コロナ禍で必要な「ストレス・コーピング」とは?神戸で個展開催の「絵を描く精神科医」に聞く
新型コロナウイルスの感染拡大による「先の見えない不安」が世界を覆ってから半年以上が過ぎた。コロナ禍に伴うストレス等で通院する人も増えているという。心の闇を「表現」という形で解放することも克服法の1つとして考えられている。15日から兵庫県神戸市内で絵画の個展を開く精神科医に話を聞いた。
「桂クリニック」(大阪府豊中市)の桂邦雄院長は当サイトの取材に対して「コロナによって仕事が減った人も、増えた人もストレスを感じ、受診されています。仕事や家庭などの環境変化により適応障害やうつ状態が増えています。治療中の患者様も悪化しています。新患も多いです。性別、年齢に関係なく罹患者は増加しています。コロナの影響はやはり大きいです」と現状を明かす。
そこで、同クリニックの精神科・心療内科で患者と向き合っている桂氏に、いくつか問うた。
(1) コロナ感染すると周囲から特別な目で見られるというストレスを感じる人は多い。絶対に感染したくないが、必要に迫られて外出もしており、いつ感染するか分からない不安が募る。プライベートの行動経路がさらされることにも抵抗感がある。そういう思いが高じてか、たまに原因不明の発熱がある。だが、検査をしても陰性で、その繰り返し…。そんな心理状態についての対策は?
桂氏は「発熱されるとご心配ですね。心配事は早く解決しましょう。最近は発熱外来をしているクリニックが増えています。ネットなどで調べて受診してください。ストレスをためない対策は、家に籠らないで外出する事です。散歩やウィンドウショッピングなどは感染しません。あるいは自宅で楽しめることをしてください」とした上で、「ストレスの克服はストレス・コーピングをお勧めします」と付け加えた。
「ストレス・コーピング」とは、仕事や人間関係など様々な場面でストレスを感じた時の対処方法。 具体例として、桂氏は「患者様に説明しているのは『マイナス思考した時に切り替えができるか…例えば、散歩をする。お茶を飲む。初恋の人を思い出す。宝くじが当たり、何を買うか考える。など…思い当たることをメモに書き留めて、自分にあったものを探すのです。それは、健康な方のストレス発散にも利用できるのではと思います。心身の健康を維持するためにも『ストレス・コーピング』を正しく身に付け、日々の生活で活用してみることが大切です」と解説した。
(2)PCR検査を受けたいが、自費で数万円という高価になるため、経済的な負担から受けられない人も多い。数千円ほどで対応できる道はあるか?
「当院では新型コロナウィルスの検査にも対応しており、PCR検査は税込3万円、抗体検査は税込8000円ですが、PCRについては、濃厚接触者との接触者は検査した方が良いでしょう。濃厚接触者の家族は陽性が出るまで保健所の検査はありません。主治医に言えば健康保険で検査できるかもしれません。医師の判断で保険適応(6000円程度)になります。また、発熱休職後の復職のため会社負担でPCRを受ける方もおられます」
(3)ストレス解消法として趣味に没頭することが挙げられる。桂氏は9月15日から同20日まで神戸市の「GALLERY北野坂」で「桂邦雄個展-偶然の出会いー」を開催。絵画という仕事以外に打ち込む世界があることで、救われたと思うことはあるだろうか。
「自己表現ということで、ストレス発散になっているのは確かです」。そう認めた桂氏は「私は抽象、油彩を長年続けて描いています。若い頃は不安や焦燥など精神疾患の症状を現そうとしました。しかし、その表現は直載的で大仰な感じがするようになり、徐々に自分が感じた思いを抽象表現するようになります。最近、以前に描いた絵を白色で消そうとしていると、偶然にできる形や色彩に現在の自己の心が反応し表現を促すといったことがありました。今回はそういった作品を並べています」という。
さらに、桂氏は個展に向けて「コロナ禍などのストレスで気うつになっているためか、色彩鮮やかな作品になっています。絵具を重ねる時、ふと現れる抽象的な形や色に出逢います。それが私の中で反応し、絵を描くエネルギーとなります。感性を素直に表現できるよう頑張っております。久しぶりの個展です。ご高覧ください。何かヒントになれば幸いです」と語った。
絵画に限らず、没頭できる対象があるかどうか。どんな、ささいなことでもいい。己の原点を見つける時間を、コロナ禍は与えてくれたのかもしれない。
(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)