妹猫を迎えて寂しくなくなったお留守番、ひとりっ子だった猫の生活が一変、3匹の仲間で楽しく暮らす
猫を1匹だけで飼おうか多頭飼いしようか迷っている人も多いと思うが、茨城県に住むHさんは、ひとりっ子のトゥトゥちゃんが留守番中、Hさん夫妻を探すように鳴いている姿をカメラで見た。Hさんは、妹猫を迎えることにした。
■猫にも猫の仲間が必要
2016年10月下旬、野良猫の子猫、みのりちゃんは生まれた。生後3カ月半くらいの時に、野良の成猫に攻撃されてケガをして鳴いていたところを見かけた人が保護して、動物病院に連れて行ってくれた。保護主さんはみのりちゃんを手厚く看病したが、猫を1匹飼っていて、2匹目は考えていないため、保護団体を通じて譲渡サイトで里親を募集した。
みのりちゃんは黒白柄で四つ足ソックス。1.8kgのスリムな身体で、手足が細く長い子だった。最初から人懐っこく、甘えん坊。動物病院でもおとなしくしていた。
茨城県に住むHさんは、先代猫を亡くして間もなくムギワラ猫のトゥトゥちゃんの里親になった。先代猫はずっとひとりっ子で、自由に外に出られる暮らしをしていたが、トゥトゥちゃんは家の中だけで暮らしていた。
「私たちヒトは家の中に家族がいるし、外出して外の世界も楽しんでいる。でも、トゥトゥはネコ族としてはひとりぼっち。外の世界も知らないというのはフェアではない気がしていました」
Hさん夫妻が泊まりがけで家を空けた時に見守りカメラに映ったトゥトゥちゃんは、Hさん夫妻を呼ぶように寝室のほうに向かって大きな声で何度も鳴いていた。それを見たHさん夫妻は、トゥトゥちゃんにはヒトだけでなくネコの家族も必要だと感じ、妹猫を探すことにした。
■大物感が漂う子猫
妹猫を探すにあたり、「毛色は茶トラやクリームのような子がいいな、シャムミックスもかわいいな」などと、いろいろ思い描きながら譲渡サイトを見た。しかし、なぜか、新着で掲載された黒白猫に目が留まった。
「カラーを着けて上目遣いで見上げるしもぶくれの顔がなんとも可愛くて、一気に心を奪われました。黒白猫は全くのノーマークでしたから、なぜ惹かれたのかは今でもわかりません」Hさんはすぐに連絡を取り、翌日、譲渡会に行った。
初めて譲渡会に行ったが、ほとんどのケージの中の猫たちは緊張して固まっていた。しかし、目当ての黒白猫はのんびりと寝ていた。ボランティアさんに抱っこさせてもらった時も緊張しているような感じはなく、大物感が漂っていた。第一印象は、黒い脚が細くて長くて絡まってしまいそう。まるで脚の長い蜘蛛のようだったという。先代猫もトゥトゥちゃんもぽっちゃりタイプだったが、とてもスリムな体形をしていて、黒い猫もスリムな猫も初めて見たHさんにとっては、同じ猫とは思えない別の生き物のようだった。
■ひとりっ子のトゥトゥちゃん喜ぶ
生後4か月ほどのみのりちゃんは黄色い鼻水を垂らしていて風邪の治療中だったので、治療が終わるのを待ってボランティアさんと保護主さんが家まで連れてきてくれた。怖がりのトゥトゥちゃんは、来客の気配を察知してすぐに2階に避難した。
先代猫の名であるキトゥミールを継承し、愛称をキトとした。
「キトはキャリーから出るとすぐに部屋の中を探検し、おもちゃで遊んだので、やはりこの子は怖いもの知らずだと感じました」
トゥトゥちゃんは新入りのキトちゃんが来たことがとても嬉しそうで、ガラス障子越しに眺めたり、障子の隙間から様子を窺ったりと大忙しだった。一応ケージは用意していたが、2匹の様子から一緒にしても大丈夫だと感じ、Hさんがいる時はケージを開けて、トゥトゥちゃんも一緒にキトちゃんの部屋で過ごした。トゥトゥちゃんは嬉しくて仕方ないようで、キトちゃんを遊びに誘ったり、待ち伏せをしてわっと驚かせたり、追いかけてくれるのを期待してタッチして逃げたりした。
キトちゃんは、ひとりでおもちゃで遊ぶほうが楽しいらしく、おもちゃをくわえて走り回ったりボールを転がして遊んだり、ひとり遊びに夢中になっていた。いくら誘っても遊んでもらえないトゥトゥちゃんが不憫だったが、キトちゃんが来て3日目には一緒にくっついて寝たり、互いに毛繕いしたりして仲良くなったという。
■人には人の、猫には猫の世界ができた
キトちゃんは初対面の時から大物感があったが、一緒に暮らしているとちょっとした違和感を覚える行動が多く、Hさんはキトちゃんには猫の発達障害があるのではないかと思うことがあった。キトちゃんにはキトちゃんの世界があり、自分の好きなものはとことん好きだが、それ以外にはほぼ興味を示さず、大きな音などを怖がることもなかった。 キトちゃんの好きなものの中にトゥトゥちゃんやHさんも入っていた。キトちゃんはHさんのボディガードとして常にHさんの後をついて回り、おしゃべりをした。4歳になった今は、もう以前のようにキトちゃん独自の世界にこもることもなく、外の世界としっかり繋がることができ、怖いことも分かるようになったという。
キトちゃんが来たことでトゥトゥちゃんの生活は変わった。キトちゃんの後にミリちゃんも迎え、泊まりで出かけることがあったが、見守りカメラに映るトゥトゥちゃんたちは元気に3匹で遊んだり、3匹でくっついて寝たりした。もうひとりっ子だった時のようにHさん夫妻を探して鳴くことはなかった。ただ、ネコたちの世界ができたことによって、ヒトへの依存度が減ったのか、数日ぶりに帰っても玄関に迎えにさえ来なくなった。
「少し寂しいですが、猫たちが安心して過ごしていたことの証でしょうから、よかったと思っています」
ひとつ屋根の下にネコの世界とヒトの世界があり、時には互いに干渉せず、時には寄り添う。Hさん夫妻は、そんな暮らしをとても心地よく感じているという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)