「子供食堂」知ることで解けた誤解…暴言を吐いていた先輩がボランティアに
私をはじめ多くのシングルマザーは、経済的な悩みを抱えています。1人で働きながら育児、家事をすることはとても大変です。日本では「ひとり親世帯の貧困」「貧困の連鎖」が社会問題となっているなか、新型コロナウイルスの感染拡大により、シングルマザーやその子どもを取り巻く環境はより厳しくなっています。
そんな中で注目を集めているのが、無料もしくは安価で、栄養のある食事や温かな団らんを子供たちに提供する「子供食堂」の取り組みです。
2018(平成30)年3月に農林水産省より報告された「子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集」では「第3次食育推進基本計画」の食育推進会議で決定された重点課題として、ひとり親世帯が増えていることや家庭生活の状況が多様化するなかで、「家庭や個人の努力のみでは健全な食生活の実践につなげていくことが困難」であることが挙げられました。貧困の状況にある子どもに対する支援が重要な課題であり、子どもや高齢者を含むすべての人が地域などでつながりを持つことが求められているのです。
◇ ◇
ひとり親として経済的に苦しいうえにコロナ禍にあるいま、子供食堂の支援がとてもありがたいと職場で話しているときでした。
衝撃的なことを先輩に言われてしまったのです。
「子供食堂?あー、貧乏な人が集まる場所でしょ」
昼休みに休憩室で昼食を食べているときに、子供食堂に行ったと話していたら、4歳の子どもがいる先輩がこの言葉を放ったのです。その場には私を含めて6人のスタッフがいたのですが、一瞬にしてその場の雰囲気は凍り付いてしまいました。
しかし先輩はさらに持論をぶつけてきたのです。
「誰かのいらないものや、賞味期限ぎりぎりで捨てるのがもったいないものの寄せ集め」「捨てるくらいなら、食べさせてあげればいいって考えの活動でしょ」
この言葉に私はショックを受けたと同時に怒りが込み上げてきたのですが、同じ土俵に立ってはいけないと自分に言い聞かせました。
■先輩を子供食堂に誘ってみた!
普段の先輩は面倒見のいい人で、悪い人ではありません。旦那様は大手企業に勤めており、経済的な悩みはないと以前話していました。
きっと先輩は子供食堂がどういうところか知らないんだろうと思い、断られるのを覚悟で誘ってみました。
その翌日、先輩からは「子どもだけ連れて行ってほしい」との返事がありました。
私は先輩にも来てほしかったのですが、あいにく先輩は予定があり、4歳のお子さんを連れて娘と一緒に行きました。
子供食堂では、先輩のお子さんと娘は年齢が近いこともあり意気投合。
その日、子供食堂で頂いたメニューはハンバーグでした。
2人ともとってもおいそうに食べて「ごちそうさまでした!」とお皿を下げていました。
この様子を動画で撮っていたので先輩にも楽しそうな様子を知ってほしくて、携帯に送りました。
その後、お子さんを待ち合わせの場所まで送っていくと、涙目の先輩がいたのです。
先輩のお子さんは「ママ!次は一緒に行こうね!楽しい!ハンバーグおいしかったよ!」と満面の笑みで話していました。
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その2週間後、また先輩にお子さんを連れて行ってほしいと言われました。迎えに行くと先輩はおらず、旦那様が「よろしくお願いします」と笑顔で送り出してくれました。
「今日も先輩いないのか…」
正直、そんな思いも少しありました。しかし、子供食堂に到着して中に入ると、衝撃的な光景を目にしたんです!
そこには割烹着を来てカレーライスを作っている先輩の姿が!
私は思わず「どうしたんですか!でも…ありがとうございます!」と言うと、先輩は「娘を連れてきてくれてありがとう」と返してくれたんです。
先輩はお子さんの話を聞いたり、普段おうちではお皿を下げないお子さんがお皿を下げているのを見て子供食堂の活動の意味を考えたとのことでした。
食の支援はもちろん、人とのつながりの大切さを子供食堂を通して知ったと話していました。そして、自分にできることは「ボランティア」として参加することだと思ったそうです。
知らないことから誤解を生んでしまうことは多々あります。こうした支援が広く周知されることで、みんなが暮らしやすい社会になるのだと感じました。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)