ようこそ「月光百貨店」…ここは「本当に星を売る店」との噂 芦屋の住宅地にたたずむ唯一無二の雑貨屋

「よく気持ちが落ち着く店といわれます。『本当に星を売る店があった』とうれしそうに言ってくださる方もいました」と静かな口調で語るのは、兵庫県芦屋市にある「月光百貨店」店主の星野時環(ときわ)さん。ツルに覆われた広いテラスと、散りばめられた小さく青白くライトが印象的な店だが、それだけではない。実はこの店、毎月末の一週間ほどしか開店しない、訪れて開いていたらラッキーな雑貨屋だ。

■月に一週間だけ開店、作品展も

深い紺色の店内。天井には星が瞬く夜空がデザインされ、星形のライトが灯る。昼間も薄暗いが、かえって秘密基地に入り込むようなわくわく感がある。

アート性の高い一点ものの造形作品や置物、人形などのアンティーク。宇宙や星、月を愛でる異彩の小説家、稲垣足穂(たるほ)をはじめとしたさまざまな書籍など、空想をかき立てられる品々が、棚や壁にぎっしり。これらは「昼と夜なら夜が好き。静と動なら静が好き。そして美しいものが好き」という星野さんのお気に入りばかりだ。

目を引いたのが『結晶育成キット』。母岩についた種結晶が成長し、7~10日で見事な結晶体ができ上がる。「不思議でしょう?理科の実験の感覚で、誰でもできます」。造形作家でもある星野さんのおすすめだ。

開店期間中は、星野さんが声をかけた作家さんの作品展も開催する。11月はコラージュアーティストの山本佳世さん。12月は22日よりアクリル絵の具で可愛らしいテイストのイラストを描く、よこやまぺん作品展を予定。会期後も、引き続きその作家の作品が販売される。

■自分のテイストは唯一無二かも

2016年夏に開店して4年半になる「月光百貨店」。以前もこの場所には雑貨屋があり、星野さんの行きつけだった。ところが突然、閉店の知らせが舞い込む。当時、星野さんは自身の作品を展示・販売する小スペースを探すものの、どうしても良い場所が見つからず諦めていた頃で、この上、お気に入りの場所までなくなるのかとがっかり。そんな星野さんに雑貨屋の店主が、「この店をこのまま使っていただける方に引き継ぎたい」と声をかけた。

「何しろ店舗の運営です。とっさに断りましたが、このタイミングで舞い込んだ話に夢を叶えるチャンスと思い直して」とオープンしたのが、月光百貨店だ。

フリーペーパーの制作経験があり、31話のショートストーリーを集めた『月光奇譚』を出している星野さん。こちらは好評につき完売したそうだが、他にも書籍『CRESCENT MOONLIGHT』を店内で販売する。

「実は、私のテイストと似た書籍を置く書店でも販売してもらえないかとお願いしたこともあるんです。でもほとんどの店で、うちとは違うからと断られて。自分のテイストは、もしかすると唯一無二なのかも知れません」。

来年は、店舗運営と創作活動に専念したいと計画中の星野さん。

「毎回、作家さんが一生懸命展示の準備をなさるのに、それをたった一週間ほどで終わらせるのがもったいないと思って。お客さまからも開店日数を増やして欲しいと言われますし」とあくまで謙虚で穏やか。作家とともに歩み独自のスタイルを貫きながら、その穏やかさがそのまま店の雰囲気になっている。

(まいどなニュース特約・國松 珠実)

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