専業主婦だけど離婚したい…それには、念入りな準備が必要! 焦って別れた2児の母を襲った3つの誤算

子育て中の共働き家庭が増えてきているといいますが、妊娠・出産を機に退職をして専業主婦になる人も少なくありません。厚生労働省が2018(平成30)年に発表した『仕事と育児の両立支援に係る総合的研究会報告書』によると、約4割の家庭が専業主婦家庭だそう。家族に尽くし、ゆとりがあるイメージの専業主婦。しかし、専業主婦は離婚をきっかけに簡単に窮地に立たされてしまいます。

私がそのことを実感したのは、最近離婚したママ友と話す機会があったからです。彼女は、年少と年長の息子さんがいる家庭の専業主婦でした。夫婦仲もうまくいっているように見えていたのですが、夫の不倫が発覚したことをきっかけに離婚に踏み切ったそうです。

「家庭を顧みず不倫をする夫とは別れて正解。これからは、2人の息子と自由に明るく生きていく」と語っていた彼女ですが、どうやら現実は甘くなかったそう。離婚後、彼女には数々の試練と後悔が待っていました。彼女と話して、専業主婦が離婚するためには、念入りな準備が必要だと再確認しました。経済的にも弱い立場になりやすい専業主婦は、「離婚しても暮していけない」「1人で子どもを育てるのはやはり不安」といった理由で、離婚という選択肢すら持てない場合が多いのではないでしょうか。彼女は離婚という選択に踏み切りましたが、準備不足による失敗から学んだことを話してくれたので紹介します。

■離婚における3つの誤算

彼女は、離婚してすぐ「思い描いていた計画とは違う」と焦ってしまったそう。彼女の離婚における誤算は3つです。

・両親が協力してくれると思い込んでいた

・正規雇用で働くことが当たり前だと思っていた

・夫がいない分、お金がかからないと思っていた

まず初めに襲ってきた試練は、両親から離婚を反対されたことでした。離婚をしたら実家に戻れるものだと信じて疑わなかった彼女は、「離婚することになったからそっちで暮らしたい」と両親に伝えたそうです。それを聞いた両親は大反対。「こっちにも生活があるから孫の面倒は見られない」「我慢が足りないのではないか」と取り合ってもらえませんでした。それどころか、「離婚をするなら絶縁する」と電話すらかけられなくなったそう。彼女は両親から絶縁されたことで、離婚後の住まいと子育てに重要なサポーターを失ってしまったのです。

また、離婚後の生活に向けて就職活動を始めた彼女。そこでも、壁にぶち当たることになります。「シングルマザーだからこそ、正規雇用でバリバリ働くのが当然と思っていた」と話す彼女ですが、正社員の求人に問い合わせをしても、面接までこぎつけること自体が難しかったのです。彼女は大学を出たあと就職をして、すぐに寿退社していました。専業主婦歴が長く、特別なスキルや資格もないため、人気の事務職に応募しても「もう少しパソコンができないと困る」と断られたそうです。子どもが2人いて離婚する予定だと伝えると、「熱や病気のときに両親に手伝ってもらえるのか」と聞かれ、難しいと答えると露骨に嫌な顔をされることもありました。

厚生労働省が2016(平成28)年度の発表した『全国ひとり親世帯等調査結果報告』によると、離婚前に不就労だったシングルマザーで正社員として働けているのは40.9%、パートやアルバイトとして就労している割合は49.4%です。このデータからも、資格や経験を持たないシングルマザーが正社員として働くことの難しさがわかります。

さらに、彼女の誤算は離婚後の生活をより厳しいものにします。離婚するにあたって、金銭的なシミュレーションを十分にしたと思っていましたが、離婚後の生活は思ったよりもお金がかかったそう。「夫の小遣いやムダ遣いがなくなるから、金銭的には余裕があると思っていたのにな」と、彼女は笑いながら話していました。質素な部屋に住み、得意の家事で節約生活を送ろうと思っていたのですが、節約には時間がかかります。介護職のフルタイムパートが決まった彼女は、子どもたちを保育園に転園させ、慣れない仕事に励んだそうです。安いスーパーを探す気力も、節約のために作り置きをする余裕も、子どもたちが遊ぶおもちゃを手作りする時間もありませんでした。「寂しい思いをさせてしまっているから」と、お菓子やおもちゃを買い与えてしまうことが増え、貯金をするどころか、家計は赤字の状態が続いたそうです。

■専業主婦が離婚したいときに必要な準備

私と話しているとき、彼女は何度も「準備が足りなかった」と言っていました。彼女が話してくれた、専業主婦が離婚したいときに必要な準備は3つです。

▽周りに協力してくれる人を増やしておく

彼女の場合は、離婚が決まってから両親に協力を頼むのではなく、離婚したいと思ったときに事前に説得しておく必要がありました。結婚も離婚も当人同士の自由とはいえ、いきなり「離婚するからよろしくね」では、両親が困惑するのも当然です。最近は、現役で働く親世代も増えているので、親には親の生活リズムがあることを理解することも大切ではないでしょうか。親の協力が得られなくても、地域のファミリーサポートや一時預かり、病児保育を利用することで、すべてを1人で抱えてしまうような状況は防げます。彼女も、「専業主婦だったからこそ、離婚後の仕事に慣れるまでが辛かった。保育園からの呼び出しや、自分の体調が悪いときは気持ち的にも追い詰められた」と話していました。

▽貯金をする

離婚をするためにはお金がかかります。取り決めで揉めれば弁護士費用がかかったり、なかなか仕事が決まらない場合に備えて当面の生活費も必要です。アパートや市営住宅に入るにも、ある程度の引っ越し費用や初期費用がかかります。「思った以上に出費があった」と、彼女も驚いていました。財産分与や慰謝料とは別に、金銭的に余裕をもって離婚することが、離婚後の精神的なゆとりにつながるのではないでしょうか。パートやアルバイトも職歴になります。期限を決めてパートで離婚資金を貯める方法が、遠回りなようで近道になります。

▽資格やスキルを身につける

「専業主婦からシングルマザーになった場合の就活は、かなり厳しいと覚悟しておいたほうがいいかも」と彼女が話すように、資格や職歴もなく、子どもがいるため残業や休日出勤が難しいシングルマザーを敬遠する企業は少なくありません。2015(平成27)年度の母子家庭の平均就労収入は200万円ですが、中央値は169万円とのこと。1カ月あたりに換算すると14万円ほどです。養育費が未払いになったり、子どもが食べ盛りになったとき、あっという間に貧困に陥ってしまいます。なるべくいい条件で雇用され、十分な収入を得るためにも、資格やスキルを身に付けてから仕事を探すことが重要です。

■慌てずに離婚に向かう

「離婚したい」「もうこの人とは無理」と思ってしまうと、早く別れようと焦ってしまいますよね。彼女も、不倫をした夫と同じ空間にいることに耐えられず、準備不足のまま離婚したことを後悔していました。別の友人は、離婚後に慌ててパソコン教室に通ったそうです。歯科助手の面接を受けたときに、「パソコンもできないんじゃ話にならない」と帰されてしまい、慌ててWordとExcelを勉強したと言っていました。離婚したあとはとにかく忙しく、しばらくは勉強どころではありません。専業主婦で時間の取りやすいうちに、念入りな準備をして、離婚後の計画を立てておきたいですね。

(まいどなニュース特約・長岡 杏果)

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