中国では土地が買えない → 買えるのは「70年間の使用権」だけ 期限が切れたらどうなるのか中国人に聞いてみた
世界第2位の経済大国である中国。特に北京や上海などの都市部に行くと、「ここはお金が物を言うなぁ」と思ってしまうが、中国ではどんなにお金を積んでも買えないものがあるという。それは土地である。
■中国で土地が買えない理由
中国で土地が買えない理由。一言でいうと「土地は国家のもの」だからだ。どんなに金を積んでも個人が都市部の土地を所有することはできない。ただし、農村や郊外の土地は一部を除いて農民集団の所有となると定められている。
土地が国家のものというのなら、市民が家を買うときは建物代だけを払えば良い? ……というわけではない。家を買う際は、その土地を使用する権利を得るために使用料を払う必要があるのだ。
中国における不動産所有権とは、ザックリ言うと「建物の所有権」と「土地の使用権」に分けられる。2つの権利のうち「建物の所有権」には期間の定めがないが、「土地の使用権」は期限付き。住宅用の土地の場合、「70年間」と法律で定められている。いや、いくら建物の所有権に期限がないと言っても、家と土地は切り離せないでしょう……ということは70年経ったら、住人は強制的に家を追い出されるということなのだろうか?
高い金を出して買ったのに完全に自分のものにならないことに不安はないのだろうか? そこで2000年代に親に上海で戸建ての家を買ってもらったという30代の中国人女性に話を聞いてみた。
■70年経ったらどうするの? 住み続けられるの?
-土地使用権の期限が来たら、どうなるのですか? 家を出ていかないといけないのですか?
「土地使用権は更新できるはずです。でも中国で個人が家を買えるようになったのはここ20~30年のことだから、まだ70年の期限が切れた人がいないと思います」
-更新料はありますか? その額は決まっていますか?
「更新料はわからないですね。でもうちの期限が来るのはまだ先の話。住み続けたとしても、たぶん私はこの世にいないと思うので子孫に任せます」
-土地の使用期限があることに不安や不満はないのですか?
「中国では土地は国のものですから。仕方ないですね」
◇ ◇
話を聞かせてくれた中国人女性は土地を所有できないことを「そういうものだ」と受け入れているようだった。
1978年以前、改革前の中国では住居は国家から分配されるものだった。その後、分譲住宅の流通が段階的に始まり、1998年に全面化。全面化以前は土地の使用権を20年や30年という短い期間で定めた地域もあったものの、中国の近年の不動産ブームで家を買った人にとって70年はまだかなり先のことだ。
■新しい法律で「自動更新」と明記 / 更新料の減免にも言及
さて中国では2021年1月1日に施行される民事法を体系化した「民法典」で、土地の使用権について以下の条文が盛り込まれて注目されている。
「住宅建設用地の使用権が期間満了になった場合、これを自動更新とする。更新料の納付、また減免については法令や行政規定に準じて取り扱うものとする(359条)」
従来の法律にも住宅用の土地の使用権は「自動更新」と規定されていたが、新法ではさらに更新料や納付方法にも触れられた。民法典に記載されたことで、更新料についての議論が進むことが期待できるだろう。さらに有識者が、長期の使用期間に対し当初に十分な土地使用権料を払っていた場合は、将来的に更新料が少額、もしくは全額免除になる可能性を指摘したことで安心感が広がった。
さて日本では、数年前から中国人による「土地の爆買い」が注目されているが、中国人が海外で土地を取得する理由の1つは、やはり「中国では土地の所有権がないこと」だ。そのなかで外国人の土地の購入に特別な制限がない日本は狙い目だったと言える。だが、もし今後、中国における土地使用権の更新料が全額免除になり、実質的な所有に近づいたら……「資産保全のために外国の土地購入する」という意識にも影響が出るかもしれない。
(まいどなニュース特約・沢井 メグ)