青山真治監督、多部未華子と岩田剛典を褒めちぎる 映画「空に住む」で若手の才能に驚嘆
「EUREKA ユリイカ」(2000年)でカンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞とエキュメニカル審査員賞をダブル受賞するなど、国内外にその名を知られる青山真治監督の7年ぶりとなる新作映画「空に住む」が、全国で公開されている。主演にドラマ「私の家政夫ナギサさん」での好演も記憶に新しい多部未華子、共演にEXILE/三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのパフォーマーでもある岩田剛典を迎え、今を生きる全ての女性たちに贈る“人生の応援歌”のような作品に仕上げた青山監督に、2人のことや、これからの映画作りについて聞いた。
◇映画でしか聴けない!?三代目の人気曲
「空に住む」は、郊外の小さな出版社に勤める直実(多部)が、両親の急死をきっかけに、父の弟が所有するタワーマンションの高層階に住むようになることから動き出す物語。作詞家の小竹正人が初めて書いた小説「空に住む」と、その主題歌として作られた三代目の人気曲「空に住む ~Living in your sky~」がストーリーの原点になっているという。
「ここだけの話、映画の中で流れる三代目の『空に住む』は映画に合わせてアレンジを加えていただいたんです。これはちょっとファンの人には耳寄りな情報だと思いますよ。ぜひ書いておいてください」
…とのことなので、まずは書いておきました。
◇養子に来てほしいくらいファンだった多部未華子
愛を喪失しながらも力強く再生していくヒロインを演じた多部には、青山監督は10年以上前から並々ならぬ思い入れを抱いていたという。
「実は夫婦で大ファンなんです。養子に来てほしいと思っていましたからね。特に2011年のドラマ『デカワンコ』は素晴らしかったですねえ。『空に住む』は、かつて彼女を娘にしたいと思っていた男が、大人になった自分の娘を見守るような気持ちで撮った映画です。…僕は何を言っているんだ?(笑)」
当の多部はしかし、完成披露舞台挨拶で青山監督のことを「現場でほとんどコミュニケーションがなく、いまだにどんな人なのかわからない」と冗談交じりに話していた。
「いや、冗談ではないです。緊張して喋れなかったんですよ。演技指導? そんなことしませんよ。シナリオをどれくらい自分のものにされているかは、見ていればわかります。『コミュニケーションを取らなかった』というのは、シナリオの理解度という意味でも彼女が完璧だったからです」
◇突出した存在感を放つ岩田剛典に感服
一方、映画「去年の冬、君と別れ」「AI崩壊」など数々の映画やドラマに出演し、俳優としても活躍する岩田には、大きな刺激を受けたという。
「30歳前後のあの世代と仕事をすると、誰もが極めて紳士で、真面目で、そして頭がいいことにいつも驚かされます。本当に優秀な人ばかり。自分たちの若い頃より、相当クレバーですよね」
「岩田さんはその中でも突出した存在。彼がカメラのフレームの中を歩くだけで、ちょっと見たことのない“何か”が始まるような不思議な感覚を覚えました。パフォーマーとして踏んできた場数、身のこなし、そして頭の良さによるものだと思うんですが、まあ、とにかく大した切れ者です」
◇7年ぶりの映画界本格復帰「人生は冒険だ!」
しばらく美大などで教鞭を執ってきたが、2018年に本人曰く「円満退職」し、再び本格的に映画業界へ。監督作が公開されるのは、菅田将暉主演の「共喰い」以来7年ぶりとなる。
「そう言われるたびに、でっかい船に乗って、荒波に漕ぎ出していくイメージが浮かぶんですよ。新しい航海が始まることに、胸が躍ります。東京の映画館で会見したときに、思わず『人生は冒険だ』なんてあらぬことを口走ってしまった。でも、本気でそう思ってるんで。これから死ぬまで、毎年ごりごり撮っていきたいですね。『コロナ禍で撮影できるのか』ですか? そんな現実的な話はやめましょう(笑)。アクリル板を置いてでも平然と撮るんですよ、映画は」
「空に住む」は大阪ステーションシティシネマなどで公開中。
(まいどなニュース・黒川 裕生)