豊田真由子、感染対策上GoTo事業は「入も出も同時制限」が最も効果的
低温・乾燥の時季を迎え、新型コロナウイルス感染症が拡大しています。重症者・高齢感染者数が増えていることも心配です。
繰り返しになりますが、「感染の波は繰り返し来る(想定内)。慌てない、過剰に反応し過ぎない。諦観と希望を持って“日常”を生きる。必要な感染防止策をきちんと講じる。自分や大事な人を守るためにも、他者を守る。」
人類の歴史は感染症と対峙してきた歴史。改めて、気を引き締めて、前向きにまいりましょう。
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さて、GoToキャンペーンの対応が議論になっています。新興感染症への対応において、感染拡大防止策と経済喚起策は、生命と社会を守るために、どちらも必要なことであり、感染状況等を見ながら、柔軟に対応を変更していくしかありません。今、論ずべきは「GoTo事業の是非」ではなく、今後何をどうしていくべきかであり、そしてその方策は、現時点での最新の知見を踏まえた、筋が通ったものであることが大切です。
■誰の判断?誰の「責任」?
「コロナ対策で、地域によって状況は違うので、現場の都道府県知事の裁量をもっと拡大せよ」という主張は、これまで随所に見られたので、今回そういう方向になっています。GoTo事業の実施主体は国ですから、「知事の見解を参考に、国が決定する。(もちろん両者緊密に協働しながら)」というのが、妥当だと思います。
また、感染状況の判断(ステージ3かどうか等)が、地域(知事)によって違う、ということのないようにすべきであり、この点、現時点で疑問があります。
そして、一部自治体と国が、責任と負担を押し付け合っているという話もありますが、建設的な状況とはいえません。そういう構図・パフォーマンスが国民に受ける時代は終わっていますし、そもそも命がかかっていて、それどころじゃありません。お互い協力してやってください。
■国による補填
「キャンセル料(と旅行代金の35%)を国が補填」ですが、元々「GoTo事業から除外された場合、該当地域への旅行は助成の対象外となり、除外を理由としたキャンセル料補償は行われない。」と記載されていたと思いますので、本来補填しなくてもよかったはずですが、ハレーションを起こさないよう、配慮したということだと思います。
ただ、「国が補填をする」ということは、結局のところ「国民の税金を使って支払う」ということですので、「国が払ってくれてありがたい」というような話では、実は全く無いのだと思います。また、「こっちは、旅行に行く時間的金銭的余裕なんて無いのに、そこまで負担しなくても」という反対意見も、理解できるところです。
事務手続きもかなり煩瑣になりそうだと思いますので、限られた財源やマンパワーが、真に困っている・必要としている人や事業者に効果的・効率的に使われることを、期待します。
■発着と海外との往来
「感染拡大地域へ行く場合はGoTo事業から除外するが、当該地域から出発する場合は除外しない。」というのは、感染拡大防止の観点からは疑問です。入も出も同時に制限することが、感染対策上は最も効果的なはずです。
また、11月1日から海外からの一部入国制限緩和が実施されていますが、更なる緩和については、世界との日本の感染状況を見ながら、慎重に検討していく事が必要だと思います。
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▼失われていくもの
旧知の町内会長さんたちがおっしゃっていました。
「月に一度の地域の交流会を楽しみにしているお年寄りはたくさんいて、『まだやれないの?』と聞かれて、返事に困る。もちろん、何かあってはいけないので、今は開催できていないが、こうしている間に、あの人もこの人も、(寿命や持病や、新型コロナを理由にした通院控えや閉じ籠りによる心身の悪化等で)亡くなっていっちゃうのよ。」
…豊田、これもまた真実だと思います。非常に難しいところです。
◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。