豊田真由子から受験生のみなさんへ「努力は、裏切らない」「受験は通過点」

こんにちは。

みなさんは、きっと今、緊張や不安な気持ちを抱えながら、最後の追い込みをかけていらっしゃることと思います。

今年度は特に、コロナで大変でしたよね。

長期間の休校、履修の遅滞、部活や交友の制限、感染への不安。ご家庭の経済状況が厳しくなった方もたくさんいらっしゃると思います。皆さんの声は、メディアや政策の現場で、直接取り上げられるということが、残念ながら少ないのですが、私は、新型コロナウイルスが、児童・生徒の皆さんにもたらした負担や不安というものは、想像される以上に大きく、そしてそれに対する対応が、十分には取られていない現状があると思っています。

受験というのは、若い皆さんにとって、それだけでも、大きな試練です。

数十年前になりますが、わたしも、この時期、とても不安でした。「全然分かんなかったらどうしよう、覚えたはずのものが出てこなかったらどうしよう…」 

たとえ、どれだけ準備をしても、安心して緊張せずに会場に向かえる人なんて、いないと思います。みんな、同じです、だいじょうぶ。当日は、これまでがんばってきた自分を信じて、臨んでください。

  ◇   ◇   ◇

あれからだいぶ時が経ち、大人になって、本当にいろんなことがあって、そして今改めて、受験生のみなさんに、お伝えしたいことがあります。

ひとつは、「努力は、裏切らない」ということです。

これは、がんばったことは、きっと結果につながる、という意味だけではありません。少し、長期のスパンで考えていただく必要があります。もしも、今この時は、望んだ通りの結果がたとえ得られなかったとしても、これまであなたが、いろんなことに耐え、努力してきたことは、これからのあなたの人生において、必ずあなたを支え、励ます力となります。筋トレをしたら筋肉がつきますよね。同じように、目標に向かって、これまでずっとがんばってきた、あなたの心や身体や頭は、鍛えられて、強くなり、大事なことは蓄積されていっています。

多かれ少なかれ、人生というのは、困難の連続です。困難に直面したときに、乗り越えていくことができるか、そのとき倒れてしまっても、たとえ死にそうになったとしても、なんとかもう一度、前を向いて歩き出すことができるか。

そういうとき、あなたを救うのは、最終的には、あなた自身です。あなたが、踏ん張って、心や身体や頭を鍛えてきたことは、あなたの中に蓄積されていき、いくつになっても、決して消え去ることはありません。

私は、日本や米国の大学で必死で学んできたこと、厚労省で泊まり込みで仕事をしてきたこと、ジュネーブWHOで新型インフルエンザパンデミックに対処したこと、そうしたことが自分の中にちゃんと残っていて、こうして今、新型コロナパンデミックについて見解を述べたり、皆さんにお話をしたりする、ありがたい機会をいただきました。たくさんの友人や知人も支えてくれました。人生、全部失くしてしまったと、絶望の中にいましたが、本当に大事なものだけは、ちゃんと残っていました。

どんなことでも、自分がこれをやろう!と思い、しんどいながらも、地道に取り組んできたことは、いつか必ず、あなたの大きな力になり、そしてきっと他の誰かの役に立ちます。努力するということの大事な意味のひとつは、そこにあると思います。

もうひとつは、「受験は通過点。ゴールではなく、スタートである」ということです。

合格という“ゴール”を目指してラストスパートをされている中、「そんなこと言われても…」とお思いかもしれません。ただ、やはり、大切なのは、これからあなたが、その場所で、何を学び・考え、どう過ごし、悩みながら、未来を作り上げていくか、だと思うのです。

将来の夢を抱いている方も、まだ思い描けていないという方も、いらっしゃると思います。いろんな不安もあると思います。これから、多くの友人や先生たちと出会い、勉学や部活・サークル活動や、趣味、アルバイトやボランティアなど、様々なことに取り組まれ、その中で、たくさんのことを吸収し、成長していかれることと思います。きっと、これからワクワクすることが、いっぱいありますよ。

あなたの眼前には、多くの可能性・道が、広がっています。紆余曲折があってもいい。“一般的に良いと思われている道”なんかじゃなくていい。あなたの人生を切り拓くのは、あなた自身です。

世界はめまぐるしく変わっていきます。それに対応して柔軟に変えていくということと、一方で、普遍的で変わらないもの・ブレない軸を持ち続けることと、両方必要だと思います。そういうことも、学び、考え、身に付けていってください。

これからの世界をよくしていくのは、皆さん方一人ひとりの力です。

  ◇   ◇   ◇

忘れられない光景があります。

小学生の頃、同級生に、とても賢くしっかりした女の子がいました。彼女は放課後、友達と遊びませんでした。塾にも行きませんでした。ある日、集合住宅の前を通りかかったら、その子は、屋外に設置された洗濯機でお洗濯をしていて、幼い弟さんが、ぴったりとくっついていました。声をかけることはできませんでした。

私は思いました。そうか、子どもが、自分のためだけに自分の時間を使っていい、というのは、実はとてもありがたいことなんだ。そして、もし自分になにかしらの能力があるのだとしたら、それを人のために役立てられるように、一所懸命がんばろう。

以前より、また、コロナ禍で、経済的に苦境にあるご家庭も多くあると思います。どうか諦めないでください。周囲の人たちの助けや奨学金などで、道を切り拓いていった人たちを、たくさん知っています。たとえ絶望の淵にあっても、必ず希望はあります。

  ◇   ◇   ◇

寒い日が続きます。皆さん、どうか体調に気を付けて、最後まで、やり抜いてください。

明けない夜はない。やまない雨はない。もちろん、また繰り返し、夜は来て、雨は降るわけですが、それでも、必ず、朝は来ます、空は晴れます。それが人生です。

春は、すぐそこです。

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス