あたらしいお友だちは、前の歯が4本もなくて…身近なところで起きている子どもの「ネグレクト」
娘が通う保育園に少し気になる子がいました。4歳児クラスに入ってきたその女の子は、いままで一度も集団生活をしたことがなく、幼稚園や保育園にも通ったことがないと言っていましたが、どの家庭にもさまざまな事情があるので、そのことについて深く考える人は多くありませんでした。ですが、一部の保護者たちは疑問を抱いていたようです。
■もしかして…ネグレクト?
しばらく経った頃、子どもたちの間で、その子の上の前歯が4本ないことが話題になりました。保護者たちの中では、少し早いけど、歯が抜けたのかもしれないねという話で落ち着いたものの、子どもは悪気もなく頻繁にその話をするので、一部で噂になってしまいました。
保健師のママ友がその子の前歯を見かけたときがあり、「あの前歯は全部溶けたあとだよね」と言っていました。4歳の時点で歯が4本抜けているのは、仕上げ磨きがしっかりできてないからということになるそうです。また、定期検診では歯が溶けているような子がいた場合、ネグレクトが疑われるとのこと。さすがにその話を聞いたママ友たちも、歯が4本も溶けてしまっていることには驚いていました。
また、保護者同士の連絡手段であるLINEのアイコンやタイムラインの投稿なども、母親が1人で遊びに行っている様子や友達と映っている写真しかなく、子どもの状態だけでなく、そういった行動も周囲からネグレクトを疑われる理由の一つとなっています。
■後を絶たない悲しいニュース
近年ネグレクトや虐待のニュースが後を絶ちません。ネグレクトとは、育児放棄や育児怠慢を指します。具体的には、家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かないなどの行為となっています。よくメディアで取り上げられるのは、乳幼児を家に残したままたびたび外出をしたり、保護者の交際相手による虐待といったものが多いです。
厚生労働省の発表によると、2018年度中に対応した児童虐待相談件数が約16万件となっており、過去最多を更新しました。その中で、「ネグレクト」の割合は、約3万件の18.4%となっています。そのうち、通報の経路は半数以上が警察などとなっており、次いで近隣知人となっています。年齢別では、0歳児がもっとも多いです。
ネグレクトが子どもに与える影響は、栄養失調や脱水症につながり、体が適切に成長しないことがあります。愛情を与えないことが、好奇心や学習意欲の低下、愛着障がい、情緒が不安定になることなどがあります。また、必要な教育を受けさせないことで、言語発達の遅れや学力がつかないということもあります。
ネグレクトには4つの種類があります。
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▽身体的ネグレクト
親や養育者が生活の基礎となる衣食住を与えないこと、監護を行わないことです。
▽情緒的ネグレクト
親が子どもに対して愛情や関心ももたないことです。子どもを無視したり、拒絶したりすることをいいます。
▽医療ネグレクト
子どもの健康に関して治療、診療を受けなかったり、必要にもかかわらず、適切なケアがされず心身の障がいにつながることもあります。
▽教育的ネグレクト
子どもが学校にいくことを望んでいるにも関わらず、学校に入学させなかったり、出席させなかったり、在宅でも教育を行わないことをいいます。
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ネグレクトをはじめ、虐待は増加する一方で後を絶ちません。公的機関などが虐待を減らすためにさまざまな策を講じています。子どもたちを虐待やネグレクトから救うため、迅速に法律や環境を整えることが求められています。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)