「猫と一緒に遊べるなんて!」コロナ禍の米国で出会ったシェルターの子猫、猫の概念を覆す
夫の米国駐在を機に仕事をやめてロスで暮らしていた冨永さん。以前から動物のシェルターでボランティアをしたいと思っていたが、コロナ禍に縁あって子猫のFoster Parentsになった。Foster Parentsとは、まだ里親に出すには早い、ケアが必要な犬猫を預かるボランティア。それまで猫とは暮らしたことがなく、猫は犬ほど気持ちを通い合わせることができないと思っていた…。
■Foster Parentsになると思い立ち
主婦の冨永さんは、夫の駐在先である米・ロサンゼルスに3年ほど住むことになり渡米。仕事を辞めたので時間ができた。
「ロスはペットフレンドリーな町と聞いていましたし、シェルターで、以前から興味のあった犬猫のボランティアをしようと思いました。シェルターにいる犬のトリミングをして、早く里親さんが決まるようお手伝いできればと思いました。渡米後、トリマーの学校で学び、活動できるシェルターを探していたのですが、新型コロナが流行り始め、ロスにも外出自粛要請が出たので、活動が困難になりました」
冨永さんは、ロス在住経験のある女性のブログに掲載されていた「LAに住んでいた時にやってよかったこと」の中で紹介されていたFoster Parentsのことを思い出した。
■シェルターから犬が消えた!?
冨永さんは「コロナ禍の今、できることはこれだ!」と思い立ち、7つのシェルターに連絡。本来であれば、希望者はシェルターで講習を受けてからFoster Parentsになるが、それもかなわない状況なので、シェルターから送られてきた幼い犬猫の飼育方法がまとめられたビデオを見て勉強したという。
「私は犬を預かりたかったのですが、友達に会えない子供たちが犬を飼いたいと親にお願いしたため、シェルターから犬が消えました。子猫であれば、3月~11月の繁殖期だったこともあり、Foster Parentsになれると言われたのです。もちろん子猫でもよかったので引き受けました。猫は飼ったことがなかったのですが、事前にいただいた勉強資料が役立ちました」
■コロナ禍、子猫との出会い
2020年5月24日の朝、シェルターから電話がかかってきて、「一昨日子猫が届けられた。昼頃には迎えに来てほしい」と言われた。冨永さんは、急いでダンボールで壁を作ったり、子猫が自由に動けるスペースを作成したりした。
シェルターは市が運営していて、獣医師も常駐しているところだった。コロナで対面接触を避けるため、夫婦でシェルターに行くと、子猫を入れた箱やタオル、キャットフードなど必要なものが入ったスーパーのカートが置かれていて、車までスタッフが運んでくれた。引き渡しには5分もかからなかった。車の中でダンボールを開けると、手のひらサイズの子猫が大きな目で見つめてきて可愛かったという。
■みそをうちの子に
冨永さん夫妻は3年経ったら帰国する予定だったので、猫を飼おうとは思わなかった。米国人の里親が飼うことになると思い、米国人がよく知っている日本語「味噌」にちなんで、みそちゃんと名付けた。
ところが、冨永さんは、みそちゃんの行動や表情に魅了され、癒されていることにも気がついた。
「Stay homeの時だけ動物を飼って、後に手放す人が出るかもしれないと噂されていましたし、どんな家に行くのか分からないのであれば、最期まで私たちが幸せにしようと思いました」
シェルターに、「みそちゃんを引き取りたい」と伝えると、既に1カ月以上一緒に暮らし、マッチングも済んでいるので、引き取りは優先的にできると言われた。
■猫と一緒に遊べるなんて
冨永さんは、猫とはあまりコミュニケーションを取れないと思っていたが、洗濯物を畳んでいた時に靴下を投げて、「それちょうだい」と言うと、みそちゃんは取ってきた。
「ボール投げのように遊べた時は驚きました。猫といったら、壁を引っ掻くなど困った行動をする、いつも寝ているという印象が強かったのですが、一緒に遊べるとは!」
みそちゃんは、いつもご機嫌さん。尻尾を立てて歩いていると、「ルンルン」と歌いだしそうだ。
冨永さんの夫は、初めて飼った動物のみそちゃんが懐いてくれて、とても嬉しいようだ。長生きしてほしいと念入りにケアして溺愛している。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)