「今の状況は?私たちがすべきことは?」新型コロナの疑問、豊田真由子がお答えします
新型コロナウイルスの感染が拡大しています。重症者が増え、感染者・重症者・死者は過去最多、地域によって医療機関が逼迫…、こうした状況に、不安はどんどん募るものの、マスクも手洗いもしているし、具体的に一体何をどうすればよいのか分からない、という方もいらっしゃると思います。すでに10か月以上、多くの制約の中で生活をしてきており、その時々の知見を基に、できることを最大限工夫しながら、なんとか日常を送ろうとしてきている…がんばり続けるその心に、先の見通せない不安が、ずしんと重くのしかかります。みなさんの疑問について、Q&A方式でお答えさせていただきたいと思います。
Q 今の状況は?私たちがすべきことは?
A 新規感染者数、重症者数、死者数、医療機関の集中治療室の病床占有率等も増加していますので(※)、対策を強めなければならない時期です。「感染拡大防止策」と「経済支援策」は車の両輪であり、社会を守るには、両方をしっかりと回さなければならない、そして、各々フル稼働ではなく、そのときどきの感染状況・経済状況を見ながら、緩めたり厳しくしたり、調節していくべきものです。
(※)12月9日0時現在、国内の新規感染者数は2148名、重症者は555名、亡くなった方は累計2420名(前日比38名増)=厚生労働省調べ
その点、国や自治体毎の方針が、ときにバラバラに見えたり、矛盾していたり、見えることもあるかと思います。それを批判していても、残念ながら状況は改善しないとすれば、一人ひとりが、考えて、できることをやっていくしかありません。今一度、マスク、手洗い、人がいる場所では大きな声で話さない、換気をする、三密を避ける、会食はオンラインやテイクアウトで、等々、丁寧にやっていただく。「そんなこと分かってるよ、ちゃんとやってるよ~」というお声が聞こえてきそうですが、そうした努力によって、これまで多くの感染が、確実に防げてきているのです。
今、低温乾燥になって、再び感染が拡大してきたわけですが、これまでの防止策を地道に継続していただくこと、そして、人類はこれまでも、こうしてずっと感染症と向き合ってきたんだと、(良い意味での)諦観と希望を持って、日々を前向きに過ごしていただくことだと思います。
上記の人類と感染症について申し上げれば、我が国では新型コロナが大問題ですが、世界の人々は、現在でも、他の多くの感染症にも苦しんでいます。例えば、世界の年間死者数は、結核130万人、HIV/エイズ70万人、マラリア40万人、汚れた水を主原因とする下痢等で命を落とす乳幼児は年間30万人です。今、自国で世界で、何が起こっているか、それは、どういう意味を持つことなのか、それに対して、広い視野と歴史を踏まえた長いスパンで考える必要があります。
Q 医療機関の状況は?
A 報道も多くなされていますが、医療現場の友人知人に話を聞いても、現場は本当に疲弊しています。医療キャパシティとしても、身体的・精神的にも、です。病床やスタッフが不足することにより、そもそも受け入れができなくなる、医療や介護現場でクラスターが発生する、医療従事者の大量退職等が続くこと等により、医療現場が、感染症やその他様々な疾病に対して、適切に対処できない状況に陥ってしまったら、救えるはずの命も救われなくなってしまいます。医療従事者も人間ですので、使命感や責任感でできることにも、限界があります。どんなに必死の思いでがんばっておられるか、皆が考えないといけないと思います。
現時点で、一人ひとりができる、医療現場の負担を減らす一番の方法は、感染者を増やさないことです。感染しない・させない努力が、医療現場で緊張の中で日夜戦い続ける方々を、そして、あなたの大切な人の命を守ります。
Q 新型コロナ以外の病気についても、状況が悪化している?
A 新型コロナウイルス感染症以外の疾病について、受診控えや検診等の先延ばしによって、病状の悪化や発見の遅れが、実際に起きています。例えば、がんの発見が遅れ、より進行した病期で診断されると、治療が困難になっていくといった結果を生み出す可能性が高くなります。
各国の研究でも、脳梗塞、心筋梗塞などの急性期疾患の受け入れや、各種のがん、慢性の肺疾患、虫垂炎等の患者数が減っていることが報告されています。これは「実際にこうした疾病に罹患している人が減っている」のではなく、「医療機関を受診して、診断される人が減っている」だけ、すなわち、「疾病を有しているにもかかわらず、必要な治療を受けていない人が増えている」ことを意味します。新型コロナ以外にも、人の生命を奪う、あるいは、日常生活を脅かす疾病はたくさんあります。ご自分とご家族の心身を守るためにも、感染対策を取りながら、必要な受診を行っていただきたいと思います。
Q 冬になると感染が拡大するのはなぜ?対応策は?
A 湿度が高い夏期と比較すると、乾燥する冬季は、
・放出されたウイルスに水分が付きにくく軽いため、空気中に漂う時間が長くなる
・ヒトののどや鼻も乾燥し、粘膜や繊毛がウイルスをせき止める(体外に押し出す)力が弱くなる。乾燥しているウイルスが、肺に到達しやすくなる。
これへの対応としては、
・こまめに水分補給をして、のどを乾燥から守る。
・室内であれば、換気(ウイルスを溜め込まない)に加えて、加湿する(上記の状態を改善する)
このように、きちんと理由を知っていただくと、納得の上で、状況の変化に応じて環境を改善し、それによって、防げることが出てくるのではないかと思います。
◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。