なぜ明石市のコロナ支援策は群を抜いているのか 弱者に対する市長の目線「どこの自治体でもできる」
コロナ禍での自治体の支援にかなりのばらつきが出てきているのは皆様も薄々お感じのことと思うが、兵庫県明石市は厳しい財政状況の中、手厚すぎる支援を打ち出し続けている。このたび、コロナ支援対策の一環で、ひとり親家庭に新たに現金5万円を支給することを決めた。コロナ禍に入り2度目の支給となる。
とにかく明石市の独自の手厚いコロナ支援策は群を抜いている。ひとり親家庭に現金5万円支給に始まり、高校進学奨学金66万円(給付)、定額給付金の対象にならなかった新生児にも独自に10万円を給付、こどもの養育費緊急立て替えとして5万円、コロナの影響で通所介護などを利用できない要介護者には最大3万円を支給。
高齢者や障がい者には宅配やタクシーに使えるサポート券1万円分支給、生活要支援者には5000円分のサポート券、水道基本料金は6カ月分無料だ。さらに、個人商店には100万円の緊急支援(貸付)、大学生には学費の補助として100万円(貸付)、「遅い、遅い」と言われた例の定額給付金も生活困窮者には先行支給を実施した。外出できない未就学児には図書館スタッフが絵本を自宅に届ける「絵本の宅急便」など、かなりきめ細やかに対応している。
元々、子育て世帯に対しては手厚いことで有名な自治体だが、この厳しい財政上場の中で、それらに加え、高校生までの医療費の無償化(現在は中学生まで)や「オムツ定期便」という名の0歳児見守り訪問(1歳児になるまで毎月おむつや子育て用品が無料で届く)という新規事業にも着手している。
失礼ながら、特別豊かそうには見えない明石市でなぜ、大盤振る舞いが続けられるのだろうか?そんな疑問を泉房穂明石市長にぶつけてみた。
「明石市は決して豊かではありません。うちはとにかくスピード最優先。感染対策と経済対策の両立をしながら、本当に困っている市民にとことん寄り添うべきです。正直、国のスピードも遅すぎる。GO TOもいいけど、ひとり親の生活困窮世帯などはそれどころじゃないわけです。だから、お金は何とかする」
--何とかするって、大丈夫なんでしょうか?
「今回の一人親家庭への5万円支給は1億2000万円かかりました。国から28億円のうち3億円が残っていたのでこれを充てる。やろうと思えばどこの自治体でもできるわけです」
確かに、「困ってる人も困っていない人も関係なく一律全員に配る」ことはしないで、困っている人を拾い出してそこに適切な処置をするから、少ない予算を有効につかえるのではないかと思う。
ちなみに、蛇足だが、泉市長の弱者に対する目線は半端ない。例えば、明石市ではひとり親世帯を悩ます「養育費の不払い」に対しても、市が立て替え払いをし、後日養育費の取り立てを代行し、さらに親子面会のサポートまで行うなど本当の現場の悩みに寄り添っている。そんな市長だからこそ出来る「日本一手厚い支援策」なのかもしれない。是非、私の街でも、いや、全国の自治体が見習ってもらいたいものだ。
◆村山 祥栄(むらやま・しょうえい)前京都市会議員、大正大学客員教授。1978年京都市生まれ。専修大学在学中は松沢成文氏の秘書を務める。リクルートを経て京都市議に。2010年、京都党を発足。2020年2月の京都市長選で出馬も惜敗。現在は大正大学客員教授。