中3娘の「私、高校進学あきらめる」に胸が締め付けられる 難病の飼い猫を助けたいが…高額な薬が必要
今年5月、知人が犬の散歩中に段ボールに入れられ、捨てられていた4匹の子猫。愛知県に住む林さんは7月、そのうちの2匹を引き取った。それぞれ「ガブ」「とわ」と名付けた。とりわけガブくんは食欲旺盛で、暴れん坊、おまけに甘えん坊とあって、林夫妻と中学3年の長女から愛情を注がれることになった。
ところが、9月に行った去勢手術のとき、獣医師から最初の通告を受けた。血液検査の結果、猫白血病に感染していることがわかった。「母子感染の可能性が高い」と言われた。翌10月、ガブくんのお腹が膨れていることが気になり、すぐに同じ病院に。このとき2度目の通告を受けた。「猫FIP、猫伝染性腹膜炎を発症している可能性が高いです」。加えて、対処療法だけなら余命1カ月という宣告を受けた。
林さんは目の前が真っ白になった…。捨て猫→猫白血病→猫FIP、どうしてガブがこんな運命をたどらなければならないの?と思うと、涙が止まらなくなったという。ただ、そのとき同時に獣医師からある新薬の存在を聞いた。日本ではまだ未承認の「ムティアン」という薬を投与することで9割が回復に向かっているという。一筋の光が差した。しかし、問題は高額なことだった。
「お恥ずかしい話ですが…」と林さん。夫婦共働き、家族3人つつましく暮らしているが、決して経済的に余裕がある家庭ではない。高額な治療費がかかることに、夫妻が頭を痛めているとき、高校受験を控える一人娘からこんな提案があった。「高校進学を辞めて、就職するから、ガブを助けて欲しい。ガブは一生懸命生きようと頑張っているんだから」。真剣なまなざしで言った娘の言葉に胸が締め付けられた。
とにかく、ガブくんのために最善を尽くそうと林さんは新薬を扱っている病院を調べた。その結果、愛知県内には取り扱っている病院はなく、大阪府内のある病院で扱っていることがわかった。10月15日、3時間半かけて、ガブくんを大阪の病院に連れて行った。そこでは猫FIPの詳しい説明、そして念願の新薬「ムティアン」を処方してもらった。払った医療費は税込みで28万7100円。3週間分の薬代だけで、27万7200円。高額であることは覚悟していたが、林さんは現実を突きつけられて悩んだ。投薬終了まで計算では、130万円以上のお金が必要になる。
翌16日から、新薬での治療を始めた。空腹状態で、毎日決まった時間に飲ませなければならない。これを84日間、続けなければならない。投与から4日目となる19日、ガブくんに変化が見られた。膨れていたお腹から腹水がひいたようで、体重が減少。「とわ」やその他の先住猫とも、じゃれ合うようになった。そんなガブくんを見て林さんは「この治療を続けたい」と改めて思った。林さんは家族で話し合い、クラウドファンティングで、薬代を調達することにした。「FIP(猫伝染性腹膜炎)にかかった子猫ガブを助けて下さい」というプロジェクトを立ち上げ、支援者を募っている。
(まいどなニュース・佐藤 利幸)