丸型ポストまだまだ現役4400本…東京には中華鍋製、“セレブの街”芦屋に17本、プラモ新製品にも
創業1924(大正13)年の老舗プラモデルメーカー青島文化教材社(静岡市葵区)は11月、懐かしの郵便配達車と丸型ポストがセットになったプラモデルを発売しました。昔ながらの…と思いきや、丸型ポストは全国各地でいまだ現役。さらには変わり種の丸型ポストで地元をPRする街もありました。
■メーカー「絶対に付属させたかった」
プラモデルの商品名は「スバルK88サンバーハイルーフ4WD 1980郵便配達車24分の1」2600円(税抜き)。「丸型ポストを絶対に付属させたかった」と熱く語るのは商品開発を担当した馬場翼さん。本来は「おまけ」のポジションである付属品に並々ならぬこだわりをみせ、丸型ポストありきで車種を厳選。「組み合わせる車両として最も似つかわしいのが今回のサンバーでした」(馬場さん)。
こだわった理由について、「丸型ポストは『一般受けするモチーフ』であると考えています。昨今、ますますマニア向けに先鋭化するプラモデルを少しでも一般の方に手に取っていただきたい、と言う考えもあり、今回は『立体映え』する丸型ポストを絶対に付属させたいと考えておりました」。
同社ではこれまで多様な車種で郵便車のプラモデルを製品化してきましたが、丸型ポストの付属は初。売れ行きも好調のようで、馬場さんの声も心なしかホッとした様子でした。
■現役丸型ポストは4400本
いまだ現役の丸型ポストの正式名は「郵便差出箱1号(丸型)」。1949(昭和24)年に誕生後、昭和40年代前半まで主流の形でした。1970(昭和45)年、後継「郵便差出箱1号(角型)」の登場を機に生産は終了します。
日本郵政の広報担当者によると、全国の郵便ポストの総数は179129本。このうち約4400本が丸型ポストということが分かりました(3月末現在)。
■中華鍋と水道管で「日本一」
「都会から一番近いプチ田舎」というキャッチフレーズを持つ東京都小平市には、現役の丸型ポストが32本もあります(11月10日現在)。市内には「小平グリーンロード」と呼ばれる1周21kmの散歩道があり、豊かな自然に丸型ポストのある光景を残そうと取り組んでいます。
2009年10月には、丸型ポストをモチーフにした巨大ポスト「日本一丸ポスト」が設置されました。高さ2.8m、直径80cm、総重量1.2t、投函口は2.1mと1.4mの高さに2つもあります。日本一のポストを作るために、市民らから材料が持ち寄られたそうなのですが、頭の部分には中華鍋、胴体部分には水道管が使用されたというから驚きます。
■雪が降ると「抹茶かき氷」みたい
抹茶が特産の愛知県西尾市では2008年2月、全国初の抹茶色のポストが設置されました。発案者は同市出身の画家、斎藤吾朗さん。斎藤さんに電話で話を聞くと、とっておきの見どころを教えてくれました。「インスタ映えの流行もあり、北海道など遠方からわざわざ撮影に訪れる人も増えました。雪が降ると抹茶色と白色でかき氷のように見えます」。市の担当者によると、同色は現在、市内3カ所にあるそうです。
■セレブの街になぜ多い?
「東の田園調布、西の六麓荘町」ーー超高級住宅地のある街として全国的に有名な兵庫県芦屋市。ハイソなイメージの街にも昔ながらの丸型ポストが多数残ります。市によると17本。六麓荘町にも2本現存します。
芦屋に多く残る理由について、市や郵便局などに問い合わせたのですが残念ながら「不明」でした。しかし、今から18年前の「神戸新聞」に芦屋郵便局集配営業課長(当時)のコメントが残っていました。「地元の方から『丸型ポストには愛着があるので残してほしい』という要望が強い」(神戸新聞2002年2月15日夕刊から引用)。当時は今より2本多い19本が現役でした。
コロナ禍で遠くに住む家族や知り合いに会いにくくなった分、手紙やグリーティングカードで気持ちを伝える人が増えたという話もあります。次に手紙を出す時は、丸型ポストから投函してみては?
(まいどなニュース・金井 かおる)