人はなぜレトルトカレーを温めるのか? 「温めなくても食べられるのか」…メーカーに聞いた
レトルトカレーを湯煎で温めながら、ひとつの想いが湧いてきた。「これは温めなければ食べられないのか? そのまま食べられないのかな」。そんな疑問を解決するため、メーカーに問い合わせてみた。
■温めることは絶対条件なの?
朝昼晩を問わず、手早く食事をとりたいときに重宝するレトルトカレー。インスタントラーメンと双璧をなす、お台所に一大革命を起した食品といっても過言ではないだろう。いまでは専門店にも引けを取らない味の製品が、数多く開発されている。
どのメーカーのレトルトカレーも、食べる前に共通した作業を行う。それは「温める」こと。
パッケージの裏には、メーカー各社だいたい同じ文章で「(お湯で温める場合)パウチの封を切らずに熱湯に入れ3~5分沸騰させてください」「(電子レンジの場合)深めの容器に移して、ラップをかけて温めてください」と記載されている。
だから「レトルトカレーは温めてから食べるもの」という意識が定着している印象を受ける。調べてみると「温めなくても食べられる」という結論が出ているようだが、あらためて確認してみたい。
まずはハチ食品株式会社の事業推進室に尋ねてみた。
「レトルトカレーは加圧加熱殺菌された食品であり、内容物は既に調理された状態ですから温めなくても食用には問題はありません」
ハウス食品グループ本社株式会社の広報課にも尋ねてみると、
「完全調理済みなのでそのままでも食べられますが、温めたほうがおいしく食べられます。温めることにより動物性油脂が溶け、おいしくお召し上がりいただけます」
という、共通した回答だった。
ただし、カレー製品の多くは動物性油脂が含まれているため、冷えた状態だと油脂分が固まることがあるという。
「風味は劣りますが、差し支えはございません。温めたほうがよりおいしく召し上がっていただけます」(ハチ食品)
◇ ◇
ものは試し。筆者が実食してみた。メーカーは伏せておく。スーパーで買ってきた、ごく一般的なレトルトカレーだ。
お皿に熱いご飯を盛り、カレーは温めずにパウチから絞り出す。中身は、湯気がたっていないだけで、何の変哲もない普通のカレーだ。
ひと口食べてみると、いわゆる「とろみ」が強い感じがした。風味は、劣るというより「弱い」という感じ。残暑の時季で気温が高いせいか、油脂分は固まっていなかった。冬だったら固まっているかもしれない。肝心の味も、温めたときとさほど変わらず、問題なく食べられた。
ちなみに「温めなくてもおいしく食べられるレトルトカレー」もあるそうだ。
「植物油脂を使用した商品がございます」(ハチ食品・ハウス食品)
■長期保存できるレトルトにも「食べごろ」はあるの?
レトルトカレーを温めなくても食べられることが分かったので、ついでに賞味期限についても尋ねてみた。メーカーによってバラつきがあるものの、未開封で1~2年と長く設定されている。それほど長期保存できる理由は何だろう。
「レトルト食品とは『加圧加熱殺菌した食品』という意味です。入っている袋(パウチ)の内側はポリプロピレン、外側はポリエステルやアルミ箔など複数の素材を重ねたフィルムですから、微生物、水、空気、光を遮断することができ、食品の腐敗を抑制するのです」(ハチ食品)
「微生物による腐敗や、光による変質はありません。また、酸素による品質の変化も少ないため、長期間保存が可能となっています」(ハウス食品)
レトルト食品はパウチに入れて密封し、約120度の高温で一定時間加熱することでボツリヌス菌など食中毒の原因になる細菌類を死滅させてある。つまり外的要因を遮断して密閉し、高温で殺菌することで長期保存を可能にしているのだ。
ならば、その1~2年の中でいちばんおいしい食べごろはあるのだろうか。
「賞味期限内であれば、いつでもおいしく召し上がっていただけるように商品設計しております」(ハチ食品)としながらも「密閉し殺菌しているため腐ることはありませんが、原料自体の経時変化により風味が変わってしまいますので、お早めにお召し上がりいただくことがおすすめとなります」(ハチ食品)。
「食べごろは特にありませんが、賞味期限内にお召し上がりください」(ハウス食品)
◇ ◇
結論として、レトルトカレーは温めなくても食べられるし、いつ食べてもおいしいということ。変ないい方かもしれないが、これで「安心」する人もいるのではないだろうか。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)