あれが「かなとこ雲」か!この夏SNSで話題になったチョー個性的な雲の正体とは?専門家に聞いた
この夏、SNSによく登場した「かなとこ雲」。初めて聞いた人も多いのではないだろうか。空にはこのかなとこ雲をはじめ入道雲、秋はうろこ雲やいわし雲など、さまざまな雲が浮かぶが、なぜこんなにいろんな雲ができるのか。天気の専門家に聞いてみた。
■かなとこ雲は、上空の見えない壁に阻まれてできる雲
「かなとこ雲は、積乱雲がぐんぐんと上に向って成長し雲の上端が横に広がった雲です」と解説してくれたのは、気象予報士の其田有輝也さん。
夏の太陽で温められた空気には、多くの水蒸気が含まれている。それがどんどん上昇し、上空で水や氷の粒になる。それが雲だ。積乱雲は地表面が熱くなるほど発達しやすい。いわゆる入道雲だが、さらに上空へ発達しようとすると、やがて見えない壁のようなものに阻まれる。
この壁のようなものとは、地表から1万メートルほどの高さにある「対流圏界面」のことだ。地表から対流圏界面までを「対流圏」、上を「成層圏」と呼ぶ。ほとんどの場合、積乱雲は対流圏界面を超えて上に成長することはできない。対流圏では高度と共に低下していた気温が、成層圏に入ると上昇し始めるからだ。
対流圏界面に到達した積乱雲は、それ以上上昇できず、対流圏界面にぶつかって横へ広がる。その形状が金属加工の道具であるかなとこに似ているので、「かなとこ雲」と呼ばれるのだ。
かなとこ雲は発達した積乱雲なので、大雨や雷、低地の浸水や突風などが発生しやすい。「テレワークでパソコンを使う人は、雷が近づいたら電源を切った方が無難です。“雷サージ”といって落雷で一時的に高電圧が流れると、専用のアダプタがない場合は機器の故障の原因になります」。
其田さんは、冬も日本海側の地域は気をつけて欲しいという。「日本海側の地域で発生する雪を伴った嵐は、発達した積乱雲が原因の場合もあります。大陸からの冷たい空気が上空に流れ込み、日本海の海面付近で温められた空気との気温差により、大気の状態が不安定になることで発達するんですよ」。
■ 秋の空はなぜ高い?
秋になるとよく「空が高くなった」といわれる。それは、雲ができる高さに関係する。「大気の気温が下ると、モクモクとした下層の雲の発生が少なくなり、代わりに空の高いところにある巻積雲や巻雲と呼ばれる雲が発達しやすくなります。いわゆるうろこ雲や、いわし雲です」。名前に「巻」がつく雲は、おおよそ上空5000~1万3000メートル付近と、比較的高いところにできる。「空気が澄んでくる季節なので、それも空が高く見える理由の一つです」。
気象の世界では、形状ごとに雲を10種類に分類している。これを「十種雲形(じゅっしゅうんけい)」という。積乱雲や巻積雲などもその一つだ。人々は親しみを込めて入道雲やかなとこ雲などとモノに見立てて呼んだ。
「これからは、秋雨前線の時期です。南の暖かく湿った夏の空気と北の乾燥した冷たい冬の空気がぶつかって発生する、季節の変わり目のサインです。さらにここに台風がやってくると、刺激された秋雨前線と台風本体の雲による大雨が予想されるので局地的な大雨や落雷、突風や河川の増水に注意が必要です」。
好きな雲はと聞くと「モクモクと綿菓子のような積乱雲や積雲、あとサッとハケで掃いたような巻雲です。デザイン性がたまりません」。さすがwebデザイナーという肩書も持つ其田さんらしい答えだった。
ちなみに飛行機雲は、飛行機から出る水蒸気やチリを含んだ排ガスが原因でできる雲だ。知れば知るほどおもしろい空の表情を眺めるのも、楽しい秋の過ごし方かもしれない。
(まいどなニュース特約・國松 珠実)