公立小学校の学級規模「1クラス35人以下に引き下げへ」…子どもや保護者はどう思ってる?

昨年末、「公立小学校の全学年の学級規模について、現行の40人(小学1年のみ35人)以下から35人以下に引き下げる方向で最終調整に入った」というニュースが報じられました。教育上の目的としてももちろん、コロナ禍の「密」を避けるべき対策のひとつとして、早急に実現すべき案件となっています。しかし、クラスを小規模化することで、先生の人員確保、それに伴う財政や教室確保はどうするのかなど、検証すべき問題も山積み。今回は、1学級35人以下はどのような構想なのか、35人以下にすることでどのようなメリットがあるのかなどを、小学生の子どもを持つ保護者の意見も交えながら、解説していきます。

■1学級35人以下…具体的にはどのような構想なの?

2021年度から2025年までの5年間かけて、1年生から6年生まで全学年の1学級を35人以下にしていく、という構想です。まず低学年から開始し、徐々に少人数化に対応していく予定。小学校1年生の「35人学級」は、実は2011年度から始まっていましたが、小学校全体で学級規模を引き下げるのは、約40年ぶりとなります。

背景としては、

・新型コロナウイルスの感染症対策というタイミング

・新しい学習指導要領では主体的、対話的な深くきめ細かい学びが求められるようになった

・小学校5年生と6年生で英語が教科化、プログラミング教育も必修化

・パソコン端末を活用した指導を充実させるため

…などが挙げられます。きめ細かい教育や配慮は、確かに大人数クラスでは難しいこと。その他の全国知事会など、さまざまなところから少人数化を求める声も、後押しとなったようです。しかし必然的にクラス数が増えるため、必要な教職員数や教室数の確保、教員の給与予算など、現時点で考えられる課題が多いのも現実です。

■35人以下にすることのメリットや効果は?

1学級を35人以下にすることで、現在考えられているメリットや教育的効果はどうなのでしょうか。

35人学級になると何が変わるのか。たとえば、現在1学級36人のクラスだと18人と18人の2学級に分けられ、感染拡大防止対策のほか、きめ細やかな指導ができるなどのメリットが期待されます。

そのほか、

・児童に目が行き届くので、いじめや不登校に気づき、対応しやすい

・教室にゆとりが生じ、さまざまな教育活動が可能になる

・児童生徒の心身両面の支援や食育の充実

・児童がお互いの情報や状況なども把握しやすいことから、仲間意識や団結力が強くなる

…などのメリットも挙げられます。

しかしその一方で、

・それなりの人数での切磋琢磨がなくなり、子どもたちの社会性が育ちにくい

・教員数を増やすにあたり、質のいい指導者の確保が難しい

・少人数指導の明確な効果や実績が明確に見えていない(教職員数の確保だけに時間と費用を費やすことになりかねない)

…など、少人数クラスに対する懸念(デメリット)も指摘されています。

■現状はどうなのか、保護者に聞いてみた

実際に小学生のお子さんを持つ保護者に、わが子が在籍しているクラスの人数、クラスはどんな状態か、リアルな声を聞いてみました。

   ◇   ◇

▽今現在30人だけど、もっと少なくてもいいと思ってしまう

娘は小学校1年生、1クラス30人が2クラスです。宿題や時々あるテストの採点が雑というか乱暴というか…コロナもあって、先生方もとても大変だと思うし、感謝しかないのですが、親としては宿題も「(この字の)ここはちょっとはねちゃったけど、全体的によく書けたね」などと子どもの頑張りを褒めたものの、先生の採点は、「×か〇、もしくは△」だけ。しかも、「どこがどう違うのかな?」と親も分からないときも。「うまく書けたね」「ここはこうだね」などのほんの一言くらい書いてくれてもいいのに…と。

子どももモチベーションがだだ下がりで、「もう書きたくない。出したくない」と泣くこともあります。無理なのは分かっていますが、1年生は35人といわず、20人ちょっとでちょうどいいのに、と個人的には思ってしまいます。〔Eさん、子ども7歳〕

   ◇   ◇

▽先生が大変すぎる…

小学校2年の息子のクラスは36人ですが、すべての児童に目が行き届くのはとても難しい状況だと思います。

1年生のときも36人だったのですが、コロナ禍前の授業参観で見たときは、同じクラスに授業中立ち歩いたり先生に大声で文句を言ったりする子が2人いて、その子にかまっている間、ほかの子どもは置いてけぼりでした。低学年の内はまだかわいい(?)レベルといえますが、中・高学年になると子どもの力も強くなったりして、危険なこともあると思います。少人数はもちろん大賛成ですが、それでもクラスに1人の担任ではとても厳しい状況のクラスもあるはず。どの学年にも副担任をつけて、2人体制にするのが妥当だと思います。あくまで無謀な理想ですが…。〔Tさん、子ども8歳、4歳〕

   ◇   ◇

▽少人数でもキツイこともある

息子(小3)が通う公立小学校は(都内)、1クラス18人が2クラス。小1のときは34人1クラスだけで、2年生のときに転校生が来て、3年時にやっと2クラスになりました。

1~2年のときは、土日はほぼ必ず全員で公園に集まって遊ぶ、学校の教室や校庭でもみんなで同じ遊びをする、という感じでした。息子も時々それに苦痛を感じていたし、他にも感じていた子がいたみたいですね。そのときは「もしずっと1クラスのままで、いじめがあったときにクラス替えで離れられる、ということがないのか…」と、正直ちょっと怖くなったときもありました。

少人数は授業面や先生が子どもをよく見れるという面ではメリットが大きいかもしれませんが、子ども同士のことではメリットばかりではないのかな~と、経験上思ってしまいます。〔Sさん、子ども9歳、5歳〕

■子どもや保護者に聞く、理想の人数、その理由とは?

子ども自身、あるいは保護者が「ひとクラスこのくらいの人数だったらいいな」という理想はあるのでしょうか。子どもの率直な意見も聞いてみました。

   ◇   ◇

【子どもの意見】

▽たくさんいたほうが楽しい!

5年間38人とか39人のクラスだったから、少ないクラスを経験したことはないけど、僕は多い方がいいです。いろんな子がいるし、ワイワイしてて楽しい。もし喧嘩とかしても、他の子と遊べるし。少ないと、教室の感じが寂しくなっちゃう気がします。僕は40人くらいでいい!〔Wくん、11歳(5年生)〕

▽大人数だと、理科とか音楽がつまんない

今1クラス37人だけど、理科の時間で何にも触れなかったり、音楽でも好きな楽器ができなくて、なんとなくつまらないです。人数が多いと、自分ができることが少ない気がする。先生に何か伝えたいときも、忙しそうだったりして話しかけちゃダメかな~と思うし。できれば今より10人くらい少ない方がいいと思います。〔Iくん、9歳(3年生)〕

   ◇   ◇

【保護者】

▽高学年で大人数だと、教室がぎゅうぎゅう

小学生の子どもが2人いますが、長女が6年生になるとき、転出や転入で人数に変動があり、3クラスから2クラス(ひとクラス36人)になりました。
高学年は体も大きくなり、教室も小さくてぎゅうぎゅう、「狭そう!」というイメージでした。先生方はコロナ対策もあって大変なのに、先生に文句(詳しい内容はわかりません)を言う親が何人かいるみたいで、大変そうだし。
30人弱が先生にとっても子どもにとっても理想的な人数かな、と思います。5年かけて全学年35人学級が実現したあと、できれば次の段階で30人学級への移行をしてほしいですね。〔Oさん、子ども12歳、9歳〕

▽先生の負担を減らしてあげないと…

学区内に大規模なマンションがいくつも建って、クラスの人数が急に増えた時期(ほとんど40人規模)がありました。先生の負担も倍増、息子が通う小学校では、2年の間に5人の先生が病気や精神的不安定さから辞めてしまったんです。できれば30人ちょっとが理想ですが、「少人数だから目が行き届くでしょ」と、加配(学校生活に適応することが難しい児童に付く先生のこと。授業や行事をスムーズに進めるために、問題行動を取る子どもを落ち着かせたり、誘導したりする役割を担う)の先生が削減されてしまわないか、心配です。少人数はメリットが多いこともわかるのですが、いいことばかりでもないかも、と思ってしまいます。〔Yさん、子ども8歳〕

   ◇   ◇

現在の40人体制では、「勤務時間中に対応しきれない」という教員も多いようです。1クラス35人以下の政策は、メリットでも挙げたように「配慮が行き届き、学力の安定や保護者の安心にもつながる」「担任が児童と関わる時間を増やせる」などの効果も期待できます。現場、そして保護者にも大歓迎ムードの政策ですが、「担任のつとまる教師が確保できるか」「教室数は足りるの?」「サポートやフォローの先生が減らされそう…」などの懸念や課題も今一度しっかり見直す必要もあると思います。

すべての子どもたちが、少しでもいい環境で心と体が健やかに伸びていく体制になってほしいと願うばかりです。

(まいどなニュース/BRAVA編集部)

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