女子生徒の髪を強制的に黒く染めた高校教諭の行為は「傷害で人権侵害」…水谷修氏が責任問う
千葉県弁護士会が6日、県内の県立高校で昨年3月、女子生徒の髪が赤みがかっているとして生徒指導の教諭らがごみ袋をかぶせて髪に黒染めスプレーを吹きかけていたと明らかにした。弁護士会は「精神的に大きな屈辱を与え体罰に準じる」行為として県教育委員会や学校に警告書を提出。県教委は事実関係を認めた上で「同意に基づいた指導」と説明しているが、「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏は自身の体験を踏まえて見解をつづった。
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千葉県の県立高校で、女子生徒の髪が染色しているのではと、生徒指導の教員たちが、黒くなるようにスプレーを吹きかけたという報道がなされました。また、この件については、弁護士会が、体罰に準じる行為として警告書を関係機関に出したようです。
私は、39年前に横浜市の高校に初めて勤務しました。そして、生徒指導の担当をすることとなりました。当時私の勤務する高校では、毎日のように生活指導検査という名目で、校門で生徒指導の教員が、登校する女子生徒のスカートの丈や髪の色を検査し、スカートの丈が、膝上5センチ以上の場合や髪を染めている場合は、学校には入れず、家に戻り、スカートの丈や髪の色を黒くして再登校するように指導していました。
すぐに職員会議で、この行為が、生徒たちへの人権侵害であり、帰宅させることは、教育を受ける権利の侵害であることを話しました。また、スカートの丈がなぜ規制されているのか、髪を染めることをなぜ学校が禁止しているのかを、時間がかかっても、生徒たちに理解してもらい、自ら納得して変えていくことが、本来の教育のあるべき姿だと話しました。しかし、多くの教員が、学則によってすでに決められたことであるという理由で、反対し、理解されませんでした。
検査を止めて欲しいという提案は通りませんでしたが、生活指導検査の回数は減り、強制的に帰宅させることもなくなりました。
あれから、39年の月日が過ぎています。現在、神奈川県では、多くの公立高校、そして私立高校でも、制服の異装や髪の色、ビアスなどの装飾について、それを強制的に指導することはなくなっています。むしろ、時間をかけても、学校は、知識や技術、社会の常識を学ぶ場であって、そのようなかたちでの自己主張を行う場ではないということを指導しています。
教育は、罰や強制で支配されてはいけないものです。たしかに、これらの方法をとれば、表面上は、生徒たちは、それらに対する恐怖で、表面上はそれに従い、学校自体も落ち着き、見た目は素晴らしいものになるかもしれません。しかし、ここに教育はありません。生徒たちは、その本質的な理由を理解せず、ただ退学させられたくない、叱られたくないという理由から従っているだけで、その圧力から脱したら、その反動で自由を謳歌するだけです。
本来の生徒指導のあるべき姿は、学校がなぜ派手な服装(異装)や染髪、ピアスなどを認めないのか、その理由をきちんと理解させることにあります。それが、できないのなら、あるいは、それに正当な説明できるだけの理由がないのならば、異装、染髪などを認めればいいのです。ただし、そのことが、もしかしたらもたらすかもしれない危険や不利益を教えて。
また、今回の千葉県のケースは、異常です。生徒の髪の毛を強制的に染めています。県教委は、「同意はとった」と話しているようですが、同意があろうとなかろうと、他者の髪の毛を強制的に染める行為は、犯罪です。弁護士会は、体罰に準じる行為といっていますが、何を考えているのかわかりません。体罰どころか、傷害です。また、人権侵害です。この女子生徒が、どれだけの精神的な苦しみを味わったか。
速やかに、関わった教員、そして管理職、教育委員会の関係者、教育長は、自ら責任をとるべきです。また、警察は、傷害事件として、法務省は、人権侵害事件として動くべきです。