阪神・淡路大震災から26年…被災地で心のケアに奔走した精神科医 感動呼んだドラマが映画に
今年も1月17日が巡って来る。
26年前、阪神・淡路大震災に襲われた神戸の街で、被災者の心のケアに奔走した精神科医の安克昌さん。2000年12月に39歳という若さで亡くなった安さんをモデルにしたNHKのドラマ「心の傷を癒すということ」が劇場版として再編集され、1月29日の東京などを皮切りに全国の映画館で順次、公開される。
ドラマは2020年1月~2月にかけて全4話を放映。被災者の傷ついた心に寄り添い続けた安さんの生き方と、それを懸命に支えた家族との絆、そして主人公を演じた柄本佑さんの静謐でありながら人間の凄みを感じさせる演技が大きな感動を呼んだ。放送文化基金賞のテレビドラマ部門で最優秀賞、ギャラクシー賞の月間賞などにも選ばれている。
安さんは1960年、在日韓国人3世として大阪市で生まれた。神戸大学附属病院精神科勤務を経て、神戸市立西市民病院の精神神経科医長。1995年の阪神・淡路当時は、避難所などでカウンセリングや診療活動を行い、心のケアの実践に道筋をつけた。臨床報告としてまとめた書籍「心の傷を癒すということ~神戸…365日~」でサントリー学芸賞を受賞。日本におけるPTSD(心的外傷後ストレス障害)研究の先駆者として重要な役割を果たしたことで知られる。
劇場版は4話分(1話49分)を116分に再編集。公開に先立ち、1月15日にはロケが行われた神戸の映画館OSシネマズミント神戸で完成披露試写会があった。会場ではドラマ版の総合演出を務めた安達もじりさん、企画した京田光広さんによるトークショーも開催。柄本さん、妻を演じた尾野真千子さんからのビデオメッセージも披露された。
ドラマ化に当たり、安達さんは安さんの家族や知人に取材。「神戸の人たちは涙が出るくらい“きれいな気持ち”で応援、協力してくれた」と感謝し、「自分ひとりの力ではできなかった。何か大きな力に導かれて作ったような作品。見た人に、安先生の“思い”のバトンを託したい」と話した。
一方、阪神・淡路をはじめ、災害をテーマに数々の番組を手掛けてきた京田さん。「エキストラなどで参加した人たちが『あの時は何もできなかったけど、震災を“伝える”ことにこういう形で関われてよかった』と言ってくださったのが、作り手としても嬉しかった」と振り返った。
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東京など関東では1月29日、神戸を含む関西では2月12日から公開予定。
(まいどなニュース・黒川 裕生)