ガリガリにやせていた子猫は甘えん坊 お転婆な振る舞いに「自由に生きることの大切さを教わった」
まだ生後2、3カ月のようだったが、ガリガリにやせた子猫が民家の窓辺に現れた。お腹がすいているようでごはんを食べたが、なかなか触ることができず、保護できなかった。なんとか保護した後、里親の田崎さんのところに行ったきういちゃん。田崎さんの生き方にも強く影響している。
■ガリガリにやせ、お腹をすかせた子猫
2018年8月、東京都内の民家に1匹の猫が現れた。窓の前にたたずむ猫は、生後2、3カ月くらいで、ガリガリにやせ細っていた。子猫とはいうものの、野良猫なので警戒心が強く、近づくことができなかった。
しかし、民家の住人は、酷暑の中、生きていくのは大変、周辺にはカラスも多いので、保護はできなくても、せめてごはんを食べさせて大きくしてあげたいと思った。
毎日ごはんをあげたが、ごはんを置いてから隠れないと食べてくれなかった。朝と夕方に来るようになり、家の庭にある椅子で待ってくれるようになった。しかし、近寄ると逃げてしまった。
1カ月ほど経った頃、初めて猫に触ることができ、キャリーケースにごはんを入れたら自ら入って来た。住人は猫を保護して、チビちゃんと名付け、里親を探した。キーキーとよく鳴く猫だったので、チビちゃんだが、キー坊と呼ぶこともあった。
■甘えん坊の猫
東京都に住む田崎さんは、幼い頃から、いつも家に猫がいる家庭で育った。上京してからは、自然に猫を飼いたいと思っていて、縁があればという思いでペット可能な物件に住み続けていた。知り合いからチビちゃんの話を聞き、里親になることにしたという。
保護されてから5、6カ月経った頃、11月7日に保護主さんがチビちゃんを連れて来てくれた。玄関の前に来る前からにゃーにゃー鳴いていて、玄関越しにやってきたのがわかるほどだった。
「とても綺麗な顔立ちの美人さんでした。一晩中鳴き続けていたので寂しがりやなんだろうなって思ったことを覚えています」
名前は、キー坊の「キ」を一文字取り、背中の模様が果物のキウイのようだったので、「きういちゃん」にした。
きういちゃんは、警戒心からかずっと落ち着かない様子で、一晩中ずっと脚をふみふみしていた。少し慣れたらすぐに近くで寝てくれるようになったので、本当は甘えん坊だったんだなって感じたそうだ。
■猫が変えたライフスタイル
性格は一言で言うとまさに内弁慶。知っている人の前ではよく喋り、よく遊び、よく寝る天真爛漫さを見せつけてくれるお転婆さんだが、家のチャイムが鳴ったり、家の前の玄関から知らない人の足音がしたりするとカーテンの裏に逃げ込む。お客さんが来ようものなら、借りて来た猫もびっくりの置物と化す。
得意技は手で水をのむこと。田崎さんは、セレブスタイルと呼んでいる。水を飲むとなぜか尻尾がつねに小刻みに動く。
きういちゃんを迎え、仕事が終わった後、家に帰ることが楽しみになった田崎さん。自分を取り巻く環境の変化に悩んでいる時も、一生懸命おもちゃで遊ぶきういちゃんの姿を見ると、思ったようにやればいいんだなと吹っ切れることが多くなったそうだ。
「自由奔放に振舞うきういと必要以上に周りの様子を伺ってしまう自分とは対照的。猫に自由に生きること、思ったようにやることの大切さを教えてもらったと思います」
きういちゃんを迎えて、田崎さんはおおらかに生きられるようになった。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)