エサを食べていたのは別猫だった、薄汚れた三毛猫を保護 重度の口内炎、がん…闘病生活も大切な思い出
大阪府に住む嶋田さんは、妊娠した野良猫にごはんをあげていた。出産前に保護するつもりだった。ところがある夜、いつもの猫がごはんを食べに来ていると思い声をかけたら、薄汚れて悪臭まで放つ、まったく別の猫がいた。
■突然現れた臭くて汚い猫
妊娠していた野良猫にごはんをあげていた嶋田さん。TNR(T=TRAP「つかまえる」N=NEUTER「不妊手術する」R=RETURN「元の場所に戻す」)しようと思った矢先、妊娠していることに気が付き、捕獲して家で出産させ、その後家猫にした。
その妊娠していた猫は保護前に一時、ごはんを食べに来なくなっていた。嶋田さんは心配したが、理由は別の猫がごはんを食べに来たからだった。
いつものように猫のためにごはんを用意。夜になって猫がきたので、いつものように「しっかりご飯食べや」と声をかけた。後ろ向きだった猫が振り返った瞬間、驚いてひっくり返りそうになったという。
「全く別の猫だったんです。あまりにも汚い猫で、よだれもすごく、離れていても臭かった。この臭いがしみついたら妊娠していた猫が来なくなるのではないかと心配しました」。後に分かったことだが、強そうな猫がいると近所で噂されていた猫だった。
■ボロちゃん改めリリィちゃん
その日からしばらく、その猫は玄関先で待っていた。朝も夜も玄関先でお行儀よく待っていた。
「本当に汚くて臭い猫でしたが、待っている姿がとても切なくて可愛かったんです。夫も可愛がっていました。妊娠した猫を保護した後も毎日毎日待っていました」。外猫には雄猫が数匹いて、この子も妊娠したら大変だと思っていた。しかし、この時は妊娠していた猫の保護や出産でバタバタしていたので、嶋田さんはごはんをあげることしかできなかったという。
すぐには保護できなかったが、口内炎の症状があったので、かかりつけの獣医師に動画を見せて相談した。動物病院に連れて行きたかったので、その猫の体をシャンプーで洗った。その時は保護することはできず、一旦外に返したという。それから2週間、猫が現れず、嶋田さんはとても後悔した。半ば諦めていた頃に再び姿を見せたが、せっかくシャンプーしたのにまた元通り汚くなっていた。
そのころになると、その猫を保護しようと決めていた。6月中旬に保護して、不妊手術を受けさせるため動物病院に連れて行った。「ボロ」と名付けたその猫を預けて帰宅すると、獣医師から電話があり、ボロちゃんは避妊済であること、口内炎は重症であると告げられた。
「おそらくボロちゃんは誰かに捨てられたんだと思っています。その後は我が家の浴室での生活が始まりました。浴槽の上にソフトケージを置き、その中での生活していました」
保護した後に、名前をボロちゃんからリリィに改名。名前は長男が決めたが、嶋田さんは百合の花が凛と咲くように生きて欲しいと思い、リリィにしたという。
口内炎はステロイド注射で様子を見ていたが、ごはんを食べるときにとても痛そうにしていたので、2020年3月に手術をした。手術は成功し、リリィちゃんは、とてもきれいな三毛猫になった。その後、お風呂場から卒業して、長男が使っていた部屋が空いたので、そこに引っ越した。
■百合の花のように凛と生きた猫
これから楽しい生活が待っていると思っていた矢先だった。同年6月の末に悪性リンパ腫を発症。発見当初は腎臓の数値が悪くなかったので、抗がん剤治療をすることになったが、実際始めるにあたって急に腎臓の数値が悪くなり、使える抗がん剤が限られた。数回抗がん剤治療を受けた後、緩和ケアに切り替え自宅で毎日点滴をした。
嶋田さん自身も7月に足の手術を控えていて、約2週間の入院治療が必要だった。リリィちゃんの治療と重なってしまい、入院中の点滴は、一人暮らしをしていた長男に頼んだ。入院して1週間後、長男から入院中の嶋田さんに電話があり、「とても血液検査の結果が悪くいつ亡くなってもおかしくない状態だ」と聞いた。
「とてもショックを受けたのを覚えています。1日も早く退院したくて、主治医に懇願しました」
予定より2日早く退院することができた。退院後はリリィちゃんの具合も良くなり、何とか危機を脱した。その後も2回ほどもうだめかと思ったが回復し、嶋田さんや獣医師を驚かせたが、10月12日、嶋田さんと長男、他の飼っていた猫に見守られながら静かに息を引き取った。
「口内炎が良くなり、これからおいしいものをたくさん食べられると思っていた矢先にがんが発覚してショックでしたが、最後まで名前の通り凛とした姿を見せてくれました」。嶋田さんは、リリィちゃんと過ごした日々はとても濃厚な日々で大切な思い出だという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)