食品ロスの根源?…日本の小売店が缶詰にもうける「3分の1ルール」が話題に

賞味期限24ヶ月の商品は製造後8ヶ月しか納品できず、16ヶ月過ぎると自動廃棄になってしまう…

日本の小売店が缶詰にもうける「3分の1ルール」がSNS上で大きな注目を集めている。きっかけになったのは、缶詰などの食品を輸入販売する三幸貿易株式会社の下記のような投稿。

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「半永久的に腐らない缶詰の賞味期限は5年と定めている国が多いです。これは虐待(加速度)試験をするにしても、毎回数年間の試験は負担が重すぎる為です。ところが、日本で販売する小売店で賞味期限を短くするようにと指示された事があります。その理由を聞いて驚きました。『賞味期限が長い商品は、保存料が入っていると思われるから売れない。2年の設定にするように。』ご存知の通り、日本の小売店は3分の1ルールを設定しており、賞味期限24ヶ月の商品は製造後8ヶ月しか納品できず、16ヶ月過ぎると自動廃棄です。(但し弊社は拒否しています。)これは賞味期限を44ヶ月も残して廃棄しろと言う事なのです。5年でさえ目安に過ぎず長期間安心して美味しく食べられるのが缶詰です。賢い消費者の皆様には賞味期限の長短で安全性を判断される事が無いと信じたいです。ちなみに日本は3年間推奨です。」

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缶詰に興味を持ったことのある方ならご存知と思うが、缶詰は水や細菌が入らない真空に近い状態で加熱殺菌して製造するため、基本的に保存料は使用されない。にもかかわらずこういったルールがもうけられるのは誤解、偏見に基づいた悪習としか言いようがない。

三幸貿易の投稿に対し、SNSユーザー達からは「廃棄期限短くしろは国がおかしいですね 飲食店経験してるとロスの辛さに悲しくなります」「物は勝手に腐らないって言うことは義務教育の中で教わることの一つなんだけどなぁ...」「ツナ缶の地元では、買ったツナ缶を2~3年寝かしてから食す…と聞きました。その方がうんと美味しいと地元の方々が口々に仰っていました。」など共感のコメントが多数よせられている。

「3分の1ルール」について三幸貿易のご担当者の方にお話をうかがってみた。

中将タカノリ(以下「中将」):小売店がこのようなルールをもうけていることにびっくりしました。今回のご投稿をされようと思ったきっかけをお聞かせください。

担当者:食品加工工場に行くと、多くの生き物が加工されていますが産廃処分場に行くと、その多くが廃棄されています。この両方を長年見ていて、常に心を痛めておりました。

昨今、フードロスの問題が叫ばれていますが、その問題の核心は賞味期限に対する誤解と以前ツイートさせて頂いた食品の安全と安心の履き違いにあります。これをメーカーさんが発言すれば、自己弁護になってしまいますが弊社は幸いにも利害関係が薄い(むしろ競合です)ので第三者的立ち位置として問題提起のTweetをいたしました。

中将:小売店の3分の1ルールにより廃棄されてしまっている缶詰は相当な量にのぼるのでしょうか?ディスカウントショップなどで安く流通させるわけにはいかないのでしょうか?

担当者:訳あり商品として放出される商品は極めて少なく、殆どは廃棄されております。これは、値引き販売すると定価販売している小売店さんに迷惑がかかるためです。各社実数を公表しませんし産廃業者さんにも守秘義務がありますのでデータは全くありませんが、相当な数にのぼるのは確かです。

中将:三幸貿易さんは3分の1ルールを拒否されているということですね。

担当者:弊社は限り有る生物資源を頂く以上、道理の通らないルールで無駄にしたくないという思いを說明した上でご理解頂けているお店様とだけお取引させて頂いております。この為、返品条件のつかない買い切りでのお取引とさせて頂いております。幸いにして、店頭で賞味期限が切れたというお話は今までありません。

この夏、ピクルスを終売した折はネット通販限定で処分セールをいたしました。今後、処分が必要になった場合も同様の形で行いたいと思っております。

中将:今回のご投稿には数多くの共感のコメントが寄せられていますね。

担当者:今回、意外だったのは概ね好意的な反応だった事です。小売現場では賞味期限原理主義が根強く、お客様からの誤解に基づくクレームも非常に多かったためです。

これはTwitterのユーザーセグメントが若く、情緒よりも科学的根拠を優先させる人が多いからかも知れません。もちろん、中には「メーカーがどんなに自己弁護したって賞味期限切れなんて気持ち悪くて食べられるか!」というネガティブなTweetも頂きましたが、極めて少数でした。

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▽三幸貿易株式会社

缶詰などの食品を輸入販売する貿易会社。"世界一臭い食べ物"として有名なスウェーデン産のシュールストレミング缶の取り扱いで有名だが、ご担当者いわく「シュールストレミングは缶詰ではありません。(殺菌されずに製造することからJAS法など日本の缶詰の定義から外れるため)」とのこと。

所在地:東京都中央区日本橋室町1丁目13-11第三日高ビル3階

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現在、食品廃棄、食品ロスの多さは世界的な問題。この問題に我々が誠実に向かい合うためには、まず「3分の1ルール」のような独自ルールの見直しから手を付けていかなければならないのではないだろうか。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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