猫を保護したのは、15年間飼った犬の3回忌を過ぎたころ…「これも何かの縁」
家の近くで偶然見つけた1匹の子猫。目ヤニがガビガビにこびりつき、被毛も汚れていた。千葉県に住む高野さんは、その頃、犬を飼うつもりでいたが、ひとまず目の前で弱っている命を助けなればと思い、動物病院に走った。
■家の近くの電柱のところで鳴いていた子猫
2019年6月21日、千葉県に住む高野さんの子供たちが自宅前で遊び始めると、向かい側の空き地から子猫の鳴き声が聞こえてきた。高野さんが子供たちと一緒に鳴き声のする方に向かうと、電柱のそばに小さな声で鳴いている子猫がいた。
被毛は汚れていて、目には目やにがこびりつき、あまり目を開くことができず、見えていないような感じだった。高野さんは驚いて、どうしたらいいのか分からず、夫に連絡をした。
「まずは保健所や警察に連絡するのではなく、動物病院に連れて行こうということになりました。子猫の扱い方が分からず、少量の牛乳を与えようとしましたが、見向きもしなかったため、タオルにくるんで近くの動物病院に連れて行きました」
タオルでくるんだ子猫はとても小さく、高野さんも子供たちも「なんとか子猫を助けたい」という気持ちだけで、動物病院へ連れて行った後のことは考えていなかった。
■完全に犬派だったが、猫を飼うことに
病院に連れて行くと、診察の前に診察後に子猫を自分たちで飼うのか、もしくは里親を探すのか尋ねられた。高野さんは、その場ですぐに決めることができず、まずは診察してもらい、元気にしてもらいたいと獣医師に頼んだ。
脱水症状の治療やダニの駆除などをしてもらうために入院することになった。高野さんは獣医師や看護師から猫の習性や飼育方法などを教えてもらった。帰り際には、「必ず翌日、子猫の様子を見に来てください」と念を押されたという。
ちょうどこの時期、高野さんは、保護犬の引き取りについて家族で考えていたため、保護した猫を飼うということはまったく頭になく、周囲の猫好きな人に声をかけて里親を探した。しかし、すぐに引き取ってくれる人は見つからなかった。
「里親さんを探していたら、予想以上に猫を飼っている人が多く、猫は犬より手がかからないということを知り、猫のイメージが大きく変わっていきました」
翌日、子猫を見に行くと、顔が少しきれいなっていて、看護師から「この子はイケメンになるよ」と言われた。生後1カ月半くらい。フードを少し食べたと聞いてホッとした。同時に、高野さんは、これも何かの縁かもしれないと思うようになった。
「ちょうど15年間一緒にいたダックスフントのリクの3回忌が過ぎたばかりで、リクからのメッセージなのではと思いました。当時は完全な犬派でしたが、病院に2泊して、迎えに行くときには子猫を家族として迎えると決めていました」
■初めて飼った猫だが、すっかり家族の一員に
高野さんは犬しか飼ったことがなかったが、犬のトイレトレーニングにはかなり苦労した。しかし、子猫は何も教えなくても猫砂でトイレをしたので、家族4人でとても驚いたという。段ボールの爪とぎもすぐに使い始め、まだ生後1カ月半くらいだというのにできることが多く、獣医師や周囲の人から聞いていた「猫は手がかからない」とは、こういうことなのかと実感した。
保護した時、小さく弱々しかったので、強く元気に育ってほしいという思いを込めて「レオくん」と名付けた。
レオくんは、猫らしい気まぐれ屋だが、最近では高野さんにくっついて寝たり、子供たちと一緒に遊んだりすることが増えたという。
ある日、子供が「リクに会いたいな」と口にしたので、高野さんは愛犬のことを思い出して少し寂しさを感じた。すると、その気持ちを察したのか、レオくんが足の上にころんと座って寝始めた。実は、それはよくリクくんがやっていたことだった。
「足に伝わってくる温もりがとてもよく似ていて、やっぱりレオの中にリクがいるのかな」と不思議な気持ちになりました。
レオくんが早朝5時から「ごはん、ごはん」とアピールするので、高野家の朝は早くなった。当時、小3だった高野さんの長女は、レオくんと一緒に留守番すると寂しさが和らいだようだった。猫と暮らすのは初めてだったが、今ではすっかり家族の一員となり、かけがえのない存在なのだという。高野さんは、子どもたちがリクくんを見送り、レオくんを迎えたことで命の重さや大切さ、温かさなど大切なことを学んだと感じている。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)