米袋がズラリ…「お米買ってください」米屋のツイートが話題 コロナ禍影響「Go To 米屋」もやってほしい!
米袋がズラリと積み上がった写真とともに「すみません、お米買ってください。お米沢山あります!!」と埼玉県の米屋の訴えるツイートが話題を呼んでいます。大量の米袋と米屋の直球な訴えを目にした人たちから「なんで埼玉でこんなに富山コシヒカリあるんだろ」「買います 買います」「本来は大量に消費される機会が減ってしまったんだよ……。」「日本の食を守って下さる方に感謝感謝」などと、たくさんのコメントが寄せられています。
ツイッターに投稿したのは、埼玉県川越市で米の販売や生産などを営む「ライスセンター金子」代表取締役の金子宏さん。投稿した10月6日から1週間過ぎた現在まで、2万超のリツイートと6万件超のいいねがついています。なぜ「お米買ってください」とツイートされたのでしょうか? 今回の投稿に込められた思いについて、金子さんにお話を伺いました。
■コロナ禍で飲食店やイベントなど外食向けの出荷激減
金子さんは、先代のお父さまから引き継いだ創業60年ほどの老舗米屋を経営。取り引きをしている農家は、地元の埼玉を中心に全国1000件近くにも上ります。地域農業の意欲的な担い手として市町村から認定を受けた農業者として、今年から米の生産も始めているといいます。
--なぜ、山積みになった米袋の写真とともに「お米買ってください」と投稿されたのでしょうか?
「正直言いますと、コロナ禍で飲食店やイベント向けなどの業務用のお米が売れないのです。今年の政府による自粛要請をはじめ、時間短縮営業などが響いて外食向けの出荷が激減しています。特に今年前半は公立小学校などが臨時休校となり、学校給食用のお米が全く売れず…当社が仕入れたお米が倉庫にいっぱいあるんですよ。だから、業務用のお米を買ってほしくてツイートしました!」
■倉庫に大型トラック10台分超の玄米。米屋は“ガラパゴス化”?
--なるほど。新型コロナウイルスの影響で、外食する人が減って。業務用のお米の出荷も減っているのですね。写真では「富山米コシヒカリ」と書かれているのですが、倉庫にはどれくらいの量のお米があるのですか。
「業務用のお米は例年より売上が2、3割ほど減少し、現時点で数千俵ほどの玄米が倉庫にあります。全て新米です。10トン大型トラックの10台分を軽く超えるほど。例年通り契約農家さんから入庫するのですが、自粛解除後も出ていくのが鈍くて…写真の富山産コシヒカリは入善町産のミネラル分たっぷりの水が流れ込む土壌で育ったおいしいお米です。当社は埼玉だけではなく、新潟のコシヒカリや山形のミルキークィーン、秋田の淡雪こまちなど全国各地の米どころからもたくさん仕入れているんです」
--全国の米どころから仕入れているのですね。素朴な疑問ですが、出ていく分が少なければ今年は業務用の仕入れを減らすことはできないのでしょうか?
「毎年仕入れている農家さんのお米はお約束のようなものなので。全量買い付けが基本となっています。売れない場合は損をしても仕入れて売るのが大変なんです…」
--お米屋さんの事情も分からずにぶしつけな質問をしてしまい、失礼いたしました。ツイートされてお米は売れましたか?
「だいぶご興味を示していただきまして、ご購入された方も多数いらっしゃいます。とはいっても、倉庫のお米が相当多く、1日に大型トラック1、2台分の米が入ってくるので、供給に需要が追いつきません。今回ツイートしたのも、米が売れないのは当社だけではなく、現状はどこの米屋も同じです。スーパーだけではなくて、皆さんには近隣のお米屋さんに足を運んで、ぜひお米を買っていただきたいなというメッセージも込めました」
--お米はお米屋さんにもたくさん売っていると。
「そうです。農家さんと一緒で米屋も後継ぎがいなくて廃業するところが多いんです。それに加えて、日本人の食生活が欧米化してお米を食べる頻度も減っており、米屋自体の存在価値が問われるような状況です。今や絶滅危惧種のような商売。ガラパゴス化しています」
■昔は毎日3食お米を食べていたのに…おまけに価格も下落
--昔は毎日3食お米を食べていたといわれる日本人の食生活も変わりましたから、さらに消費が減るとなって危機感も募りますね。
「日本は少子高齢化で人口も減って、これから先、日本人のお米の消費はますます少なくなっていきそうです。宮沢賢治の雨ニモマケズの中で『一日に玄米四合…を食べ』なんて、書かれていました。今は皆さんの食卓ではせいぜい一日1合炊く程度ではないでしょうか…」
--消費の減少が止まらないということですね。また今年は天候不順で米の生育が良くなかったとか?
「全国的にはお米はとれているらしいですが、天候不順で局地的に日照りであったり、大雨だったりで影響は多少は出ているようです。天候の影響よりもコロナの影響で全体的な消費が鈍っているので、今年は例年よりもお米の値段が下がっています。1俵60キロ当たりで、だいたい3000円くらい下がっていると思います。農機具とか農薬、肥料などの価格は上がっているのに、お米の値段だけ下落してしまい、より一層、米屋も農家もしんどい状況です」
■日本の主食・米を守るキャンペーンをお願い!
--ツイートのコメントの中で、「Go To イートも良いけど、日本の主食を守るキャンペーンも必要では? 米農家を始めとする主食産業を守らないと。」というご意見もありました。
「その通りです。コロナの影響でお米の消費も減っています。米農業は日本の礎なんです。日本人がもうちょっとお米を食べて農家さんを助けてあげてほしいです。米屋も含めて応援してもらいたいですね」
--本当に「Go To 米屋」をやってほしいですね。最後に金子さんは「認定農業者」として、今年から米の生産も始めているとのこと。農業の担い手としてどのような取り組みをされているのですか?
「日本の米消費市場が先細りする中、海外にも向けて日本のお米をたくさん売りたいなと思っています。現在、埼玉の坂戸市で協力会社とともに東京ドーム2つ分くらいの敷地に水田を作りました。今年は埼玉の銘柄『彩(さい)のきずな』などを収穫。海外への輸出を視野に入れて準備を進めていきたいです」
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「ライスセンター金子」さんの店舗「小江戸市場カネヒロ」では、毎週土日に玄米の特売を実施中。ご購入した玄米は、店舗敷地内のあるコイン精米機で精米できるといいます。またお店にお米を買いに来てくださったお客さまに限り、景品をサービスをされているそうです。楽天市場やYahoo!、Amazonのショップでも既に精米した白米をご購入できます。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)