カステラは実は和菓子だった? 「生」「朝生」「半生」「中生」分類はビールみたい…<おもしろ業界用語・和菓子編>

見た目が芸術作品のように繊細で、鑑賞する楽しみも兼ね備えた和菓子。その分類や用語を知れば、さらに見方が変わるかもしれない。元和菓子屋のEさんに聞いた。 

■「御菓子司」の「司」は「専門職」という意味

そもそも「和菓子」とは何ぞやというお話から。

「明治になって西洋から入ってきたさまざまなお菓子を『洋菓子』と呼んだのに対して、日本古来のお菓子を『和菓子』と呼ぶようになりました」

ちなみに遣唐使が持ち帰ってきたり、ポルトガルやオランダから伝わったりしたお菓子もあるが、長い年月を経て日本に定着していることから「和菓子」に分類されるという。たとえば、カステラは16世紀・室町時代末期に入ってきたと言われていることもあり、和菓子に分類されているという。

和菓子を扱うお店の看板や暖簾(のれん)に、よく「御菓子司」と書かれてあるのを見る。あの「司」には、何か意味があるのだろうか。

「まず読み方は『おかしつかさ』と読みます。一説には、朝廷や大名家に献上していた特別な店だけが名乗ることを許された名残だといわれているみたいですけど、そうではありません。たんに『専門職ですよ』という意味です」

つまり御菓子司は「菓子づくりの職人がいるお店」、もっと平たくいえば「お菓子専門店」みたいな意味をもつだけだそうだ。

「でも『司』がついているだけで、なんとなく格式高いイメージにはなりますね」

■「生」「朝生」「中生」「半生」……生菓子にもいろいろありまして

「和菓子の分類には大きく分けて『生菓子』と『干菓子』、その中間の『半生菓子』に分けられます」

その違いは、出来上がり直後の水分の含有量だという。30%以上が生菓子、4.5%以下が干菓子、その中間が半生菓子に分類される。

「生菓子には、さらに細かい分類があります」

和菓子と聞いて一般にイメージされるのは、団子や餅などのように表面がしっとりしているもの。これは「朝生(浅生)」といって、その日に売り切ってしまうことを前提につくられる。

これに対し「中生」は、日持ちのするお菓子のこと。「ういろう」や「かるかん」などの蒸し菓子、どら焼きやカステラなどの焼き菓子、あんドーナツなどの揚げ菓子がこれにあたる。カステラは洋菓子のイメージだが、冒頭にあるように日本に伝わって400年以上の歴史があるので、和菓子として扱われる。

そして「半生菓子」は、表面部分の水分が比較的少ないが、中は生でやわらかいもの。最中(もなか)、ようかん、甘納豆などがある。

 一方、生菓子ではないお菓子を「干菓子」といい、水分が少ないため保存がきく。よく見かけるものといえば、せんべい、あられ、おかき、金平糖、懐中しるこなど。

■職人さんが「今日はあんまり浮いてない」と落ち込んでいたら……

「生地を蒸したり焼いたりして膨らませることを『浮かす』といいます」

十分に膨らんだ状態を「浮いた」といい、生地の出来が良いことを意味する。逆に思い通りに膨らまなかったら「浮いてない」ということになって、最悪の場合はつくりなおしになる。

生地をうまく浮かせるのは、職人のワザなのだ。

このほか、外見に現れる現象でいうと「しゃる」という言葉がある。ようかんやあんこの表面で砂糖が結晶化する現象で、砂糖の入れ過ぎが原因だ。

 「砂糖といえば、関連する用語に『かけもの』という言葉があります」

干菓子に液糖を「かける」「混ぜ込む」、液糖で「煮込む」、砂糖に「漬ける」などの加工を施したお菓子のことだ。

代表的なものを挙げると、

かける……金平糖

混ぜ込む……おこし

漬ける……果実の砂糖漬け

煮込む……甘納豆

などがある。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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