餅による窒息、正月三が日に集中…2年間に死者661人 消費者庁「小さく切って、喉を潤し、ゆっくりよく噛んで」
消費者庁は23日、公式ツイッターを更新。毎年、お正月に急増する餅による窒息事故に注意を呼び掛けました。
「【年末年始、餅による窒息事故にご注意ください!】餅の窒息事故は1月に集中しています!加齢に伴い、かむ力や飲み込む力が衰えてきます。食べやすい大きさに小さく切って、汁物で喉を潤して、少量ずつゆっくりよくかんで、だ液と混ぜ合わせて食べましょう」
消費者庁が独自に行った分析によると、平成30年から令和元年までの2年間に餅の窒息事故による65歳以上の死亡者数は661人。発生月は1月に集中し、特に餅を食べる機会の増える正月三が日の事故発生件数は127件(うち元日は67件)でした。
お正月恒例の特別メニューも関係しているようです。「お正月に食べる雑煮等の餅は、久しぶりに食べる場合が多く、食べ慣れていないので注意が必要です」(同庁)。
■喉に5cm大の餅が詰まり…
医療機関から同庁に寄せられた事例を引用します。
<事例1>自宅にて、餅を食べているところを確認していたが、その後、冷たくなっているところを家族が発見し、救急要請。救急隊員到着時、心肺停止状態。口腔内の餅を除去した状態で、病院へ搬送されたが、死亡が確認された。(40代男性、死亡)
<事例2>食事中に喉に餅(5cm大)が詰まって、突然うなり声をあげて倒れ、反応が無くなったため、救急要請。喉頭内異物による窒息。救急隊と医師により、異物除去を行った。病院に到着後、心肺蘇生を行ったが、死亡が確認された。(80代男性、死亡)
<事例3>自宅にて餅を喉に詰まらせ苦しんでいるのを家族が発見し、救急搬送。家族が背部叩打(こうだ)を行い、救急隊接触前に餅は取れた。苦しそうな呼吸や気管に明らかな異物の詰まり等が見られなかったため、帰宅となった。(80代女性、軽症)
■なぜ多い?餅による高齢者の窒息
同庁が発表した昭和大学・向井美恵名誉教授の解説によると、高齢になると口内や喉の機能等に変化が生じ、窒息のリスクが高くなるそうです。
<高齢者の口内や喉の機能等の変化>
・歯の機能が衰え、噛む力も弱くなる
・唾液の量が少なくなる
・飲み込む力が弱くなる
・咳などで押し返す力が弱くなる
また、餅の特性も頭に入れておく方がよさそうです。
「餅は、温度が下がるにしたがって硬さが増す性質があるので、お椀の中では柔らかそうに見える餅も、口の中に入れて喉を通るときには温度が下がり硬くなっています。さらに、餅は温度が下がるほどくっつきやすさも増すので、口の中の温度では、餅同士がくっつきやすくなり、また粘膜にも貼り付きやすくなるという性質があります」(向井美恵名誉教授解説から)
■餅を食べるときの注意点
(1)餅は、小さく切り、食べやすい大きさにしてください
(2)お茶や汁物などを飲み、喉を潤してから食べましょう(ただし、よく噛まないうちにお茶などで流し込むのは危険です)
(3)一口の量は無理なく食べられる量にしましょう
(4)ゆっくりとよく噛んでから飲み込むようにしましょう
(5)高齢者が餅を食べる際は、周りの方も食事の様子に注意を払い、見守りましょう
(消費者庁「年末年始、餅による窒息事故に御注意ください」から引用)
■窒息事故が起きたら…
もし目の前で窒息事故が起きたらどうすればいいのでしょうか。同庁では、「食べ物により、気道が塞がれていることが疑われたら、大きな声で助けを呼び、119番通報し、気道異物除去を開始してください。反応がなくなった場合は、ただちに心肺蘇生を開始してください」とし、日本医師会のホームページにある「気道異物除去の手順」を案内しています。
(まいどなニュース・金井 かおる)