宇宙最強を殴り踏みつけた唯一の日本人俳優・丞威、単身中国武者修行『燃えよデブゴン』
26歳の日本人が初の快挙!?単身中国に乗り込んで、あろうことか宇宙最強の男ドニー・イェンを殴りつけ、さらに踏みつけもしたのだ。…もちろん映画の中でのオハナシだ。それにしても期待のアクション俳優・丞威(ジョーイ)の行動力と身体能力には目を見張るものがある。
ドニーといえば、『イップ・マン』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』『ムーラン』で知られる世界的アクションスター。丞威にとっても、まさに念願の顔合わせだ。「ドニーさんとの共演は夢でもありましたから感無量です。いざ対峙した時の構えとか、ちょっとした動作に“宇宙最強の男”というものを感じました。オーラというか圧のようなものがある一方で優しくて品もある。さすがはスター」。イメージ通りの最強のジェントルマンだった。
そんな憧れの人ドニーとの初共演作『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』は、来年1月1日から公開。1987年公開の『燃えよデブゴン』にオマージュを捧げた本格アクションコメディで、ぽっちゃり刑事フクロン(ドニー)が東京を舞台に巨大な陰謀に挑む。丞威はその宿敵である日本のヤクザ・島倉を演じている。“ヅラデカ”遠藤に扮する竹中直人のコミカルすぎる演技もさることながら、見どころは場所を選ばぬ丞威vsドニーのハードな肉弾バトルだ。
「ワンシーン、僕がドニーさんの顔にパンチを一発お見舞いするシーンがあります。…残念ながらスローで殴って編集で早送りして見せる場面だったのでソフトタッチでしたけれど。でも『憧れのドニーさんをパンチしたぞっ!』という素晴らしい思い出はできました。しかもドニーさんを踏んづけてもいるわけですから、それをやった日本人俳優は唯一僕くらいです」と拳を交えた喜びでいっぱいだ。
しかし肉弾戦は危険との隣合わせでもあった。「日本の場合は撮影前に練習する日数があることが多いけれど、この現場ではアクションの殺陣などは撮影当日に決まることが多かった。しかもドニーさんは常によりよいアクションを求めるので、直前まで何をどう撮るのかさえわからなかった」とフレキシブルさを求められた。
アクシデントもあった。バトルシーンでスタントマンの鋭いパンチが丞威のアゴにクリーンヒット。6針も縫う大怪我に。「撮影スケジュールがタイトになったときにスタントマンの方と意思の疎通が上手くとれておらず、殺陣とは違う手がきた。顎を思い切り殴られて血がダラダラで」と流血騒ぎ。
そのまま緊急病院に駆け込むも「“緊急”のはずなのに『先生は今家にいて不在です』と言われました。しかも僕は役衣装のままで病院に行ったので、首にタトゥ-は入っているし、傷だらけメイクだし、顎は実際に切れているし。病院の方々には喧嘩したジャパニーズ・ヤクザだと思われたはず」と苦笑い。
二軒目の病院で手当てをしてもらい事なきを得たが、今では勲章のような思い出だ。なぜならば丞威に戸惑いはなかったからだ。「それなりの覚悟と準備をしての単身中国撮影。僕は予定調和にならない現場が結構好き。日本の場合は時間と効率を重視しながら撮影するスタイルが多いけれど、今回の現場は『よりよい作品を作りたい』という熱量が凄かった。その分、時間もお金もかかります。いい意味で上下関係がなく、下っ端のスタッフがあたかも自分がトップであるかのように思い切って意見を言う。そういう現場は活気があって楽しい」。まさに所変われば品変わるだ。
この貴重な経験を経て、丞威は事務所を独立してフリーランスになった。クラウドファンディングで集めた資金をもとに、世界を股にかける国際的スターを目指す。「ドニーさんとの共演で得たもの、それは大物を目の前にしても自分を主張することの大事さです。宇宙一のドニーさんと対峙するのはこれまでの人生で一番のミッションだったし、それに対応できるか否かという自分に対するテストでもあった。若いうちに貴重な経験ができたのは、今後の財産になるはずです」。そのテストの結果は?最高得点に違いない。
(まいどなニュース特約・石井 隼人)