譲渡先の人に捨てられ野良猫になった猫 猫エイズキャリアになったが、2度目で本当の家族に巡り合う
公園で暮らしていた野良猫が産んだ子猫がいた。ボランティアに保護された後、譲渡先で幸せに暮らしている…はずだったが、同じボランティアが元の公園で、その子猫を発見した。すぐにまた保護したが、病院で検査すると猫エイズであるとこが判明した。
■譲渡後、懐かないから捨てた
福岡県で猫の保護活動をしているボランティアがいた。近所の公園にいた母猫が3匹の子猫を産んだので子猫を保護して、二人の人に譲渡したという。2015年の暮れ、ボランティアは、見覚えのある猫が母猫と一緒にいるところを目撃、目を疑った。「あの時、譲渡した猫だ!なんでここにいるの?」。ボランティアは慌てて、譲渡した一人の人に連絡を取り、「なぜ猫が公園にいるのか」と確認した。その人は、「懐かなかったので元いた公園に捨てた」と認めたそうだ。
子猫は、捨てられてから数年経っていたので、すっかり野良猫になっていた。ボランティアは、「このまま地域猫として育てて行こう」と決め、動物病院で耳カットをした。しかし、念のため血液検査や身体検査をしたところ、猫エイズ陽性が判明、外に戻せなくなってしまい保護した。ボランティア宅には他にも猫がいたので、エイズが感染してはいけないと急いで里親を探した。
■見た目はどうでもよかった
同県に住む川内さんは昔から動物が好きで、家族も動物好きだったので、大人になったら絶対に猫を飼おうと決めていた。
「ペットショップの裏側や繁殖も知っていたので、猫をお金で買うという考えは一切なく、いつか自然な形で出会うと思っていました」
ボランティアと川内さんは、譲渡サイトで知り合って連絡を取り合っていた。「猫エイズの猫なんだけど、飼ってみないか」と相談されて、飼うことを決意しました。猫の写真が数枚送られてきたが、川内さんは、どんな猫であっても飼うと決めていたので、見た目はどうでもよかったという。
■猫エイズだが、普通の猫と同じ暮らしができる
2016年1月9日の夕方、ボランティアが猫を連れて来た。川内さんは、「思っていたよりデカイ!」と思った。
「3歳くらいの成猫だったのですが、地域猫として育てようと思っていたので、厳しい冬に備え脂肪をつけて体重を増やしていたらしく、体重が8kg近くあったんです」
どっしりとした筋肉質の身体に短い尻尾、ゴワゴワした毛。大きな身体だが、縮こまって小さくなり、怯えた目で川内さんを見つめる猫。「その様子を見て、なんだか可愛くて、おかしくて笑ってしまいました」。名前は、一緒に暮らすパートナーにちなんで「ぶんぶん」にした。
成猫の野良猫だったので懐きにくいと思ったが、3日目で川内さんと同じベッドで寝た。ただ、数カ月間は、ずっと同じ部屋で過ごし、ほかの部屋へは行かなかった。
とりあえず川内さんのことは信頼したようだったので、あまり心配はしなかったという。全ての部屋に行くまで1年近くかかった。「子猫じゃなくても可愛い。昨日よりも今日が一番可愛いんです。猫を考えているなら、子猫だけじゃなく、成猫も選択肢にするといいと思います」。ぶんぶんくんは猫エイズなので動物の健康保険にも入れない。「猫エイズが発症するかもしれない」という不安もある。しかし、普段は、猫エイズだということを忘れてしまうくらい普通の猫だという。
川内さんはぶんぶんくんと暮らしてみて、夜寝るときも、朝起きるときも隣に猫がいてくれるだけで毎日が幸せなんだと言う。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)