いらっしゃいませ!「サブ」「バンズ」「マフィン」「ビスケット」どれもパンの種類です…<おもしろ業界用語・ファストフード編>
1970年代の初め日本に輸入されて以来、店舗数が爆発的に増えたハンバーガーやドーナツのファストフード。高度にマニュアル化された接客や調理には無駄がない。そんなファストフード業界で使われる用語を、某ハンバーガーチェーンでアルバイト歴の長いAさんに聞いた。
■本当はどっち? 「ファストフード」「ファーストフード」
「ファストフード」と「ファーストフード」の、どちらが正しいのだろう。日ごろは深く考えることなく「ファストフード」といったり「ファーストフード」といったりしている。印象としては「ファーストフード」のほうが、広く認知されているようだ。
「英語の表記は『速い』という意味の『Fast』で『Fast food』と書きます。『First』だと『第一の』という意味になるので、ファーストフードの意味から離れますね」
「ファ」を「ファー」と伸ばすか伸ばさないかは、アメリカ英語とイギリス英語の違いだという。アメリカ英語は「ファスト」、イギリス英語は「ファースト」だそうだ。
「発音はどっちでもいいです」
ちなみに新聞やテレビなどのメディアは、字数を節約するためか「ファストフード」が多いようだ。いずれにしても「短時間で効率よく食事ができる」=「速い」という意味は押さえておきたい。
■なるべく短いほうがいい「サービングタイム」
ファストフード店に入ったら、最初にやることはなんだろう。ほしいものが決まっていないときに見るものといえば……、
「メニューっていいたくなりますよね。私が働いていたチェーン店では『カウンターリーフレット』って呼んでいました」
いわゆる「お品書き」のことだが、あくまで社内用語なので一般的には「メニュー」で通用する。
注文が決まれば店員にオーダーして、できあがってくるのを待つだけ。客のオーダーを受けてから商品を提供するまでの時間を「サービングタイム」という。ほぼ同じ意味で「ウェイト」も使われるが、こちらは「客を待たせる」という意味があって、ニュアンスがやや異なる。
実際は待つほどのことはなく、あっという間に出てくるが、商品のストックがないときは長めに待たせてしまう。
「待ち時間の短いことがファストフード店の命なので、サービングタイムが長いのはクレームに繋がりますし、客ばなれの原因にもなります」
テイクアウトやドライブスルーでは、稀に「入れ忘れ」というトラブルが発生する。
「言葉通りの意味です。忙しい時間帯で精神的に余裕がないときに起こりやすいミスです」
これは対応が難しいという。
「お客さんが気づいて『注文した品が入ってないじゃないか』と戻ってきてくださったら、解決は早いです。その場で謝罪して商品をお渡しできますから」
とくに難しいのがドライブスルーで、遠方から旅行中に利用する客もいる。連絡先が分かれば、返金するのはもちろん、商品のクーポンを送付して対応するそうだ。
■「ひとくちにパンといっても、いろんな種類がある
「ひとくちにパンといっても、いろんな種類があるんですよ」
ハンバーガーによく使われる丸いパンは「バンズ」とか「丸パン」といい、底が平らで上はドーム状に丸みを帯びているのが特徴だ。
コーヒーと相性がいいといわれるのが「マフィン」で、甘いパンとケーキの中間的なイメージがある。甘いパンといえば、「スコーン」はフルーツとの相性がいいとされている。
また「ビスケット」は、日本では一般に甘さ控えめの焼き菓子というイメージだが、北アメリカでは砂糖が入っていない柔らかいパンのこと。ちなみにイギリスとアイルランドで「ビスケット」といえば、日本でいうクッキーのことを指すらしい。
「変わったところでは、潜水艦が語源になったパンがあります」
それが「サブ」と呼ばれる長いパンで、語源は潜水艦を意味する英語の「Submarine」。艦橋部分を除いた葉巻型の艦体に形が似ている。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)