エナジー飲料でおにぎりゲット!コンビニのワンプラスワン企画とは?後日引換で「ついで買い効果」
指定された商品を買うと、別の商品が無料となって付いてくる…。コンビニエンスストア業界では、この「ワンプラスワンキャンペーン」と称される企画が広がっている。「700円スピードくじ」が接触を伴うことなどの要因も含めてコロナ禍の中で減少傾向にあり、「ワンプラスワン」がキャンペーンの主流に取って代わった感もある。流通アナリストの渡辺広明氏に話を聞いた。
「1個買うと1個無料」のメリットとは?渡辺氏は当サイトの取材に対して「何が当たるか分からない『くじ』より、個人の趣味、嗜好の範囲内にある商品を無料でゲットできるという点です。例えば缶コーヒーとか、お茶とか、自分のブランドを買い続ける人に対して同じメーカーの系列商品を無料の『景品』的に付ける。くじだと『興味のないものが当たっても困る』と手を出さない人もいるが、嗜好に合った商品をもらえるのなら買ってみようという消費者の心理がある。メーカー側も自社の他製品を印象付けられ、競合他社のブランドに流れないようにできる」と解説した。
そこで、25日時点でのコンビニ各社のキャンペーンを確認した。
【セブンイレブン】
・「モンスターエナジー/モンスターウルトラパラダイス/モンスターパイプラインパンチ」を1本買うと税抜149円未満のおにぎり・寿司が1個無料(26日まで)。
・「ジョージア アメリカーノ ブラック290ml」または「ジョージア アメリカーノ ラテ260ml」を1本買うと「紅茶花伝 ロイヤルミルクティー 440ml/クラフティーピーチティー 440ml」が1本無料(30日まで)
・「ロッテ コアラのマーチ チョコレート」を1個買うと「ロッテ コアラとマーチwithポケモン チーズケーキ」が1個無料(12月1日まで)
【ファミリーマート】
・「紅茶花伝 ロイヤルミルクティー」1本を買うと「紅茶花伝 クラフティーピーチティー/レモネード」が1本無料(30日まで)
【ニューデイズ】
・のど飴(ミニパック)を1個買うと「キリン iMUSE レモン/ヨーグルト/水」が1本無料(30日まで)
この中で記者が気になったのは、セブンイレブンの「エナジードリンクとおにぎり・寿司」。単純計算すれば、税抜き191円のモンスターエナジー(355ml)を買って、税抜き140円の「紅しゃけ」おにぎりをもらえば、飲料代は同51円になる。だが、記者は、おにぎりや寿司をエナジードリンクで流し込む気にはなれない。
今回の「エナジードリンク&おにぎり」の組み合わせについて専門家はどう考えるのだろうか。
渡辺氏は「お茶を買ったらおにぎり、缶コーヒーを買ったらパンがもらえる等なら『親和性のある企画』となるが、モンスタードリンクとおにぎりに親和性があるとはたいていの人は思わないでしょう。その点から、今回はモンスタードリンクの協賛ありきでの対応かもしれません」と推測。「同じブランドのドリンクを景品も含めて2品は出せない。メーカーから見ると、2品エントリーよりも協賛額が半分になり、回転率の高いおにぎりのような商品と連動すると販促効果が出やすい」と指摘した。
記者は、エナジードリンクとおにぎりというイメージのギャップが結果論として逆に目を引く企画になっていると感じた。そして、考えてみれば、無料商品の引き換えは後日になるわけだから、後でおにぎりだけをもらうことになる。その時はエナジードリンクではなく、お茶にすればよい。
むしろ、注目すべきは商品の引き換えが「後日」だということだ。上記の3例で言えば、引換期間はセブンイレブンが購入期間最終日の翌日から2週間、ファミリーマートとニューデイズは同1週間となる。
渡辺氏は「韓国など、海外のコンビニを含む小売業は当日交換が主流で、その場で終わりになりますが、日本のように引換期間が後日だと、またお店に来てもらえるので小売業としてはありがたい。『ついで買い』が期待できます。『もらうものだけもらって帰るのではなく、ついでに何か買って行こう』という人も少なくない。もちろん全員ではないが、一定数いると思います。コンビニでトイレだけ借りて何も買わないケースよりも多いでしょう。レジに立つので何か買って行こうという気持ちになる」と消費者心理を読み解いた。
さらに、渡辺氏は「今後は『ワンプラスワン』から『ワントゥワン』の時代になる」と指摘。「自分の趣味、嗜好に合うものが求められる。細分化していく中、例えばアイドルに絡めた景品などは興味のない人もいる。この先、日本は人口減になりますし、ロイヤルユーザーを大切に囲わないと維持できない。また、コロナ禍によって『非接触』が不可欠となり、スマホを介したキャンペーンになる」と付け加えた。
いずれにしても、自身の嗜好に沿った何かをプレゼントされるのはうれしい。時代を超えた普遍的な人間の心理が、こうした企画の底に流れている。
(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)