コロナ感染による味覚・嗅覚障害の実体験 突然、煙の臭い→翌日には鼻も舌も機能せず

 新型コロナに感染しホテルに隔離されていた私ですが、ついに先日ホテルから退所となりました。多くの方に応援の言葉をいただきましたこと、この場を借りてお礼申し上げます。報告が遅れたのは疲労感に襲われ、体調が整わなかったからでもあります。

 コロナに感染した場合、人により熱や咳などの症状が出たりしますが、治癒すれば、それらは自然となくなっていきます。ただ、体内からウイルスが抜けてからも長らく続く症状が患者を苦しめる場合もあります。今回は、コロナの特徴的な症状かつ後遺症のひとつである味覚・嗅覚障害について実体験を元にお伝えしようと思います。

 始まりはコロナ発症から2日目の夜中。急に火事の後のような煙の臭いがして、これはおかしいと感じました。次の日には味覚と嗅覚がほぼ機能しなくなっていました。味覚・嗅覚が機能しないと聞くと「まあ風邪で鼻詰まりになったら大体そんな感じでしょ?」と思う方もいるかもしれません。しかし、それらとは違うとハッキリ感じました。

 そもそも味覚・嗅覚が機能しなくなることは大したことではないように考えがちですが、そうではありません。人間には古来の分類で「五感」というものがあります。五感とは味覚・嗅覚・視覚・聴覚・触覚の5つ。このうちの2つを失うと考えると、事の重大さが感じられるかもしれません。

 では、実際にどういう感じになるのか、あくまで私の場合ですが、毎日つけているメモを元にお伝えしたいと思います。

Day4 昼

 「もりうどん」。塩味がほぼ分からないので、まず「つゆ」の濃さや希釈が正しいのかすらおぼつかない。水を増やしても味は変わらず。薬味(ネギや生姜)は完全に食感要員。試しにワサビをそのまま食べてみるも鼻にもツーンと来ない。速攻で飽きる。

 これはホテルに隔離される前日に自宅で食事をした時の様子です。家人が倦怠感が酷く、食欲があまりなかった私を気遣って食べやすい「もりうどん」を出してくれたのですが、このような感じでした。味覚や嗅覚がわからないと、味や匂いに反応できないので危険です。この時期、食中毒とかの危険性は高いですが、腐敗していても分からないという怖さを感じました。

 もし、コロナに感染して独り暮らしの場合は少しでも不安のある食べ物は避けた方が賢明だと思います。もちろん、匂いもわかりませんからガス漏れや、何かが焦げたりしている火事の初期段階にも気づかないでしょう。これも非常に危険です。ガス探知機などがきちんと作動しているか調べておいた方が良いでしょう。

Day4 夜

 「シュウマイ」は弾力のある“ソースなし豆腐ハンバーグ”のような感じ。「ポテサラ」は微妙に素材の甘味を感じるものの、何を食べているのか不明。中濃ソースをかけても同じ味。「野菜の黒酢炒め」は酢が強いのだろうとは何となく感じられるが、その程度。サツマイモが本来以上に甘い。「白米」はほのかな甘味がある何かの食べ物。「海苔」は何の味もしないし、あっても気づかないレベルだった。

※ デンプンの甘味は感じやすい。酢は雰囲気が分かるので味が感じられない中、食事の中で大切な要素のひとつ。

 これは実際に全て私の身に起きて、いまでもまだまだ回復していない味覚・嗅覚障害の始まりの出来事です。いままで当たり前にあった感覚がなくなるというのはこういう事なんだなと痛感したのと同時に、これがずっと治らなかったらという不安に襲われます。

 すぐに調べてみると、だいたい1カ月くらい続く方が多いようですが、全然治らないという方もいました。恐ろしいですね。おいしいものを飲食することがライフワークと言えるくらいの自称美食家の私には耐えがたい苦痛です。しかし、対処法もないので、この症状とどう付き合って生きていくかをすぐに考えはじめました。

 まずは翌日から隔離されるホテルでの食事。ホテルでは1日3食支給されますが、味はおそらくというか、絶対に一般向けなはずです。ここ2日の経験からするとわびしい食事になることは容易に想像できます。外出も出来ません。なので、とりあえず家にある調味料をかき集めてトランクに。さらに、味噌汁の素、カップ麺、お菓子類、粉末鶏ガラスープとかまで詰め込みました。

 ほとんど食事しか楽しみがない隔離生活をいかに快適に過ごすか。どうアレンジしたらおいしいのか。それらを記録して今後感染した方の参考になれば、という使命感を背負い、私のホテル隔離生活は始まったのでした。

(まいどなニュース特約・上村 慎太郎)

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