「赤い特急」「黄色い特急」何だそれ? 阪神・山陽「直通特急」を実現した、ダイヤ作成の“妙技”

大阪梅田駅と姫路駅を95分で結ぶ阪神電気鉄道、山陽電気鉄道が運行する「直通特急」。「直通特急」には「赤い直通特急」と「黄色い直通特急」があります。「赤」と「黄色」で何が違うのでしょうか? 今回は阪神電車、山陽電車の看板列車「直通特急」の秘密を探ります。

■「赤い特急」と「黄色い特急」が来る新開地駅

「直通特急」は阪神電車の大阪梅田駅と山陽電車の姫路駅を結んでいます。「直通特急」には阪神、山陽の電車が用いられており、両社の看板列車として大活躍。並走するJRと比較すると所要時間は要しますが、運賃が安いのが特長です。神戸市兵庫区にある新開地駅では「直通特急」を頻繁に見かけます。

ところで「直通特急」の表示を見ると「赤色」と「黄色」があることがわかります。昼間時間帯だと交互に「赤い直通特急」と「黄色い直通特急」がやってきます。駅の電光表示器でも「赤色」と「黄色」で区分されています。

「赤色」と「黄色」の区分けは単に利用客の目を楽しませるものではありません! 実は「赤色の直通特急」と「黄色の直通特急」で停車駅が異なります。神戸三宮駅(神戸市中央区)~板宿駅(神戸市須磨区)間の「直通特急」の停車駅は以下のとおりです。

   ◇   ◇

「赤い直通特急」:神戸三宮、元町、高速神戸、新開地、高速長田、板宿

「黄色い直通特急」:各駅停車

   ◇   ◇

つまり「赤い直通特急」は西元町、大開、西代には止まりません。神戸三宮~板宿駅間以外の停車駅は同じです。

「黄色い直通特急」の側面にある表示器をよく見ると「神戸三宮~板宿各駅停車」と表示されています。

駅構内や車内では停車駅を丁寧に説明しています。また利用者も「これは大開に止まらないやつやね~」と言っているため、混乱は起きていないようです。ですが初めて「直通特急」で神戸市内の駅に降りる際は駅や車内にある案内表示器でよく確認することをおすすめします。

■5分のズレが2つの「直通特急」を生む

なぜ赤色と黄色の2つの「直通特急」があるのでしょうか。実は阪神電車と山陽電車の運行間隔の違いに答えが隠されています。阪神電車の運行間隔は10分間隔です。昼間時間帯における大阪梅田駅の時刻表を見ると、毎時0分、10分、30分、40分が姫路行き「直通特急」、毎時20分、50分が須磨浦公園行き「特急」となり、「直通特急」と「特急」と合わせて10分間隔で運行されていることがわかります。

一方、山陽電車は15分間隔のため、「直通特急」をどうにか15分ごとにしなくてはなりません。そのため1時間に2本は停車駅が多い「黄色い直通特急」にすることで、5分の時間調整をしています。参考までに昼間時間帯における山陽姫路駅の時刻表を見ると毎時13分、28分、43分、58分が「直通特急」となり、きれいな15分間隔となっています。

■「直通特急」を乗りとおすなら「阪神・山陽シーサイド1dayチケット」がおすすめ

この記事を読んで「直通特急を乗りとおしたい!」と思ったら、「阪神・山陽シーサイド1dayチケット」をおすすめします。この切符は大阪梅田~姫路駅間を往復2200円で乗車でき、JR西日本(大阪駅~姫路駅間往復)より840円も安いのです。また尼崎駅から阪神なんば線に乗り換え、大阪難波駅まで有効区間に入ります。

「直通特急」を見たら色に注目した上で阪神、山陽の担当者によるダイヤ作成の妙技を感じて頂ければうれしいです。

◆新田浩之(にった・ひろし) 1987年生まれ、神戸市在住。子どもの頃から乗り鉄。普段は鉄道を楽しみながら、関西の鉄道を中心にコツコツと執筆活動を行う。学生時代は中東欧・ロシアの現代史を専攻した関係で、2018年からチェコ政府観光局公認「チェコ親善アンバサダー」も務める。現在は冷戦期におけるヨーロッパ・ロシアの時刻表収集にハマる。

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