半沢ロスに送る、半沢直樹の実在モデル検証 「JAL」「民主党」だけじゃない
「遂に半沢直樹が終わってしまった。来週から日曜日の夜が寂しい限り」と思っている半沢ロスの方に改めて、今作品のモデルについて解説していきたい。
今回のシリーズがJAL(帝国航空)と民主党(進政党)をモデルにしていることは著者自らが明らかにしているが、その他の登場人物はネット上でも話題を呼んでいる。
当時のポジション的には白井国交大臣は前原誠司氏、箕部幹事長は小沢一郎氏だが、言動などから憶測すると白井大臣は蓮舫氏や当時国交副大臣だった辻元清美氏をミックスした架空の人物、箕部幹事長は前原氏の政治グループ(凌雲会)の顧問、後見人的役割の仙谷由人氏もミックスされているのではと想像が駆け巡る。
モデルになったJALは、債権放棄について銀行の猛反発にあい、一カ月でタスクフォースが解散、その後、会社更生法の適用を受け、銀行側は87.5%の債権放棄(モデルと噂される東京三菱UFJは514億円の債権を放棄)、上場廃止、京セラの稲盛和夫氏を会長に迎え入れ、再上場を果たすというドラマとは違う展開になっているので、あくまで本ドラマは事実とは異なる池井戸潤氏という天才作家の作品であることは言うまでもない。
ただ、池井戸作品に魅かれるひとつは、過去の事件や事象をうまく作中に取り入れるところにある。今回の後半ストーリーの中心は、箕部幹事長の金の流れが鍵を握るのだが、これにもモデルになりうるよく似た事件がある。
親族企業の伊勢志摩ステートに転貸される20億円の資金で購入した土地が伊勢志摩空港になったという話は、田中角栄幹事長(当時)が親族企業に購入させた二束三文の土地がその後建設省の事業用地となり莫大な資産形成がされたと立花隆レポートで暴かれた事案がトレースされているように映る。(最もかつては都市計画に絡む同じような事件化しない事案が沢山あったと言われているが。)
旧Tによる箕部幹事長への不正融資絡みは、政界の牛若丸と言われた山口敏夫元労相が逮捕された二信組乱脈融資事件を彷彿とさせる。この事件では元大臣の親族企業に数百億円の不正融資が行われ、山口敏夫元労相は背任容疑で実刑判決を受けている。
とどめは、ストーリーのクライマックスで解決のカギを握る国税庁の黒崎の動きだ。これは東京佐川急便事件を見ると展開が酷似している。佐川急便からのヤミ献金で金丸信自民党副総裁を東京地検が追い込むが、金丸氏の激しい抵抗に決定的証拠を掴めず、政治資金規正法違反、20万円の罰金で一旦解決するのだが、その後国税庁の協力を得て、ヤミ献金で日本債権信銀のワリシンを購入していたことが発覚。
10億円の脱税により所得税法違反で逮捕された。「政治家に手心」とバッシングされた東京地検にとっては、きっちり「やられたらやり返す」という結果だったと言える。
作品が終わった今、改めてそのモデルなどに思いを馳せてみてはいかがだろうか。(あくまで上記は私の推察に過ぎないのであしからず。)ちなみに原作のみならず、JAL再建を題材にした小説はいくつもある。秋の夜長にそれらを紐解いてみるのもいいかもしれない。
◆村山 祥栄(むらやま・しょうえい)前京都市会議員、大正大学客員教授。1978年京都市生まれ。専修大学在学中は松沢成文氏の秘書を務める。リクルートを経て京都市議に。2010年、京都党を発足。2020年2月の京都市長選で出馬も惜敗。現在は大正大学客員教授。