譲渡前に不妊手術をしなかったばかりに不幸な子猫が産まれてしまう…悪循環を繰り返さないためには
動物病院には、「まさかそんなことが!」という困った患者さんからの相談がよく持ち込まれます。そのひとつが保護猫の里親になった人からの望まない妊娠、出産にまつわることです。大阪府で不妊手術専門のクリニックを運営する橋本恵莉子獣医師に話を聞きました。
■動物病院あるある困った相談
実際に動物病院に相談が来た「こわ~い話」をご紹介します。
【困った飼い主さん1】
「オスとメス、2匹の子猫の保護猫をもらったんだけど、いつの間にか妊娠していて、子猫が産まれました!まだ子猫だと思っていたのですが、妊娠するんですね」と駆け込んだ人。
【困った飼い主さん2】
「先住猫に子どもを産ませたくて、オス猫をもらったんですが、猫ってこんなにたくさん子猫を産むとは知らず…」
【ボランティアさんの嘆き】
「里親さんに何度言っても、『子猫を産ませたい』の一点張りで、不妊手術をしてくれないんです!」
■望まない妊娠と出産
これらは特別な話ではなく、よくある話です。ボランティアさんが、不幸な命を助けたくて保護して譲渡したわけですが、譲渡先で臨まない妊娠をした、猫の出産の知識不足でたくさん子猫が産まれてしまった、どうしても子猫の顔を見たいという身勝手な里親さんなど、猫の妊娠、出産にまつわる困った話に獣医師は直面します。
望まない妊娠、あるいは想定外の出産で産まれた子猫たちは、捨てられることも少なくありません。これではせっかく猫を保護しても、元も子もありません。
■譲渡前に不妊手術をしてほしい
橋本恵莉子獣医師は、「こうしたことを予防するには、譲渡前に必ず不妊手術を行うことをお勧めします。もしそれが無理でも、譲渡後に必ず、不妊手術が完了したか確認しましょう」と言います。
保護猫を譲渡してもらう人は、不妊手術が済んでいるかどうか確認し、まだ済んでいない場合は、速やかに手術を受けさせましょう。あえて出産させる場合は、自分で飼う覚悟があるかどうか、譲渡先があるのかどうか十分考えてみてください。
◆橋本恵莉子(はしもと・えりこ)Happy Tabby Clinic院長。大阪府立大学農学部獣医学科卒業。大阪ねこの会の一斉不妊手術に参加。保護猫シェルターにて感染症対策セミナー講演、松原市役所にて市民向け地域猫セミナー講演するなど精力的に活動。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)