1本5万円の超高級日本酒を100人にプレゼント!?飛騨の酒蔵が大赤字キャンペーンに込めた想いとは
希望小売価格5万円の最高級日本酒を100名にプレゼントするというキャンペーンがSNS上で話題になっている。
プレゼントされるという日本酒の名は「騨飛龍(ダブリュウ)」。
特Aの山田錦を18%まで精米し、明治時代から現存する木桶で発酵させ、古式酒造法「柿渋染め木綿しぼり」で中取りしずく酒を低温抽出……さらに早瓶仕入れと氷点下貯蔵を施したという超プレミア酒だ。
日本酒通以外の人にはわかりにくいかもしれないのであえて俗な表現をすると、すきやばし次郎の寿司、Eクラスのベンツ、銀座鳩居堂前の土地のようにこれ以上はもう無いという芸術の域に達した究極の日本酒……なぜそんな日本酒を100本もプレゼントするという気前の良すぎる企画が実現したのだろうか?
「騨飛龍」を製造した渡辺酒造店代表の渡邉久憲さんにお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):日本酒として最高ランクと言える「騨飛龍」をなぜ100本もプレゼントされようと思ったのでしょうか?
渡邉:「騨飛龍」はそもそも東京オリンピックで来日される外国人の皆さんに、米と麹で発酵させた最高の日本酒を堪能してもらいたいという思いで造ったお酒でした。「日本にはSAKEという最高のアルコール飲料があるぞ」という体験談をオリンピックの余韻とともに母国へ伝えて欲しい……「騨飛龍」はそんな想いで造ったお酒だったのです。
ブランド名である「騨飛龍(ダブリュウ)」は「飛騨+龍」を逆さ読みしたもので「飛騨から世界へ飛び立つ飛龍の如くであれ」、「すべての人に飛騨を知ってもらいたい」という想いが込められています。
中将:そうだったんですね……新型コロナウイルス流行の影響でオリンピックは延期になってしまいました。さぞご無念だったと思います。
渡邉:オリンピック開幕にあわせ本年8月にリリースする予定でした。しかしコロナ禍により東京オリンピックは延期となり、ターゲットの訪日外国人は激減。最高級の日本酒として丹精込めて造った「騨飛龍」も行き場を無くしてしまいました。心底残念ですがこればかりはしょうがないですね。
中将:販売ではなくあえてプレゼントしようと思われた理由をお聞かせください
渡邉:「騨飛龍」は、まもなく飲み頃の頂点に達します。丹精込めて造り上げた日本酒だからこそ最も美味しい状態で飲んで欲しい。これは作り手としての本音です。飲んでくださる方の「美味しい!」という幸せな笑顔こそが私たちが求める根源的欲求です。ですのでマーケット不在の中途半端な状況で売り出すより、日本酒を心から愛する方に最高の状態で最高の日本酒を味わっていただきたいと思いました。
それにコロナで苦しいのは私たちだけではありません。コロナ禍でお疲れの皆様へ飛騨の酒蔵から陣中見舞いをしたいという想いでこのプレゼント企画を始めさせていただきました。
中将:騨飛龍を作る上でこだわった点、苦労された点をお聞かせください
渡邉:「騨飛龍」の醸造テーマは古式酒造法と最新テクノロジーの高次元融合です。日本を代表する酒米「兵庫県産特A山田錦」を最先端の精米機を駆使し、心白のみをクリスタル球体のように削り出す18%精米を施しました。
仕込み桶には当蔵に明治から現存する木桶を使用。蔵に伝わる古文書にもとづき、酒を仕込む前の樽洗いに決して水を使わず、酒で洗いました。これは酒の品質が悪くなってしまうことを避け、最後の一滴までその品質が変わらないようにと、酒の無駄を承知で実施したものです。そうして自然発酵させ、一意専心で醸した醪を古式酒造法の「柿渋染め木綿しぼり」で雫酒を低温抽出。理想的な早瓶火入れと-5℃で低温貯蔵を施しました。
古文書にもどづく伝統的な超非効率な酒造りと最新テクノロジーを結び付けたのは、何よりも「世界へ最高の日本酒を届けたい!」という蔵人たちの情熱です。
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【蓬莱 渡辺酒造店】
創業明治3年。高い技術と豊富なラインナップで人気を博し、岐阜県飛騨地方を代表する酒蔵として知られる。
所在地:岐阜県飛騨市古川町壱之町7-7
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本キャンペーンの応募期間は9月1日午前9時から9月20日午前8時59分まで。詳細は渡辺酒造店公式Twitterアカウントの該当ツイートをご確認いただきたい。
多くの方にこのキャンペーンに応募していただきたいが、願わくば酒蔵の熱い想いに甘えるだけではなくそれぞれ出来る範囲で応援する手段もお考えいただければ幸いだ。僕は日ごろから「日本酒で乾杯」を心がける日本酒好きで全国各地のお酒を飲んできたが、渡辺酒造店のお酒はどれも高品質で良心的という印象。もし「騨飛龍」の選に漏れてしまっても、ぜひ何かの形で一度味わっていただきたい飛騨の銘酒だ。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)