マスクが着用できないAさんのケース…入店拒否も「目に見えない障害」への配慮と理解の必要性
新型コロナウイルス感染拡大が止まらない状況が続いています。感染予防のためマスクの着用が求められていますが、もしあなたや大切な人がマスクをつけることができないとしたら…。マスクができない人への配慮について考えさせられる出来事が起こっていることを、愛知県在住のMさん(40代・施設職員)の話から知ることができました。
■マスクをつけることができない「感覚過敏」
Mさんは障害のある人に対して相談支援を行っている精神保健福祉士です。Mさんが担当する利用者さんの一人に約7年間相談支援を行なっている発達障害のあるAさんがいます。
Aさんは発達障害の障害特性の一つとされる「触覚・嗅覚等の感覚過敏」により、マスクを着用することができません。そのため新型コロナウイルスの感染が拡大した当初より、マスクの代わりにフェイスシールドを着用していました。
マスクを着用する人が大半の中、フェイスシールドを着用して外出しているAさんは、いつも人の目が気になっていました。その理由はこれまで何度も見知らぬ人に笑われたり「マスクすればいいのに」と言われたからです。皆と同じことができないことや心無い言葉に悩みながらも毎日を送っていました。
■マスクをしていないことで入店拒否
Mさんがその日の職場で相談業務を終え書類を作成していると、Aさんが嗚咽しながら話を聞いてほしいと駆け込んできたそうです。
Aさんに話を聞くと洋服を買いにある量販店に行った際、マスクを着用してないことを理由に入店を拒否されたとのことでした。
もちろんフェイスシールドは着用していました。Aさんは自分が発達障害・感覚過敏であることを店員さんに伝えたそうですが、店側のルールとして入店を拒否されたとのことでした。
本当は障害のことを知らない人に話したくなかったのですが、お店に入店したいために正直に話をしたそうです。それでも入店を拒否されたことが悲しくて、どうしたらよいのかわからずパニックになったのです。
Mさんは話を聞き、Aさんの了承のもと入店を拒否した量販店へ電話で問い合わせをしました。事情を説明したところ前向きに検討するとの返事があり、その電話から30分後、入店できるという連絡をもらうことができました。
■マナー違反やわがままではない!合理的な配慮と理解の必要性
Aさんには身近に相談ができる支援者がいたため、悔しい思いを伝えることや解決策を一緒に考えることができました。しかし、このようなケースは他の店でもまた起こり得る可能性があります。
マスクを着用していない人すべてがマナー違反なわけではありません。「マスクが着用できない」ことを周囲の人に知ってもらうためにステッカーやバッジを作成している団体も多く見られます。
障害のある人全員が、障害をオープンにしたいわけではありません。配慮や理解を得るためにステッカーを用いたり、自分で伝えているのです。
人は大変な状況に陥ると心にゆとりがなくなり、広い視野を持つことが難しくなりがちです。しかし、これまで経験したことがない状況に直面しているコロナ禍であるからこそ、「目に見える障害」はもちろんのこと「目に見えない障害」のある人に対する配慮や理解が必要なのではないでしょうか。
障害のある人もない人も皆が生活しやすい環境を整えていくことが大切ですね。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)