「脱水ケーキは香りが立つ前に焼く」→語感はなんだか美味しそう?でも実態は…<おもしろ業界用語・水道設備編>
飲み水を供給し、排水をスムーズに行う水道設備。機能が停止するとたちまち困ってしまう、最も重要なライフラインのひとつだ。水道を扱う「設備屋さん」の用語について、設備工事会社を営むHさんに聞いた。
■パイプ、チューブ、ホース、管はそれぞれ別物?
設備屋さんが扱うのは、大きく分けて「水」(上・中・下水道)と「空気」(空気調和)だ。このうち水道関係の用語を集めてみた。
水を効率よく移動させるには中空になった筒の中を流せばいい。ところが同じ筒でも、形状や材質によって呼び方と役割が変わるらしい。
まず「管」と書いて「かん」と読ませる場合は、「水道管」や「ガス管」のように硬くて耐久性のある材質のイメージ。「くだ」と読ませる場合は、このあと出てくる「ホース」のように材質が柔らかいイメージだという。
「一般的にはパイプ、チューブ、ホース、管は使い分けられます」
「パイプ」は、日本語とドイツ語では「チューブ」との区別がない。だが米英では、規格品を連続的に接続して、長い距離に敷設するものを「パイプ」と呼んでいる。
では「チューブ」はどのようなものかというと、肉厚と外径(または内径)、外径と内径のどれかを指定して製造を発注するものと考えられている。用途も、例えば機械やエンジンのオイルとか冷却水を循環させるような、部分的に使われるものを指す。
また「ホース」はゴムや樹脂製で柔軟性があり、常設の配管には使われない。
■「清水器」と「整水器」。読み方は同じ「せいすいき」でも表記が変われば別物
「どちらもおいしい水をつくる装置という点で共通していますが、整水器には医療効果も期待されています」
「清水器」は、活性炭フィルターなどで水道水を濾過して残留塩素や不純物を除去し、さらにカビ臭や有機物を取り除く装置のことで「浄水器」と同じ意味で使われる。
「整水器」は、浄化した水をさらに電気分解して「電解水素水」(飲用アルカリ性電解水)を生成する装置のこと。
電解水素水はpH9.0~10.0未満のアルカリ性で、水素を含んでおり、胃腸症状を改善する効果が認められるという。
電気分解でアルカリ性の水をつくれるのなら、逆に酸性の水もつくれるのでは?
「そのとおりです。整水器は酸性水をつくることもできます」
ちなみに酸性水は、洗顔や食器洗いに適しているそうだ。
■語感はおいしそうだけど「脱水ケーキ」ってなに?
「たんに『ケーキ』と呼ぶこともあります。下水処理場で発生した廃棄物(汚泥)から水分を取り除いて固めたものです。もちろん食べられません」
浄水場や下水処理場で行われる濾過処理の過程で、水分を99%含んだ泥状の「汚泥(おでい)」と呼ばれる廃棄物が発生する。有機物を含んでいるため、放置すると腐敗して悪臭を放ったり感染症の原因になったりする。だから水分を75%程度まで取り除きスポンジのような固形にしてから焼却するのだ。焼却する前の、スポンジ状のものが「脱水ケーキ」である。
ちなみに、焼却した灰はレンガや建材などの原料に再利用される。
■「エルボ」「チーズ」「トラップ」…家の中でもよく見かけるアレの名称
「肘のことを英語で『エルボ(Elbow)』っていいますよね。まっすぐな水道管(直管)をL字型に曲げる継手(つぎて)を見たことがあるでしょう。あれを『エルボ』っていいます」
管の材質によっては現場で曲げ加工をする場合もあるようだが、鋼管のように硬い材質だと曲げる部分に継手を使う。90度に曲げる継手は「エルボ」で、T字型に枝分かれさせる継手を「チーズ」という。
また直管どうしをまっすぐ接続する場合もあって、そのための「ソケット」「ユニオン」「フランジ」という継手を管の太さによって使い分ける。
たとえば現場で設備屋の職人さんが「エルボもってこい」とか「ここはチーズだ」といっているのが聞こえたら、「継手を入れているんだな」と分かるわけだ。
「シンクの下を見たら、配水管がS字に曲げられていますよね。理由は分かりますか」
たしかにシンクや洗面台の配水管は、まっすぐのほうが流れやすそうなのに、わざわざ曲げられている。
「あれは『トラップ』といいます。あの曲がった部分に水が残るようになっていて、匂いがあがってきたり虫が侵入したりするのを防いでいます」
そして、トラップに溜った水のことを「封水(ふうすい)」という。
◇ ◇
最後に細かい用語をいくつか紹介しておく。
「雨水」…一般的には「あまみず」だが、業界では「うすい」という。
「温水」…いわゆる「お湯」のこと。煮えたぎった熱湯でも、蒸発する前の液体なら「水」なのだ。
「汚水(おすい)」…家庭や事業所から排出された水で、トイレからの排水を含む。
「坊主(ぼうず)」…ネジを切っていない管。つるつるだから、こう呼ばれる。
「フラッシュバルブ」…水洗トイレに繋げられていて、レバーをカコンと押したら、凄まじい音と勢いでトイレを流す。水道管に直結していて水の使用量が多いため、一般家庭ではしだいに使われなくなっている。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)