生まれたてのホッキョクグマの赤ちゃんが鳴いて転がる動画が大人気!「大雑把な?」母にも全国からエール
真っ暗な産室に据え付けられた赤外線カメラが映し出すのは、生まれたてのホッキョクグマの赤ちゃんと、懸命に育てる母グマの姿。秋田県の男鹿水族館GAO(ガオ)が、音も光も、人の出入りも一切遮断された中でのホッキョクグマの子育て動画を毎日のように配信し、「かわいすぎ!」「これ赤ちゃんの声??」「お母さん大雑把…ですか」…と注目を集めています。
出産したのは、2019年に兵庫県の姫路市立動物園から“お嫁入り”したユキ(21歳)。“前妻”を亡くしたオスの豪太(17歳)と繁殖期を順調に過ごし昨秋から妊娠・出産を想定して産室におこもりしていました。
そして、飼育下での出産例が多い時期も過ぎて職員もやきもきしていた12月26日、ついに出産が確認されました。が、その喜びを伝えるはずの動画には「生後48時間以内の死亡例がとても多い」との説明が…。3日後にようやく「ここまで生存できているので、ある程度授乳はできている。少しほっとした」との飼育員コメントが入り、インターネットで画面越しに見守る人たちもひと安心。以来、母子のありのままの姿を日々公開する同館の思い、親子の様子を飼育員の田口清太朗さんに聞きました。
■最初は気付かず…ビデオで「鳴き声がする!」「産んでる!」
-おめでとうございます!もう正直諦めかけていました。出産確認の状況は?
「実は朝、映像を見た時には出産に気付かなかったんです。あとで夜間の録画を確認した担当者が『鳴き声がする!』と。さらに巻き戻してみると、赤ちゃんをくわえたユキが産室に入ってくる姿が映っていて、『産んでる!』と…」
-産んだ瞬間は映らず?
「産室外の、カメラに映らない場所で出産したようです。録画映像での確認だったので担当者は、『今、生きているのか』『ユキは子育てしているのか』と、喜びよりも心配のほうが先で、鳥肌が立ち、冷や汗が出たそうです」
-赤ちゃんの大きさは?
「ホッキョクグマの誕生時の大きさは平均で約30センチ、体重は500~800グラムだとされていて、この赤ちゃんもそれくらいかと。まだ測れないので映像からの推測です」
-生まれたての赤ちゃんの生存率はとても低い、とありました
「はい。国内の園館でこれまで生まれたホッキョクグマは173頭。そのうち、半年以上生存したのは29頭だけなんです」
■11月中旬から絶食状態で出産・子育て…
-ホッキョクグマの大きさの割に狭い部屋に見えます。雪洞に籠もって出産するという野生下と似た環境に?
「コンクリート造りの部屋の中に3㎡くらいの小さな木造の産室を2つ造り、防音材も張り付けています。中は外気温より少し暖かいぐらいで、今はユキが中にいる分、さらに暖かいと思います。冬眠しないとされるホッキョクグマですが、出産時のメスは長ければ半年間、絶食状態で子どもを育てます」
-ユキも11月中旬からずっと絶食しているんですよね。
「水分以外は何も食べず、赤ちゃんに母乳を与えています。ユキは春先からずっと食欲があったのでエサを増やし体重は5月下旬に218キロ、お籠り直前の11月には306キロと順調に増えました。今は飼育員も全くバックヤードには近付きませんが、様子を見ながら2月中にはエサやりに行くと思います。赤ちゃんは生後約2カ月で歩き始め、歩いてから10日もすると走るようになり、自分で産室から出るようになります」
◇ ◇
ユキは姫路での出産経験を含めると今回が3度目ですが、赤ちゃんが無事に成長しているのは初めて。寝床を整えるためのチップ掘りが豪快で赤ちゃんが一瞬埋まる様子には、動画のコメント欄も大爆笑。この一件以来「大雑把?」とも言われていますが、赤ちゃんが眠るとぐっすり眠り、巨体で押しつぶさないよう器用に寝返りを打ち、赤ちゃんがぐずると鼻先を寄せて優しく舐めて落ち着かせます。その姿は真っ暗なはずなのに後光が差して見えるほど。赤ちゃんは生後35日で目が開いたことが確認され、同時に懸命に立ち上がろうとするなど、活発さが日に日に増しています。
■ モーター音?いいえ赤ちゃんの「笹鳴き」です
同館はこれまでもペンギンやアザラシの赤ちゃん成長動画も配信しており「生物によって成長や子育て方法なども違い、どれも不思議で尊い」と田口さん。コメント欄の疑問・質問にも注目しているそうで、聴けば誰もが驚く赤ちゃん特有の「笹鳴き」と言われる鳴き声を解説する動画も配信。監視カメラ映像は館内モニターでも流れているのですが、鳴き声があまりに大きく独特なので、「ほんとに赤ちゃんが出している声?」「モーター音みたい」と戸惑う声も聞こえるとか。配信動画をぜひ「音あり」で視聴を。
今シーズン、国内では、大阪の天王寺動物園でも2020年11月に誕生したホッキョクグマの赤ちゃんが、1頭、元気に成長しています。どちらも性別が分かるのはこれから。公開時期も気になるところですが、「赤ちゃんが元気に成長し、親子で展示場に出てきてくれるよう皆さんぜひ祈っていてください!」とGAOの田口さん。公開されるころにはコロナ禍が収束し、どちらの子グマも生で見放題になりますように…祈ります!!
(まいどなニュース特約・茶良野 くま子)