週刊誌の中吊り広告?いいえ、町議会の案内チラシです 攻めのアイデアで地方議会に活気を!

「ごく一部で話題/一般質問の『通信簿』に議員戦慄!?」

「しつこいぞ片山!今回のテーマもICT(情報通信技術)」

「時は満ちた、いざ登壇!姥ちゃんの専門的質問(マニアッククエスチョン)」

「あの事業は今!?」

思わず読みたくなる“見出し”が飛び交うデザインは、一見、週刊誌の中吊り広告のようだが、実はこれ、北海道の鷹栖町議会が定例会の開催を知らせるために作成した公式のチラシなのだ。「面白い取り組み!」「これは議会を見たくなる」とネット上でも注目を集めた試みはどのように生まれたのか。鷹栖町議会事務局に取材を申し込んだ。

事務局「あ、それを作ったのは議員さんです。ご本人に直接お聞きになっては…」

なんということでしょう!担当者に言われるがまま、鷹栖町議会の広報広聴常任委員長を務める片山兵衛(ひょうえ)さんにコンタクトを取ってみたところ、ご快諾いただくことができた。ちなみに片山さん、名前だけ見るとかなりご高齢の方だと思われるかもしれないが、現在42歳(3期目)。12人の町議の中では2番目に若い。そして本職は陶芸家。いろいろわからない。

「今回注目されたのは9月定例会のお知らせですが、実はこのテイストで作ったのは昨年の12月定例会が最初でした。日曜議会の一般質問に関心を持ってもらうため、新聞や中吊りでよく見る週刊誌の広告をイメージして新聞の折込チラシを作ってみたんです」

意表を突くチラシのデザインは評判となり、地元の新聞で取り上げられたり、町外の人が傍聴に来たりと、「思いのほか好評」だったという。よし次も、と張り切っていた片山さんだが、残念ながら3月、6月の定例会は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて同様の企画は中止。コロナ禍がやや落ち着いた9月定例会に向けて満を持して「第2弾」を世に放ったところ、前回以上の反響を巻き起こすことになった。

「3月定例会から始めた傍聴者による一般質問の採点を『ごく一部で話題』『議員戦慄!?』と紹介したのは我ながら気に入っています。光回線の全町整備について12月、3月に続いて質問する自分を『しつこいぞ片山!』と書いたのもなかなか良かったのではないでしょうか(笑)」

この案内チラシ効果で、普段は「せいぜい2、3人」(片山さん)しか来ない傍聴席に、十数人が来るなどの反響があったという。また鷹栖町議会は、このチラシと一般質問を採点する取り組みによって、地方自治体の優れた活動を表彰する「マニフェスト大賞」で優秀コミュニケーション戦略賞を受賞した。

片山さんは「傍聴者が増えると、他の議員さんたちもいつも以上に質問に力が入ります。“広告倒れ”にならないよう、質問の質を高めようというモチベーションの向上にもつながっているんですよ」と笑い、「注目度が増すことによって好循環が生まれていると感じます」と話す。

鷹栖町は北海道第2の都市である旭川市に隣接する人口6776人(10月25日現在)の町。町議選は3期連続で無投票となっており、片山さんは「議員のなり手不足と有権者の関心の低下には強い危機感を持っています。だからこそ、賛否両論あるのは覚悟の上で、冒険が必要だと考えてこんなチラシを作りました」と力を込める。12月定例会の案内チラシは、また週刊誌風とは趣向を変えたデザインを検討中。「なんとか関心を持ってもらうため」、町議会の挑戦は続く。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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