TNRを計画した矢先に通い猫が妊娠した 夫婦が相談「我が家で出産させよう」
個人で保護活動をしている嶋田さん宅に1匹の野良猫がごはんを食べに来るようになった。ある日、猫が妊娠していることに気づいた。出産前に保護しようと思ったが、嶋田さんは、他の猫を保護していたのでケージに空きがなかった。
■ごはんを食べに来ていた野良猫が妊娠していた
2019年2月24日、大阪府に住む嶋田さん宅に突然猫が現れた。後から分かったことだが、近所の人たちは少し前から猫を見かけたことがあるようだった。近隣住民は猫が苦手な人が多いのでごはんをもらえなかったのか、ごはんをあげると猫はむさぼるように食べた。まるで般若のような険しい顔つきだったので、可愛いというより、怖いと思ったそうだ。
この日を境に猫は毎日のように嶋田さんの帰りを玄関で待つようになった。毎日ごはんを与えていたが、3月中旬になると、なんとなく猫が太ってきたように見えた。嶋田さんは、「外にえさやりさんがいるのかもしれない」と思った。3月下旬にもなると、ますます太ってきた。
「さすがに私も、もしかしたら妊娠しているのかもしれないと思い始めました。ある程度人慣れしてからTNR(Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)しようとのんきに構えていたので焦りました」
大きなお腹を見て妊娠を確信し、夫と相談した。
「外で産んだら大変なので、ひとまず保護して、我が家で出産させようという話になりました。堕胎させようとはまったく思いませんでした」
ただ、その時、人なれしていない保護猫のためにケージを使っていたので、空くのを待っている状態だった。遅くとも3月末には猫を保護すると決め、捕獲器を設置する時期を見計らっていた。
■無事出産、子猫たちもすくすく育つ
ところが、4月3日、肝心の猫が来なくなった。
「どこかで出産してしまったのではないかと心配しましたが、その後また現れるようになったので、4月8日、意を決して捕獲器を設置しました。お腹が空いているのでごはんを食べたかったはずですが、警戒してなかなか入りませんでした。ドキドキしながらそばで見守っていたのですが、なんとか捕獲機に入ったので、急いで捕獲器の扉を閉めました」
前髪と後ろ髪をパッツンとカットしたような模様だったので、「パッツン」と名付けた。
最初、パッツンちゃんは混乱してご飯を食べなくなった。心配したが、4月14日、5匹の子供を出産したという。無事に子猫が育つか心配したが、パッツンちゃんは子煩悩でとてもいいお母さんだった。かいがいしく、ごはんとトイレの世話をして、子猫たちはみんなすくすく育ち、良い里親のもとへ巣立って行った。
■TNRは大事、でも、宿った命も大事にしたい
自宅でパッツンちゃんに出産させて、嶋田さんはTNRがいかに大切なことなのかを学んだという。同時に、授かった命はできる限り堕胎せず産ませたいという気持ちも併せ持っている。
「パッツンはとても賢い子で、我が家に来て1年半にもなるのに人慣れせず、まだほとんど触ることができません。それでもいつかは里親さんを募集したいと思っています」
パッツンちゃんの子供の里親さんと今でも交流があるという嶋田さん。猫つながりでいろいろ協力してもらっていて、とても有難く思っているという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)