。猫ちゃんは好奇心旺盛ですから、ユリの葉で遊んでいるうちに葉をかじってしまうパターンが多かったです。そもそもユリが原因だと気付いていない飼い主さんも多く、話を聞いていくうちに『そういえばうちにユリを飾っています…』というパターンもありました」
■植物をかじったら、症状がなくても病院へ
--本当に気を付けないといけないですね。もし誤って猫ちゃんが植物をかじってしまったとき、飼い主はどのような対処をすればよいでしょうか?
「症状が出ていなくても、とにかくすぐに動物病院に行って適切な治療を受けることです。胃の中を洗浄したり、点滴を流したりする治療が必要になります」
--最後に、猫ちゃんの飼い主に向けて注意喚起のメッセージをお願い致します。
「ユリ中毒は致死率の高い恐ろしい病気ですが、そもそもおうちにユリがなければユリ中毒になることはないのです。愛猫の命を守れるのは飼い主さんだけなので、適切な知識を身につけて注意していただけたらと思います」
◇ ◇
今、「保護猫『さつき』&『めい』&『琥珀』」さんがさつきちゃんとめいちゃんたちのためにご用意されたという誕生日プレゼントのソファー(爪研ぎ兼)には、子猫の琥珀(こはく)くんが少し寂しそうに横たわっています。天国に行ってしまった2匹の猫ちゃんたちのことを思い出しているのでしょうか。飼い主の「保護猫『さつき』&『めい』&『琥珀』」さんが少しでも長く琥珀くんと一緒にいられますように。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)