秋葉原「なでしこ寿司」の新メニューは薬膳寿司 女性寿司職人が考案、オリジナル薬膳茶付き

日本有数の電気街と、オタク文化の聖地で知られる東京・秋葉原。ここで2010年にオープンし、来月10月で10周年を迎える「なでしこ寿司」は、女性寿司職人たちの華やかな雰囲気が魅力の寿司屋だ。それでいて仕入れから仕込み、調理、握りまで行い、本格的な江戸前寿司が楽しめる。そんななでしこ寿司が、今月9月より薬膳寿司をメニューに加えるという。店長の千津井由貴さんに聞いた。

■薬膳と寿司が出合った

 薬膳寿司は、寿司7貫と薬膳調味料でいただく刺し盛り、薬膳茶、薬膳スープのセット。当日豊洲市場で仕入れた新鮮なネタを使い、カウンターに並ぶのは真鯛にキクラゲ、白ごまと栗ダレのソースや、ムール貝の握りの中に黒ごま、クルミ、松の実、かぼちゃの種などで作った味噌をのせたものなど。薬膳スープは、魚のすり身の団子入りだ。

寿司屋のカウンターでは見たことのない大きなフラスコには、薬膳茶が。寿司屋で出す一般的な煎茶をベースに、桜と菊花と薄荷(はっか。ミントのこと)を調合した、なでしこ寿司オリジナルだそう。試験管には黒ごまや松の実などが入っていて、好みで足すことができる。

 これらのメニューは、すべて千津井さんと従業員たちとで研究、開発した。「そもそもお寿司は冷たいもの。体を温める生薬を使いながら、いかにおいしい味に仕上げるかに苦心しました」という千津井さん。薬膳は奥が深くて難しいとふうふういいながらも、体に良いものを食べて欲しいと勉強を重ねている。

■漢方のプロに聞いた、体への効能

漢方養生指導士の資格を持つ漢方・薬膳ライターの多田有紀さんに、薬膳寿司について聞いてみた。

「漢方では、体が冷えると病気にかかりやすいと考えます。たしかにお寿司は冷たい食べ物ですが、使われているシソやミョウガ、にんにく、生姜などの薬味とお酢は、体を温める効果があります」。

また黒ごまや黒きくらげ、ひじき、わかめ、黒豆といった黒い食材は、生命力を活性化し若々しさを保つとされ、特に女性には必須だ。さらに漢方では香りも効果があると考えられている。たとえば陳皮(ちんぴ)やレモンなどのすっきりした香りはストレス解消に、黒ごまをすった芳ばしい香りは消化吸収を助ける。

「見た目も美しいですし、それぞれの食材の効能を楽しみながらいただけば、きっとこれからの健康増進につながるでしょう」。

 千津井さんの薬膳への取り組みは、以前から始まっていた。養殖魚の餌に薬膳食材を用いて育てる、「薬膳魚」の生産だ。そのうち「薬膳サーモン」は、寿司ネタに提供する予定だそう。

 さらに、華やかで機能性抜群の着物や食器、道具類のブランド「ツール・ド・パピエ」を立ち上げた。まもなくネットショップのBASEでサイトを開設、販売の予定。

 「日本の女性寿司職人人口は少なくありません。でも結婚、出産を機に辞める人が多い。やはりずっと男性中心の世界だったので、女性が働き続ける土壌が十分ではないのです。でも、だからといって男性と同じように振る舞うのではなく、女性らしい魅力や視点を生かして寿司を握り続けたい。女性が一生働ける世界にするのが目標です」と力強く語ってくれた。

(まいどなニュース特約・國松 珠実)

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