いつもは通らない道で、車にはねられた猫と運命的な出会い… しかもその猫は妊娠していて!?
個人で猫ボランティアをしている大阪の三井さん。いつもは絶対に通らない道だが、その日はなぜか車を走らせていた。助手席に座っていた夫が「猫がひかれた」と言い、同時に跳ね飛ばされて宙に浮く猫の姿が三井さんの目に入った。
■いつもは絶対に通らない道路を通った日
三井さんは、少し前に保護した猫を里親に渡す準備をするためにホームセンターに買い物に行った。大事な保護猫を譲渡する時はいつも「嫁入り道具」を持たせるのだ。
ホームセンターから自宅に帰る道はいくつかあったが、その日は、いつもは絶対に通らない道を通った。
「学生がよく通る道なので事故を起こしたくないと思っていましたし、渋滞もしやすい。普段から夫も『この道は通るな、迂回しろ』と言うくらいでした。でもその日は、私が『まっすぐ行ったらええんちゃう』と言い、まるで猫に吸い寄せられるように、その道を通ったんです」
2020年3月10日、大雨が降っている日だった。
■思いがけない妊娠
三井さんが運転し、夫は助手席に座っていた。突然、夫が「猫がひかれた!」と言い、猫が転がるのが目に入ったので、三井さんは車を停め、タオルとキャリーケースを持って駆け寄った。
すぐにかかりつけの獣医師に電話をすると、午後は休診だったが「連れておいで」と言ってくれた。骨折はしていなかったが内臓挫傷をしていて、2週間ほど生死の境をさまよった。エコー検査もしたが、この時は妊娠の兆候は見られなかった。三井さんは、猫に桜を見せてあげたいと思い、「さくら」という名前にした。
幸いさくらちゃんは4月頃には元気になり、抱っこをしたりなでたりできるようになった。元気になったら不妊手術をする予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて緊急事態宣言が発令されたので、落ち着くまで延期することに。ところがそのうち、お腹がふっくらして、乳首も出てきた。まさかの妊娠。さくらちゃんは事故に遭う直前に交尾していたようで、妊娠していた。
三井さんは「あの事故でも助かった命。産ませてあげて、里親さんに繋げよう」と思った。
2週間後の5月2日、さくらちゃんは4匹の子猫を出産した。
母猫のさくらちゃんと3番目に生まれた唯一の男の子ぬっくんは、まだ三井さん宅にいる。
さくらちゃんは元気になったが、野良猫だったこともあり、なでられるのはいまだに拒否している。ぬっくんは里親を探しているという。
■この子の家族になりたい
兵庫県に住む平山さんは、昔から動物が好きで猫の映像などをずっと見て、いつか飼いたいと思っていた。平山さんの姉には2人の息子がいるが、1人は知的障がいがあるためコミュニケーションをとるのが難しかった。猫を飼うことで少しでも人との関りが増え、成長してほしい-。平山さんと姉の意見が一致し、早速猫を探し始めたという。
平山さんが譲渡サイトで見つけた子猫はさくらちゃんが産んだ子で、2番目に生まれた子猫だった。未熟児で体重は65gしかなく、生まれた直後は呼吸も変則で、三井さんは生きられるかどうか心配した。しかし、子猫はすくすく育った。名前は、三井さんがりりーちゃんと名付けた。
「初めてりりーに会いに行った時は、たくさんの保護猫がいて驚きましたが、りりーを見た瞬間から『家族になりたい』という思いが一気にこみ上げてきました」(平山さん)
譲渡が決まり、三井さんが平山さん宅まで連れてきてくれた。りりーちゃんは初めはビクビクしていて、テレビ台の下に隠れたり、ゲージの中で大人しくしたりしていたが、怒る様子はなかった。性格は穏やかで、シャーと怒った声は聞いたことがないという。姉の2人の息子には鼻チューをする。姉と息子の会話も増えたそうだ。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)