皮膚が剥がれた猫と断脚手術の猫が大親友に 再びの“奇跡の出会い”で里親に巡り会えるか
同時期に大けがを負った2匹の猫がいた。一方は顔の皮膚がはがれ、もう一方はひどい骨折で断脚手術。ともに長期入院を余儀なくされた2匹は、よほど気が合ったのか入院中いつも寄り添っていた。引き離すのが困難なほどの大親友となった2匹は今、保護猫シェルターに身を置いて2匹一緒に保護してくれる里親の出現を待っている。
■病院で大親友となった2匹
今年7月、個人ボランティアから保護猫の相談が入った。
「いま動物病院で入院中の負傷猫を保護してほしい」
負傷猫は断脚手術後、動物病院で入院しているそうだ。当時、保護施設に空きがあり、退院のタイミングでその猫を引き受けることにした。
数日後、また別のボランティアから相談が入った。
「同じ病院で入院している別の負傷猫も一緒に保護できないか?」
詳しく話を聞くと、3カ月前の同時期に2匹の負傷猫が動物病院へ入院した。この猫たちが今回相談の猫。入院中に2匹はとても仲が良くなり、保護主と病院関係者はできればこの2匹を引き離したくないと思った。そこで、当団体へ2匹で保護できないか相談をしたのだ。
2匹の猫は、別々の地域から続けてやってきた。1匹は池田市で保護され、名前はタイガ。もう1匹は伊丹市で保護され、名前は坊ちゃんだ。2匹はともに雄猫である。
タイガは顔と体が大きな、いかにもボス猫という雰囲気を醸し出していた。もともと翌週にTNRを控えていたが、他の猫と大喧嘩をして顔の顎先から右耳にかけて皮膚が剥がれてしまった。大きな怪我を負った猫に気付いた保護主が、猫の手伝い屋「ねこから目線。」へ捕獲の依頼をして病院へやってきた。
一方の坊ちゃんは、公園でアイドル的存在だった。子猫の頃に患った風邪の後遺症で片目は白濁していたが、小柄で可愛らしい姿にたくさんのファンがいた。ある日、後ろ足を怪我して現れ、心配した保護主が「ねこから目線。」へ捕獲を依頼して病院へやってきた。その後、負傷した足はかかとから足先まで酷い怪我を負っていることが分かった。つま先は千切れ、骨が開放骨折していた。それぞれ怪我が酷く、長期入院を余儀なくされた。
治療中の2匹は、別々のケージで過ごしていたが、一方が鳴くともう一方が鳴き、一方が食事を摂るともう一方が食事を摂る。別々のケージにいた2匹は、明らかにお互いを意識していた。ある日、2匹をケージから出して対面させると、お互い威嚇や警戒することなく、近寄ってスリスリと頭や体を擦り付けあったのだ。その光景は、まるでお互いの存在を確かめ合う様だったという。その姿に病院スタッフは心を打たれたのだ。
その日から2匹はケージから出るとずっと一緒に寄り添っている。タイガ、坊ちゃんの保護主とも相談し、2匹一緒に保護・譲渡を希望した。筆者は話を聞き、一緒に保護することを決断した。もちろん、ハンディキャップを持った猫2匹を一緒に譲渡することが困難なことは承知の上で、協力しようと思ったのだ。その後、タイガと坊ちゃんは動物病院のスタッフと保護主に連れられて宝塚市の当シェルターにやってきた。
坊ちゃんは断脚のため足が3本。タイガは怪我した所の毛が生えてこない状態で、2匹とも見た目は痛々しいかもしれないが、とても元気で健康である。
今は2匹で迎えてくれる家族を募集している。タイガ、坊ちゃんもそうだが、ハンディキャップを持った猫たちにも幸せのチャンスを掴んで欲しいと思い、12月12日(土)に兵庫県西宮市で「訳猫の譲渡会」を開催する。
保護の経緯はそれぞれで、中には手がかかる子もいる。そんな子ほど可愛かったりするもので、ぜひ目をむけてみてほしい。
(NPO法人動物愛護 福祉協会60家代表・木村 遼)