ルナちゃん、ハルちゃんは野良猫が産んだ子猫だった。店舗の壁と壁の間に置き去りにされ、脱出することもできずミャーミャー鳴いていた。ここで死なれても困ると思った店主が壁を一部壊して救出。店主の友人だった千阪さんが預かった。

■壁と壁の間に置き去りにされた子猫たち

2020年4月、大阪府に住む千阪さんの友人が営む飲食店と隣の店舗との隙間に、母猫が飼育放棄した2匹の子猫がいた。自力で出てくることもできず、3日間鳴き続けていたので、店のオーナーが壁の一部を壊して救出したという。

母猫は去年もそこに子猫を放棄したらしく「毎回は助けられない」と当初は助けるつもりがなかったが、「ここで死なれて虫がわいても良くない」と救出した。しかし、 どちらの店のオーナーも猫を保護できる環境になく、その日は猫を飼っている知り合いに一晩預けて、SNSにあげたのだという。千阪さんは、その写真を目にして保護を申し出た。子猫たちは、月齢3～4週間だった。

■食べて、寝て、疲れをいやす

子猫たちは、ひとまず一晩だけ預かってくれる男性の家に行った。翌日、千阪さんが車で迎えに行き、動物病院に連れて行った。軽い猫風邪をひいていたが、大きな異常はなかった。特に警戒するような様子はなく、ケージに入れて様子を見た。ごはんを食べて安心したのか2匹はくっついて眠り、起きるとゲージの中を探検し、また眠った。疲れているようで、とにかくよく寝たという。ケージから出すと千阪さんによじ登り、膝の上で2匹で寝ていた。

千阪さんは犬を飼っていたが、最初、お互い匂いを嗅いだくらいで、どちらもそれほど興味は示さなかった。

■育てているうちに愛情がわいて手離せず

当初は養育ボランティアのつもりで、ある程度の月齢まで健康に育ったら里親を探そうと思っていた。しかし、元々猫を飼いたいと思っていたこともあり、だんだん2匹が可愛くなって手放せなくなった。

「母猫に捨てられ3日間どんなに心細かったかと思うと『もう2度と心細い思いをさせたくない』『我が家で一生幸せに暮らしてほしい』と思うようになりました」

　黒猫なので黒に由来した名前を考えた。ハルちゃんはモンゴル語で黒ということと、出会った季節から「ハルちゃん」と名付けた 。ルナちゃんは、黒から連想した月という意味のイタリア語にちなんでいる。

ハルちゃんはお姉ちゃんらしく、毛づくろいをするなど、ルナちゃんを守る様子がみら れた。運動神経が良く、カーテンなど高いところに登るのが得意だ。抱っこが好きで、喉を鳴らしながらよく膝に乗ってくる。

ルナちゃんは臆病で、来客があると隠れて出てこない。声が大きく、よく鳴いて何かを訴える。膝に乗って来て自分の後ろ足をしゃぶりながら、お腹をふみふみするのが大好きだ。

2匹を迎えて、千阪さんの家はボロボロになった。カーテンと布製ソファーは見るも無残な姿に。たびたび夫と顔を見合わせて苦笑いすることが多いという。

（まいどなニュース特約・渡辺 陽）