毎日23時になると外で勉強をし始める小学生の兄弟…これって虐待? 虐待通報までの葛藤とその後の関係
近所から子どもが号泣している声や、お母さんやお父さんが怒っている声を聞くと「ドキッ!」とすることはないでしょうか。虐待と教育の線引きは、一緒に生活をしていたりその場を見ていないとわからないことが多いと思います。
厚生労働省が発表した2018(平成30)年度の児童相談所での児童虐待対応件数は、15万9850件と年々増加しています。また、児童相談所での虐待相談の経路別件数をみると、近隣からの通告が全体の13%と警察署の50%の次に多いと発表されました。
虐待が疑われても、なかなか通報しにくいのが現状ではないでしょうか。しかし、私の友人はお向かいに住む子どもを守るために児童相談所に通報をしたのです。
■お向かいの子どもがまだ外に
私の友人には、小学校4年生と1年生の子どもがいます。その友人の自宅のお向かいには、シングルマザーと小学生の子ども2人が住んでいました。子ども2人とも同級生ですが、ママとは挨拶程度の仲で、あまり付き合いはなかったそうです。
季節は夏。夜になっても寝苦しく暑い日が続いていました。22時頃、友人が戸締りをしていると外から子どもの声が。気になって外を見てみると、お向かいの2人の子どもが玄関の外にいました。玄関前にはランタンと大きなダンボールが2つ置いてあり、そこで子どもたちは何かを読んでいるのです。
友人は気になって家の中からじっと見ていたそうですが、子どもたちはお菓子を食べながら楽しそうにしていました。
次の日も学校があるのに何をしているのかなと思ったそうですが、子どもたちの様子から声をかけることなく寝たそうです。
その日を境に、毎日21~22時の間になるとダンボールとランタンを持って外に出てくるようになりました。そんなことが2週間以上続いたある日、ふと夜中の1時に目が覚めトイレに行くと子どもの話し声が聞こえたそう。外を見るとお向かいの子どもがまだ外にいたのです。
さすがにびっくりした友人は、外に出て子どもたちに声をかけました。子どもたちは「ママが邪魔っていうから。宿題しないから外でしなさいって」と話したそうです。
■虐待と教育の線引き
友人はすぐにお向かいの家のインターホンを鳴らし、ママと話をしたそうです。
そのママは「今日たまたまこんなに遅くなっただけだから。うちの教育方針です」と言って何もなかったかのように子どもたちを家にいれました。
しかし、その翌日も同じことが続きました。
・毎日夜になると外に出される
・玄関の鍵がかかっているため、子どもは自由に家に入れない
・子どもは泣いていない
…友人は虐待にあたるのではないかと思ったそうですが、子どもたちはとくに悲しそうにしていないため、なかなか児童相談所に相談ができなかったようです。
そんな日が1カ月以上続いたある日、ついに子どもが家に入れてほしいと大号泣していたそうです。子どもたちは力いっぱい玄関ドアを叩きながら「入れてよ、ごめんなさい」と泣き叫んでいたようです。
その姿を見た友人は「虐待だ!毎日こんなことするのはおかしい」と思い、ふと気付いたら児童相談所に電話をしていたそうです。
■通報後の友人とママの関係性
児童相談所に通報をした翌日から、お向かいの子どもたちは学校を休むようになり、姿を見ることもなくなりました。自分が通報したせいでママと子どもが引き離されたと感じた友人は、通報したのが本当によかったのか悩んでいました。
通報から約1カ月半が経ち、子どもたちは自宅に戻ってきました。そのときママに「通報したのはあなたでしょ。絶対にあなたでしょ」と言われたそうです。
友人はなんと言っていいのかわからず黙っていたら、「ありがとう。子どもと離れてみて、やっと自分がどんなにひどいことをしていたのかわかった」と言われたそうです。
その後、子どもたちは元気に学校に通い始め、ママと一緒に車でお出かけをしたり旅行にいったりママとの生活を楽しんでいるそうです。
虐待と教育・しつけの線引きはとても難しいです。虐待かも?と疑われるようなことがあれば、子どもを守るために児童相談所や福祉事務所に相談することが地域全体での子育てに繋がるのかもしれません。
虐待かもと思ったら児童相談所虐待対応ダイヤル「189」(いちはやく)で相談をしましょう。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)