コロナ禍でやってみた「なんでも有」の試験方式…大学入試でもいかが? 京大教授が語る
大阪の吉村知事から、うそのような本当の話でうがい薬がコロナに効く…とかいう話がありましたね。まあ、なんでも良いので早く収束してほしいものです。ところで、大学の授業の単位のうそのような本当の話-。
私が高校生のとき、とある予備校に通っていました。35年くらい前の話ですね。その予備校にはチューターという立場の関西の大学の学生さんがいて、予備校の先生のお手伝いなどをされてました。いまの大学で言うと、ティーチングアシスタントみたいなものです。あるとき、京都大学のチューターが、大学の名物教授の話をし始めました。
その教授の先生はもうご逝去されているのですが、森毅先生といって何かと有名な数学の先生でテレビにもよく出ていました。その先生の試験で学生が全く分からなかったので、カレーライスの美味しい作り方を書いて提出したら、単位をもらったと。その話を聞いて、翌年、今度はシチューの美味しい作り方を書いたら、今度は単位をもらえなかったらしい。シチューを書いた学生が抗議に行ったら、森先生曰く、君のはコショウが入っていなかったということです。確かにコショウは要りますね。無茶苦茶おもろい先生がいるんだなあと思って、京都大学に是非とも行きたくなったことを今でも覚えています。
京都大学に入学して、森先生の授業を受けることはできなかったのですが、友人から、この先生の授業は良いぞという話を聞いて、1回生のとき、とある文系科目の授業を登録しました。その先生は、授業に行くと、もう来るなと追い返し、試験問題は毎年同じ問題で2問しか出さない。2問解答すると真面目に読まれてしまって、単位を落とすので、1問目に4、5行書くと単位をもらえるというものです。素晴らしいやんと思って、授業を全く受けずに、試験だけ行って、1問だけ解答したところ、「良」で通ってました。昔は名物教授が割合おられたのですが、最近はその手の話を聞かなくなりました。情報社会ですので、いまだとSNSで叩かれますかねえ?なにかと世知辛い。
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さて、前期の授業はすべてオンラインでしたのですが、困ったのが試験です。自宅で試験ということになり、どうやって公平さを保つのか?ということで、考えたのが、「なんでも有」の試験。教科書、資料持込み可。ネットで調べてもOKとして、試験を行いました。これなら、カンニングを気にすることはないです。唯一、気になったのが友達同士で連絡しあって、問題を解くかもしれないということでしたが、そこは性善説でいきました。
その結果、まあ、当たり前なのですが、勉強せずに試験に挑んだ学生さんは撃沈で、しっかり勉強している学生さんは満点に近いということになり、成績分布も昨年とほぼ変わらないという感じでした。先月、3回生が研究室に遊びに来てくれたので「持ち込み有の試験はどやった?」と尋ねたら、「調べている余裕なんかないですし、誰かに聞いている暇もなかったです」ということでした。実は試験の問題数を例年の倍にしたので、調べる暇はなかったと思います。細かい暗記力を試す必要もなくなりますし、大学入試も「なんでも有」でやってみればいいんちゃうかなあ。あきませんか?
◆安部 武志 2009年、40歳で京都大学工学部研究科教授に就任。電池技術委員会賞、炭素材料学会学術賞などを受賞。京大工学部卒、大阪府出身、1968年生まれ。趣味はゴルフ。