「3人目を妊娠したの」夫に伝えると信じられない一言が返ってきて…言葉によるDVも我慢の限界
DVというと身体的な暴力をイメージする方も多いでしょうが、他にもいろんな種類があるのをご存知でしょうか? 例えば、精神的DV…大声で怒鳴ったり、脅すなどの言葉によるDVも存在します。その他には、性行為を強要する性的DVや、生活費を渡さないといった経済的DVなども…。私の友人は精神的DVの被害にあったのではないかと疑っているようです。
■月日を重ねるごとにエスカレートする夫の暴言
友人のAちゃんは結婚を機に東京に引っ越してきました。縁もゆかりもない土地で友達もおらず、頼れるのは夫と義実家だけでした。最初は不安を抱いていたAちゃんも引っ越してから、ほどなく子どもに恵まれ、近所にママ友もでき、充実した日々を送っていました。
ただ一つだけ。Aちゃんには悩みがありました。それは、夫がなにかにつけて小言や文句を言ってくることでした。最初のころは我慢していたものの、月日を重ねるごとに夫の言葉はエスカレートしていき、Aちゃんは精神的に追い詰められていきました。
◇ ◇
ある日のこと。Aちゃんは実家から新鮮な野菜と新米が大量に届いたから、とママ友の一人からたくさんのお裾分けをもらいました。さっそくその日の夕飯に使うことに決め、鮮度を活かしたシンプルな副菜を数品と具だくさんの豚汁を作りました。子どもたちは、もともと野菜が好きなこともあり、喜んでいつも以上にご飯をたべてくれたそうです。
その後、帰宅した夫にも同じ夕食を出すと、「え、これなに?俺がこれ食うの?子どもにこんなの食べさせたの?」と言われたのです。Aちゃんは咄嗟になにも言えず、改めて夫のために夕食を作り直しました。そのときは、たしかに主菜らしいものがなくて物足りなく感じたかも、と「ちょっと悪いことをしたかな」とAちゃんは思ったそうです。
それからしばらく経った冬のこと。ヒーターが壊れてしまい、夫から日中に新しいヒーターを買ってくるように頼まれたAちゃんは、子どもたちを連れて出かけました。ちょうど予算内に収まるコストパフォーマンスもいい商品を見つけ、Aちゃんは「これにしよう!」と決めました。ただ一点残念だったのは、ヒーターの色が部屋の雰囲気に合わなかったことです。人気商品のようで、他の色は完売。それでも、そのときはすぐに手に入ること、コストパフォーマンスがいいことが重要だったので、そのヒーターを購入して帰宅しました。
すると夫は帰ってきて、新しいヒーターを見るや否や「これ買ったの?他の色なかったの?ほんとお前はセンス悪いよな~」と、その商品に決めた理由など聞こうともせずに言ったのです。
Aちゃんにすれば、冬には欠かせないものだから、すぐに新しい物を用意しなくてはと思ってのことでした。それからも事あるごとに嫌味や小言、文句を言われ続け、Aちゃんはだんだんと落ち込むことが多くなり鬱のような状態になりかけていきました。
■妊娠中に訪れた我慢の限界
Aちゃんに我慢の限界が訪れたのは、3人目を妊娠したときのことです。Aちゃんにとっては5回目の妊娠でした。初めて妊娠したときは、事情があり親族からの許しが得られず出産することができませんでした。その後、2人の子どもに恵まれましたが、4回目は流産。Aちゃんにとっては、待望の3人目の妊娠だったのです。
そのとき、子どもたちは4歳と2歳。妊娠したことを夫に伝えると信じられない一言が返ってきました。
「は?なに言ってるの?やっと子どもが大きくなって出かけるようになってきたのに、またどこにもいけなくなるのかよ」と冷たく言われたのです。
…妊娠のタイミングは各家庭によってあるでしょうが、Aちゃんが妊娠したのはもちろん妊娠するような行為をしたからこそであり、避妊をしなかった夫も妊娠の可能性は想像できたはずです。それなのにこのような発言をした夫には、女性の私からすれば怒りしか感じられませんでした。
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Aちゃんからこの話を聞いたとき、「私だったらもっと早くに離婚したいと思ったかも。よくここまで我慢したな」と思いました。しかしそれが精神的DVの恐ろしいところ。言葉による日常的DVを受けている人は、次第に感覚が麻痺していき、自分がDVを受けているということに気づくのがむずかしくなります。
Aちゃんはまさにそのタイプで、最初の頃は夫に怒りを感じるどころか、「私が悪いのかな?」と自分を責めていました。
ちなみに、この出来事がきっかけとなり、Aちゃんは離婚を決意。いまでは子どもたちも大きくなり、Aちゃんもすっかり自分らしさを取り戻して、生き生きとした毎日を過ごしています。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)