コロナ禍「経済制限→自殺者増」との懸念を古賀茂明氏が批判…「苦しむ人を助けていない」「ピンポイントでお金を」

 1337人…。大みそかに発表された東京都の新型コロナウイルス新規感染者数に衝撃が走ったまま、年が明けた。首都圏で緊急事態宣言の再発令が検討されている中、元経産省官僚、元内閣審議官の古賀茂明氏が当サイトの取材に対し、新著「日本を壊した霞が関の弱い人たち ~新・官僚の責任」(集英社)を踏まえてコロナ対策に提言。さらに、コロナ禍とリンクする東京五輪・パラリンピック、年内の衆院総選挙に向けた野党の現状にも言及した。

 コロナ禍が世界に拡大し始めた昨年2月前後、同年夏の五輪開催をにらんだ、第2次安倍政権による水際対策の遅れが感染拡大の1つの要因となったと指摘されている。古賀氏も本書の中で「『五輪ファースト』で夢を追った」結果、露呈した問題点をつづった。また、「専門家会議」や「有識者会議」とは「政策が第三者の客観的な意見に基づいているように見せかける責任逃れ」の組織であり、政策と矛盾した議事録は非公開にしていると指摘。さらに10万円給付などで日本のデジタル後進性が露見したという。

 2021年を迎えたが、東京都では大みそかにこれまでの最多を一気に400人近く上回って初の4桁に突入すると、元日は783人、2日は522人、3日は816人と推移し、重症者数は緊急事態宣言解除後初めて100人を超えた。全国でも感染者は急増しており、さらなる増加が懸念されている。

 東京都、埼玉、千葉、神奈川の3県は2日に緊急事態宣言の発令を要請し、菅義偉首相は4日の年頭会見で、この1都3県を対象にした緊急事態宣言の検討に入ると表明。一方、経済的な制限措置には自殺者増などを懸念する意見もあり、医療崩壊が叫ばれる中、無症状者や軽い症状でPCR検査を受けることへの異論もある。

 この点について、古賀氏は「PCR検査をやると陽性者があふれて病院がパニックになるとか、経済の制限措置を取ると自殺者が増えるという声がある。だが、検査で陽性者をあぶりだし、軽症者用の施設を拡大して受け入れ、いま外を歩いている人は基本的に大丈夫な人たちだとなれば経済活動も活発化する。なぜ自殺者が増えるかというと、苦しんでいる人を助けないからです。ピンポイントで個別にお金が渡るようにする準備をしていけば、ロックダウンもできるんですよ」と指摘した。

 コロナ禍の終息のめどが立たない中、世論調査で「中止か再延期すべき」という意見が大勢を占めている五輪開催はどうなるか。

 古賀氏は「政府はオリンピックありきで進んでいますが、英国で感染力の強いウイルスが増えていて、これからも変異していろんなウイルスが出てくるでしょう。五輪となれば日本への入国規制を大幅に緩和することになるわけで、開幕から2-3週間後に感染が大爆発したら、どう責任を取るつもりなのかと。参加国が大幅に減って『五輪と称する国体』になるという話もあるけど、やっぱり、やっちゃいけないと思います」と、厳しい世界情勢や国民の賛同が得られない現状での政治的な強行開催を懸念した。

 年内には衆院総選挙が行われる。コロナ対策で政府への批判は高まっているが、それでも与党に取って代わる存在が思い浮かばない。古賀氏は野党に政権交代を実現するだけのリーダーが不在と指摘する。

 「リベラルの人たちも『粘り強く声を上げていきましょう』という、最後は抽象論、精神論しかない。枝野さんがどれだけできるのか、いろんな人と話しますが、みんな諦めている。でも代りがいない。それは自民党も同じですが。現れるのを待っていても出て来ない。新しいリーダーを育てていくしかない。山本太郎さんもゼロからあそこまでやったのはたいしたものですが、彼はプレイヤーで、パフォーマンスを見せる能力は非常に高いけれども、自分自身で構想していく力があるのか。ブレーンが学者だけでは難しく、政治家、官僚や元官僚、ビジネスマンといった人のサポートがないと厳しい。野党議員も早くそうしたサポートチームを作った方がいい」

 予断を許せない1年が始まった。

(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)

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